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TORGリプレイ

『Be Strong』

第二幕

 
シーン4 星宿

 
スレブ:「軽薄な男だ。あのような男は好きになれん。しかし、水舟という奴。幼子に遊び半分で手を出すとは、随分そいつも外道なようだな」と強力に話し掛けますね。

強力:「まぁ、相手が悪かった、と言いたいところだ」ここで初めて、アンの顔を認識して、「腕が立つな」

アン:「そう見えるらしいね」

強力:「きちんと名乗ってなかったな。強力だ」

アン:「あたしは、アン・シャーリー。赤毛のアンと呼ばれてる。この子のボディーガードさ」

強力:「随分と、洒落た名前だな。俺らで言う四股名みたいなもんか」

ディ:「・・・・・」だんだん、ストロングが、角力の言葉を使うようになってきた。

GM:「あっ!」フランソワが、周りがわやなことになってるのに今気づいたらしくて、風穴が開いた外を見て、「星がきれい! 手が届きそう!」

強力:あー、生きづらいタイプの天才だわ!(笑)
 

 スレブは、フランソワを肩に乗せ、空を眺める。
「星は大いなる天の動き。
 その動きは、地上で生きる我々と、切っても切り離せないものである」
 

ディ:「フランソワ。この後、何か珍しいことが起こるのか?」

GM/フランソワ:「わたしにわかるのは、明日、この星とこの星とこの星が揃う、ってことだけだよ」

スレブ:うーん。揃った結果何が起こるかだなー。

強力:星が並ぶってのは、基本的に凶兆だからなー。

GM:彼女の言うことを、みんなで分析してみましょう。ではスレブ、〈方位感覚〉。

ディ:“ひらめき”あります。よかったら使ってください。

スレブ:“ひらめき”いただいて、交換に“偉業”を渡しておきます。(コロコロ)18、+5。“ひらめき”を乗せて16。

ディ:“ひらめき”を渡した演出で、オレは、窓の外の、建設途中のエジプト様式の神殿を眺めます。

GM:ディ、〈リアリティ〉。

ディ:(コロコロ)17。“貫禄”で+3して、21です。

GM:そうすると、あの神殿の周辺が、コアアース/ナイル混合エリアになっているのがわかります。護符といって、持ってくると、一時的にリアリティが変わるアイテムがあるんです。それを神殿に組み込んで、このエリアをナイル帝国に寄せようとしているところ。

スレブ:ふむ。

強力:作業員さん大変だろうなー(笑)。

GM:あと、アン姐さんも〈科学〉か、なければ《知力》で振ってみてください。

アン:(コロコロ)19。+6だけど、《知力》は8だから、14。

GM:彼女の話を噛み砕いていくと、次のことがわかります。惑星は、軌道上を公転しています。そして、数学的に流れを紐解くと、計算によって、規則的に惑星を配列「させる」ことができます。

強力:それ・・・。

GM:古代の天文学者は、惑星が一定期間ごとに自然に配列することを知っていました。〈数学魔法〉って、これとこれはこの角度で見ると揃うから、このタイミングだったら呪文が使える、みたいな魔法なんです。本来、呪文を使いたい時と、惑星が配列する時って、一致するわけがないじゃないですか。

強力:うん。

GM:しかし、計算を突き詰めた結果、「規則的に惑星が配列して、呪文や奇跡を起こりやすくする」という信念が、惑星の公転にまで影響を及ぼしています。

アン:ああー。

GM:おかしなことに、因果関係がぐちゃぐちゃになっています。「計算が合えば、揃うはずだ」という信念が、惑星の公転という自然現象を凌駕するんです。

アン:だからフランソワをここに連れてきた。

GM:そうです。もうひとつわかることがあって、彼女はナイル帝国のリアリティに変身しています。彼女が使っているのは、〈数学魔法〉です。

強力:荒唐無稽なレベルにまで高まった計算能力が、ナイルのリアリティと合致して、〈数学魔法〉を、本人も知らないまんま、発動させ続けているっていうことなんだね。やばいね!

GM:はい。そして、今回与えられた例題は、「全ての惑星を使った惑星配列」です。これが解けるということは、配列を揃える行為そのものなので。

強力:あー、これを仕組んだ親分、結構厄介だわ。

GM:「明日、この計算が解けたら、本物の神様に会えるのよ」スレブには、何が起こるのかわかります。神の降臨です!

スレブ:ふむ。あ、ここまでわかるんですね。

アン:ナイルの神って?

GM:エジプトの宮中神です。誰を呼ぶかというと、セトです。

強力:うわ、最悪だ。なんでセトなんだよ。

アン:セトって悪神だっけ。

GM:習合されて、悪神にされちゃった。大地神オシリス、生命神ホルス、天空神ヌウト、女性の守護神ネフティス、職人の神プタハ、地下世界の神アヌビス、悪神セト。三千年の歴史のうちに、この話とこの話、属性が一緒だから混ぜちゃえー、ってやった結果、悪神となったんですけど。

強力:貶められた結果の悪神って、最悪だからね。普通の悪神よりも拗らせてくるからね。

GM:そして、ナイル帝国の世界法則、マンガの法則は、あらゆる物語を、マンガ的に、正邪を明確にします。

アン:悪神って言われたら悪神になっちゃうんだ。

強力:万が一降臨したら、ここは終わりだね。

GM:そして強力。〈武道(角力)〉で振ってください。

強力:(コロコロ)16。

GM:わかること。角力とは元々何ですか?

強力:(笑)ほう。神事ですね。

GM:横綱とは何ですか?

強力:その神事を司るものの、頂点ですね。

GM:そして、神の依代です。

アン:エジプト角力だから・・・。

ディ:えーっと・・・。

強力:ああー!

スレブ:はいはい。

GM:つまり、『エジプト神に、なる』儀式です。

一同:うわー!

GM:ただし、角力には、相手が必要です。儀式を行うためには、同格の相手が。つまり、強力関、この世界にあなたしかいません!

アン:まさか、他の選手って、カモフラージュ?

GM:全部、あなたを呼ぶためだけの餌です!

スレブ:なるほどねー。

強力:本腰入れて、妄言で殴り返してきましたね(笑)。これが、人の因果か。

GM:あと、角力には、独りずもうといって、例えば豊穣の神と角力を取って、人間に負けた神様が、花を持たせてくれて、人に豊穣をくれる、みたいな儀式もあるわけですね。

ディ:ちょっと待って。セトに負けたら、人間は・・・。

強力:う、うん。まずは最後まで聞こう。

GM:星を揃えて神を呼び、角力を取って勝った方、もしくは、降ろした方が、神になる。そして、ネテルは絶対、あなたに勝つじゃないですか。

強力:うん(笑)。それに、万が一勝った場合、強力がセトになる可能性もあるよね。

GM:あなたの心が、もし、邪悪であれば。ナイル帝国は、正邪の法則が働く世界です。全ての知的生命体は、善なる者か、悪なる者しかいません。堕ちたままの強力が、土俵に上がったらどうなるか。勝とうが負けようが・・・。

強力:セトは出てくる!(笑)

GM:負ければ勿論まずい。仮に勝ったらどうなる?

アン:あれ? 実は我々、強力関に、すげぇストレートな球投げてる?

強力:・・・オッケー。全っっっくわからないけどわかった!(笑)
 

 話し終えたフランソワは、満足げな表情で星を見上げている。
 強力は、彼女の傍らで立ち尽くし、己の掌をじっと見つめる。
 

ディ:「ストロング、どうした? 怪我でもしたか?」

強力:「そういえば、覚えただけでまともに使っていない技があったな、と思っただけだ。やらないとわからないものだな」

スレブ:「ほう、慣れない技を使ったのか! どうだ、体験するというのは素晴らしいだろう!」

ディ:(笑)スーパーポジティブ!

スレブ:「まずは体験することから始めるのだ。その調子だ!」と言って、嬉しそうに肩を叩く。

強力:「確かにお前の言う通りだな、スレブ。思い込みというのは、良くないものだ」

ディ:「思い込み、か・・・」一回言葉を切って、「気になることがある。オレは、この国に来た時、誰かに会ったのを、思い出せずにいる」

一同:・・・・・。

強力:「俺はあまり詳しくないが、そういった術を使う奴のひとりぐらいいるだろう。例えば、あの、エジプト野郎とかな!」

ディ:・・・・・。

強力:「心配するな。何かあれば手を貸す。お前が知ってる強力が手を貸せるかはまた別だが。少し時間をくれ」

アン:強力関に言います。「できそうにないんだったら、死んだふりはやめておきな」

強力:「息苦しいと思ったら窓を開けるだろう。そんなもんだ」

アン:瓶を投げます。

強力:そのまま後ろ手に、パシッ!

アン:すげぇ高い酒です。「あんたが普段飲んでる酒より、こっちの方が、より、沈める。その味が馴染むかどうかで、このまま死人になるか、それとも、生きた人間になるか、考えるといい」

強力:近くのテーブルに、カツッ、と置いて、「終わってから飲むさ」(*12

ディ:「ストロング」

強力:「・・・なんだ」

ディ:返事をしてくれたことに微笑んで、その後で、まっすぐ目を見て、「許せるようになるには、Be Strong(強くなることだ)」

強力:こう返して去ります。「強さって、何だろうな」

 
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