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TORGリプレイ

『CONNECT』

第二幕

 
シーン5 The Blood

 
 裕人とサバシーナを乗せた馬車は、昼も夜も同じ速度で走り続けている。
 進んでいるはずだが、進んでいないような、不思議な感覚。
 外は寒いが、ここは少しだけ暖かい気がする。血の暖かさ、とでも言うべきだろうか。
 

裕人:プレイヤー的に言うと、裕人くんはもしかしたら、孫? ひ孫? にあたるんじゃ。

GM:そう。だから優しいの。

アン:ああ、やっぱり自分の推測は当たってたか。

ソウジ:ヴァンパイアの始祖、という感じですか。

GM:それは、裕人が聞いてくれば喋りますよ。隠してねぇし。

裕人:「あなたは・・・誰?」

GM/サバシーナ:「私はサバシーナ。我らが偉大なる主人、ゴーントマンに仕える、ナイトメアがひとりです」
 

 オーロシュの支配者、最凶最悪のハイロードであるゴーントマンは、
 レルムをいくつかの州に分け、ナイトメアの称号を持つ魔物に統治させている。
 

GM:彼女は、年を経たヴァンパイアで、かなり古参の部類に属します。ゴーントマンから、ヘリオン・コート(*9)にならないか、って勧められたのを、「私はその器ではありません。私はこのナイトメアという地位が気に入っています」って言って、優雅に断った人です。何故そんなに野心を持たないかというと、この先は思い出語りで喋った、とさせてください。

裕人:はい。

GM:彼女は、レレホルムっていう、全てが氷に閉ざされた、氷河期の世界の出身です。

アン:へー、そんな世界があるんだ。

GM:そこを昔、ゴーントマンが侵略したんですね。部族の女族長をやっていた彼女は、部族を守るために必死で戦いました。そして、敵に対抗するために、だんだん黒魔術に手を染めていきました。

ソウジ:うわー。

GM:その結果、彼女の魂は堕落していき、いつしか彼女はヴァンパイアになっていました。

アン:ふむ。

GM:彼女は、守るつもりだった部族を餌食にし始め、苦悩していたものの、長い歳月の中に、「私はヴァンパイアなんだ、欲望に身を任せても仕方がないんだ」というところへ堕ちてしまい、結果として、ゴーントマンは強力な味方を手に入れたのでした。

ディ:・・・・・。

GM:彼女の目的は、ゴーントマンに忠実に仕えることと、彼女自身と、腹心のヴァンパイア10人、もう10人しか残っていない、昔の家族。

裕人:家族。

GM:それが生き延びることです。家族が一番大事

裕人:はー。なーるほどー。

GM/サバシーナ:「そう、私も入れて11人。あの世界を離れてから、この11人で生きてきたのだけど、そのひとりが、寂しかったのかしらね、ある時、ふと、幸せそうな家族が目に入ったの」

一同:・・・ああー!

GM/サバシーナ:「で・・・やったみたい。でもその時、男の子は、命を懸けて家族を守ったの!

一同:!!

裕人:それは・・・何となく察するのかな。

GM:何となく思い出します。あなたはその時、超越したんです。

裕人:超越?

ディ:一般人からポシビリティ能力者になることです。

GM:はい。向こうは、噛んで、家族を増やそうぐらいに思っていたら、あなたは超越して、家族を守るために戦って、結果的に相討ちになって。

裕人:あれっ? 倒しちゃった?

GM:はい。家族だと思ってた油断もあったと思うんですけど、あなたと相討ちになりまして、あなたは記憶をなくし、彷徨うことになり、向こうは身体をなくし、待ち人の館に送られることになり、転生する先、どこがいい? って訊かれたら、あの子の身体! って。

アン:あ、生きてる人間にも転生できるんだ。

GM:この場合、ちょっと特殊ですが、優美は魔物になりかけてた、っていう処理にさせてください。

ソウジ:だから男の声が聞こえたんですね。

GM:そうです。復讐してやる! っていう気持ちが強かったらしく。

裕人:くっそー! 家族と一緒に暮らしてろよ!(笑)

GM:「どうしてもそこは、歪んでしまったのね」サバシーナは寂しそうに笑います。「ごめんなさいね。だから、あなたにしてみれば、本当に迷惑だと思うけど」優しく撫でて、「あなたは孫のようなものね」

裕人:「そっ・・・か。そうだったんだ」あー。何とも言えないなー。

GM/サバシーナ:「あの子は、やってはいけないことをした。あの子には、道理というものを教えてやらなければならない。お母さんだから、私」

裕人:「それは確かに!」調子が少し戻ってきます。「お母さんが叱ってくれないと、息子って、全然言うこと聞かないからね」

GM:「そうよ。だから・・・あなたにひとつ、希望をあげる」何もかも察してるみたいで、「あなたの家族は生きているわ」

裕人:!

GM/サバシーナ:「だって、家族は失いたくないもの」

裕人:「悪人なんだか悪人じゃないんだか、よくわからない奴だなー、ハハッ」

GM/サバシーナ:「魔物というのはそういうものよ。人の理屈では割り切れない」

裕人:「本当に・・・生きてるかな」

GM/サバシーナ:「生きているわ。ただ、泣いたり笑ったりできないように、意識を閉じ込めているのでしょう」
 

「ははははは」
 空元気で笑ってみせた後、裕人は下を向いて拳を握りしめる。
 拳に雫が落ちる。ヴァンパイアになって以来、初めてこぼす涙だった。
 

裕人:バッと顔を上げて、「よし、決めた。俺はちゃんと、優美を救ってあげなきゃ。お兄ちゃんだからね」

GM/サバシーナ:「ならば、我が血族の一員として、共に戦いますか?」

裕人:!

GM:要するに、ストームナイトとかやめてこっちに来なよ、ぐらいのニュアンスです(笑)。

裕人:そうだなー。ストームナイトとして戦っても、勝てないだろうなー。すっげぇ強い魔物だしなー。

ディ:・・・・・。

アン:まあ、原因は、裕人がタイマンで戦うことしか考えてないからだけどね。

GM:その通りです。ひとりじゃ勝てないと思います。

裕人:でも、優美をちゃんと怪我なく救いたいしなー。
 

 サバシーナが、裕人に何かを強制することは決してない。
「目的地まで、まだ時間はあるわ。考えなさい」
 祖母を喜ばす術を知っている孫のように、裕人も微笑む。その瞳は血のように赤い。
「そうだね。僕たちには、確かに、いくらでも時間があるね」
 

GM/サバシーナ:「ええ。少なくとも夜、眠ることはない」

アン:ヴァンパイアだからね。

GM:そう言うと馬車がまた、カッカッカッカッ・・・。ここで第二幕終了です。怒涛の感じで、色んなことがわかってまいりました。

 
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