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TORGリプレイ

『Be Strong』

第一幕

 
シーン5 応報

 
 アブラームオリンピア、選手控室。
 強力は、良くも悪くも武道家界隈で名の知れた存在であるため、
 選手たちから好奇の目を向けられていた。
 

強力:あのね、20代前半の、キックボクサーの欧米十冠王ってのが、絡んでくるんですよ。

GM:「角力なんて所詮、あれだろ? 狭ぇトコでわーっと押し合いへし合いしてるだけの」

スレブ:『リアルファイトじゃそんなに強くねぇんだろ?』

アン:『どうせよぉ、角力には、パンチも蹴りもねぇんだろ?』

スレブ:『一発でのしてやるよ!』

強力:「・・・・・」虚ろな目を上げて、「お前、名前は?」

GM:そしたら、名前はヨーゼフにしましょう。実績もちゃんとあって、コアアースの大会では、有名な選手です。

アン:ストリートの狼、ヨーゼフなんたら(笑)。

強力:「ヨーゼフ。知らねぇなぁ」

GM:周りの奴が、「は! ヨーゼフ知らねぇってよ! さすがにモグリじゃねーか?」

スレブ:『ヨーゼフ知らないなんて、ロートルなんじゃねーの?』

GM:「さすが東洋の島国だ。ケータイだけじゃなくて、頭もガラパゴスか!」

強力:彼はおもむろに、ポケットから、タバコを1本出して、火を点けます。「お前・・・何かを怖いと思ったことはあるか?」

GM:「は! あるわけねぇだろ!」
 

 言い終わるのと同じタイミングで、ヨーゼフの目に、火の点いたタバコが飛ぶ。
 時が止まったかのような一瞬の後、怒号と悲鳴。・・・暗転。

 公園を歩いていたアブラームの許に、知らせが届く。
『控室の方で、乱闘騒ぎが起きているらしいです』
 

GM:呼ばれて、移動する感じですかね。

ディ:「オレも行く。止めなくては」

GM/アブラーム:「助かります!」

スレブ:自分は行かずに、フランソワと、世界について語り合ってる(笑)。

GM:わかりました。じゃあ次に、そのシーンをやりましょう。

強力:後で必ず、騒ぎの概要は伝わると思う。

GM:ってことで、移動してみると、控室では、人が何人も倒れています。

強力:ヨーゼフはね、顔が陥没してる。ステータス的には致命傷。

ディ:!

GM:このまま放っとくとまずいやつですね。

強力:他のセコンド陣も、うずくまって、腕の方向があらぬ方に曲がってたりとか、周りの選手がやばすぎて止められないレベルの喧嘩になってた。

スレブ:『うぅ・・・痛ぇよぉ・・・』

GM:独特の空気が流れています。

ディ:【ヒーリング】で治せますか?

アン:あと、一応自分も〈医学〉持ち。

GM:判定しなくてもわかります。何人かは病院送り確定で、すぐに手当てしないと生命に関わる、もしくは、何らかの障害が残る可能性があります。

強力:このレベルの横綱が本気出しちゃったんで。

スレブ:顔が手の平の形に陥没してる。

強力:ディアンは気づくよ。打撃の感じから、恐らくこれができるのは、知っている限りでは強力以外にいない。
 

「喧嘩を売られた。だから買った。悪いな。リザーバーを用意してくれ」
 声を聞いて顔を上げたディアンの目に飛び込んできたのは、
 タンクトップにカーゴパンツ、ざんばら髪の、強力のような男の姿だった。
 

ディ:着流しは着てないんですよね。

強力:着てないです。なので、声を掛けましょう。「ディアン・オブローか。懐かしい顔だな」

ディ:「ストロング・・・?!」

アン:「ああ、知り合いか」

ディ:「答えろ。お前がやったのか」

強力:「ああ。こいつらに喧嘩を売られたからな」

ディ:「お前は、人を傷つけるために角力を使う男では、なかったはずだ!」

強力:「ああ。その通りだ。だから角力じゃねぇよ。これはただの暴力だ。もうひとつ言うならな、こいつらが弱かったんだよ」(嘲笑)

ディ:・・・・・!

GM:とりあえず、救護班が到着して、対応しおうとしているんですけど、この独特な空気の中、ヨーゼフの関係者が、恐怖と怒りの両方で、銃を取り出します。「う、うわあああ!」

スレブ:『ヨーゼフに何しやがる!』

GM:「こいつは、すげぇ選手だった! 優勝できたかもしんねぇのに!」

アン:いや、この大会では無理だったろうな。状況を見るに。

GM:「失格もクソも構うもんか!」と言って、撃とうとするところです。
 

 気がつくと、「その男」はすぐ目の前にいた。
 まるで時の流れが遅くなったかのように、カツーン、カツーン、と現れて、
 銃を持つ男を、軽く撫でた、ように見えた。
 刹那、男の頭部が、壁に叩き付けられた。

 崩れ落ちる男の傍らに立っていたのは、筋骨隆々の浅黒い上半身に、
 金の腰飾りを帯びた、ナイル帝国十総督がひとり、ネテル。
 

強力:「エジプト角力の正装・・・! なんで、あんたがここにいるんだよ・・・。なんでこんな大会にあんたが出てくるんだよ!」

GM/ネテル:「俺はここに、角力をしに来たんだ。エジプト角力を。角力ってのは、人に向けて使うもんだ」

強力:「てめぇ・・・」

GM:あなたの怒りを受け流すように、「王子。テイのいい予選会だと思ってください。時間が短縮できて、良いではないですか。残るべき者は残ったようだし」と言って、独特の気配を発しつつ、「ただ、俺とやりあえるだけの資格を持った奴が何人いるか、という話だが」

強力:何かを言おうとするんですけど、言えないんですよ。怖くて!
 

 左右に一瞥をくれながら、ネテルは部屋をゆっくりと横断する。
 彼は、「強者か、強者でないか」以外に興味を有していない。
 

GM:ディに目を留めて、こいつとやりあったら面白いかもしれないな、って感じの笑みを浮かべる。だが、この場において、俺とお前は敵同士ではない。

アン:そうね。

GM/ネテル:「ディアン・オブロー。これは、アクシデントだ。あなたが、どうこう言う筋合いはない。そして、現在、私は、外交特使と選手を兼ねて、この祭典に招待されている。あなたが法的に私を問う資格はない。ですよね王子?」

ディ:王子が何と答えようと、「違う。お前の興味のために、選手を傷つけていいはずがない」と言って、救護を始めます。

GM/ネテル:「おお、ひどい言い草だ。私はただ、弟弟子を守ろうとしただけなのに。(強力を見て)なあ!

強力なあ! のタイミングで、ビクッ! ってする(笑)。怯えきった顔をしている。

ディ:うわー。

GM:かつてやり合った時のネテルよりも、圧倒的に研ぎ澄まされています。強力の前に立って、「当たったら、いい取組をしよう」

強力:「それ以上近づくな。近づくな・・・!」

GM/ネテル:「(鼻で笑って)おい、それ以上下がるなよ?」

強力:!
 

 強力の足は、控室の隅に乱雑に置かれていたトラロープを踏み越え、
 まるで土俵を割ったかのように、後ろに出てしまっていた。
 

GM:「これが角力ならお前の負けだ」と言って背中を向けて、「・・・これに関しては、俺の好きなようにやらせてもらう」とだけ、誰ともなしに言って、去っていきます。

強力:もう、反応できません。イメージ的には、さっきまで、キックボクサーの欧米十冠王を、半殺しにしてた男が、まるで、小鹿のように震えてる。

スレブ:うーむ。

アン:こっちも、怪我人の容態を診て、包帯とかを巻いとく。

GM:あなたが手当てをしてくれるなら、ほとんどの人は助かりそうです。ただ、あなたは、今この場で誰よりも、傷を負ってる人は、強力だと思いました。

アン:だろうね。ボソッとつぶやく。「・・・生きながら死んでる奴がいるねぇ」

GM:といったところで、シーンを切ります。

強力:これやりたかったんだー!(笑)

アン:わかります!

GM:彼の言動は、ある種、恐怖の裏返しでもある。

強力:はい。だから彼は、角力は使ってないんですよ。ただ怯えながら暴力を振るってるだけ。

 
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