Daydream訪問記・Vol.2(後編)

―2時間クトゥルフ―

【前のページへ】
 

 これは、私しゃあみが2003年12月6日に、テーブルトークカフェ・Daydreamにて『クトゥルフの呼び声』を遊んだ際のプレイレポートです。


 
第一幕 アメ横の惨劇

 ある土曜の夕方。保険勧誘員の中野、プログラマーの岡本、大学生の黒木は、歳末大売り出しで賑わう上野アメ横通りに来ていました。乾物屋の前を通りかかった時、ひとりの青年が品物の山に尻餅をつきます。青年は誰かに突き飛ばされたといった様子で憮然として辺りを見回していますが、それらしき人の姿は見えません。爆笑する青年の仲間達。そうしていると、今度は青年の身体が宙に浮かびます。「! あ・・・がっ・・・」みるみる血の気を失い、かさかさに干涸びて地面に放り出される青年。そして、彼を吊り上げていた靄のような異形の物体が、赤く染まって姿を現します。“星の精(Star Vampire)”と呼ばれる外宇宙の生物が、突如アメ横に出現したのです。

 人々はパニックに陥り、散り散りに逃げ出します。踵を返す岡本、一緒に買い出しをしていた友人美貴の手を引き走り出す黒木。一瞬出遅れた中野の背後に、“星の精”の触手とかぎ爪が迫ります! 中野は信じられない強運でかぎ爪を避け、転がるように走ります。その時彼は見ました。中華料理店の裏口に、プラスチック容器に入った豚の血液が置かれているのを。

中野:「この化け物は血の匂いを感知しているに違いない」

 彼は自分の直感を信じ、プラスチック容器を掴んで中身を辺りにぶちまけます。おかげで距離を稼ぐことができたのですが・・・。

黒木:どっちかっていうと、その光景の方がSANチェック必要そうですね(笑)。

 そんな中野を、「余計なことをするな」と言いたげな顔で睨みつける東洋人の男がひとり。男の手に抜き身のナイフが握られているのを見て、中野は一も二もなくその場を離れます。

 一方、“星の精”は哀れな犠牲者の体液をすすり、どんどん巨大化していました。四方八方に延びる触手のうち1本が、黒木と美貴のすぐ横を走っていた若い男に突き刺さります。そして、男の成れの果てが、まるで紙くずのように放り投げられ、美貴の頭上に降ってきます。

KP:ファンブル振っちゃった。「い、いやぁぁぁ!!」

 正気を失い、めちゃくちゃに暴れる美貴。しかも男が着けていたペンダントが、美貴自慢のストレートヘアに絡まり、身動きが取れなくなってしまいます。黒木は彼女を見捨てて走り去ることもできず、迫り来る触手を前に焦りを募らせるばかりでした。

黒木:お願いだからおとなしくして! 美貴をその辺に落ちている缶詰で殴って気絶させます。(コロコロ)失敗ー!

 まさに絶体絶命。そこに救いの手を差し伸べたのは岡本でした。彼は商店街の店先に輪ゴムでぶら下げてあったハサミを拝借して、美貴の髪の毛をペンダントから切り離します。そして彼女を肩に担ぎ上げ、黒木の手を引いて走り出すのでした。

岡本:グラップルで判定・・・(コロコロ)01、クリティカル!

黒木:ヤバい、キャラ的にマジで惚れそう(笑)。

 こうして、大混乱のアメ横を抜け出した3人は、駆けつけた警察官及び救命士に保護されます。しかし、“星の精”の脅威が去ったわけではありませんでした・・・。

 
第二幕 朱に染まる病院

 中野は、「無差別テロ事件の数少ない生存者」として事情聴取を受けます。情報操作によって、アメ横での惨劇は「無味無臭の神経ガスが引き起こした通り魔事件」とされているのでした。そして彼は、ガスを吸っている可能性があるから病院へ行って然るべき治療を受けるようにと言われます。

 その頃、岡本と黒木は、美貴を病院の医療スタッフに引き渡し、医師にさっきの出来事を一生懸命説明していました。しかし医師は「無差別テロ」という記者発表の方を信じているため、怪物に襲われたなどというのは、神経ガスを吸ったせいで見た幻覚だ、と言って取り合ってくれません。因みに美貴は安静剤を注射されて眠っています。

KP/医師:「彼女の後頭部に、鈍器で殴られた痕と、髪の毛を切られた跡があるんだが」

岡本:「それは、人間が上から降ってきて、ネックレスが絡まって、どけようとした時に・・・」

KP/医師:「そうそう、君は彼女の友人だったね。そのネックレスというのは、こんな物だったかな?(炎の意匠を象ったペンダントを見せる)確認するが彼女の持ち物ではないんだね?」

黒木:目星で判定・・・00って?

KP:ファンブル(笑)。じゃあ君は、思わず「それは私のです」と言ってしまう。

 そこに中野が通りかかります。岡本と黒木が訴えている内容を聞き、脳裏に先ほどの光景がフラッシュバックします。思わず中野は大きな叫び声を上げていました。
 一時的狂気に陥った中野の口から、異国の言語が紡がれます。それが先ほど中野が雑踏の中で見かけた東洋人の男が呟いていた呪言であることを知る者は誰もおらず・・・虚空から、淡い赤色をした“星の精”が揺らぎながら出現します。

 黒木は慌てふためき、無意識にポケットに手を入れます。指先に何かがこつんと触れ、引っ張り出してみると、それは炎の意匠のペンダントでした。何故こんな物を持っているのか? 一瞬呆然とする黒木。

KP:回避と幸運振ってください。失敗した? 残念だったね、ペンダントを取り落とせば助かったかもしれないのに。ぱくっ。

 黒木の右手、肘から先を、竹輪ぐらい太い無数の触手が包み込みます。体液をすすられる激痛に悲鳴を上げながら、黒木はぼんやりとこんなことを考えていました。(あぁ、血って本当に赤いんだ。何だか、綺麗)

 中野は、手持ちのアタッシュケースで“星の精”へ殴り掛かりますが、にゅるりと形を変えて受け流されてしまいます。岡本は、恍惚の表情を浮かべる黒木から、必死で触手を引き剥がします。“星の精”は、邪魔者2人をかぎ爪と触手で攻撃。避けきれなかった岡本が深手を負います。

 続くラウンド、先手を取れなかったのが致命的でした。“星の精”はまたも攻撃を命中させ、岡本の生命力がマイナスに! まるで映画のように、岡本はゆっくりと斃れます。
 我に返った黒木は、辺りに散らばったガラスの破片に目を留めます。これで斬りつければ、ダメージを与えることができるかもしれません。チャンスはおそらく1回のみ。

KP:アイデアロールをしてください。

黒木:50以下・・・やった、ぴったり50!

KP:では、胴体に感覚器らしき部分があるのを発見します。

黒木:そこを斬ります(中野、岡本も頷く)。

 黒木の攻撃は幸運にも命中。“星の精”は、この世ならざる声を発して、病院から消え失せます。へなへなと崩れ落ちる中野と黒木。ふと顔を上げた中野は、あの東洋人の男が、一部始終を見ていたこと、そして苦々しい表情で病院から出て行ったことに気づきます。しかし男を追いかける気力と体力は、誰にも残されていませんでした。

 
終幕 そして・・・

 不思議なことに、岡本は一命を取り留めました。これはもう、“人知を超えた何者か”の力で生かされているとしか言いようがありません。代償として、彼はかなりの正気度を喪失しました。

 一方、中野と黒木も、病院でカウンセリング等の精神的治療を受けました。

 退院の日、医師は黒木に炎の意匠を象ったペンダントを手渡します。「入院中も、うわごとでそのペンダントのことばかり言っていたんですよ。余程大事な物なんでしょうなぁ」「あ、ありがとう・・・ございます・・・(一体何なのこれ? 全然憶えがないんだけど)」
 

 こうして、クトゥルフ神話世界の深淵に足を踏み入れてしまった3人。
 もはや彼らに、安息の日々はない。

...Happy Ending?
 


back to Review Vol.2

Review Vol.1

back to Eternal Smile


"Eternal Smile" Since 2002.02.02
Copyright (C) 2002-2020 Charmy. All Rights Reserved.

E-mail:charmy_s@mac.com