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TORGプレイレポート

『HOPE』

〜世界の中心で愛を叫んだけもの〜

 

第三幕

 
シーン2

 
 最終決戦。必ず倒すべき相手はジルコニアのみだが、呪いの力を無効化しない限り、ホテルを襲う危機は去らない。横槍を入れてくるサラサも厄介だ。相当なリソースを割かぬ限り、滅ぼすことは困難だが、少なくともお帰りいただく必要がある。
 呪いの力を無効化する方法は3つ。ホープ・ダイヤを破壊するか、ダイヤに対人行動を仕掛けてプレイヤーズコールを達成するか、あるいは法的な所有者を変更するか。
 

渡辺:「龍大人。呪いは俺が引き受けます。ホープ・ダイヤ、俺に譲っていただけませんか」

「なにっ?!」

 
 ホープ・ダイヤの魔力を我が物にしようとしていたジルコニアは、渡辺の意思を察し、彼に【ライトニング】を放つ。渡辺は龍嘉誠の前に立ち、鍛え上げられた筋肉でそれを全て受け止め、受け流す。

 【オルタード・ファイアボール】の呪文を唱えようとするイリスへ、渡辺は穏やかに語り掛ける。
 

渡辺:「イリス。俺のような大人になってはいけないよ」

イリス:「それはどうしてですか」

渡辺:「俺の顔は、偽りでできている。俺の名前も経歴も、全て、きみたちが最も嫌う、嘘で固められたものだ」

イリス:「では、それを『本物』にしてしまってください」

 
 大切なのは、過去がどうあったかではなく、『どう在りたいか』。
 短い言葉から、イリスの想いを感じ取り、渡辺は小さく溜息をつく。
 

渡辺:「やれやれ。これだから女の子は苦手なんだ」

 
 渡辺は、バネ上げ式短剣で人差し指の先を切り、己の血で契約書を綴る。署名する前に、一瞬躊躇するが、嵐王寺勇人からもらった「渡辺明」という名を一気に書き上げる。〈ビジネス〉判定、偉業達成! その神業に、龍嘉誠は口笛を吹く。
「法律家としてのわたしの目から見ても、きみの契約書は完璧だよ。わたしがサインすれば、契約完了だ」

 ホープ・ダイヤが、ジルコニアの手を離れ、渡辺の手の中に吸い寄せられる。それと同時に、龍嘉誠に降りかかっていた呪いの力が、一斉にベクトルを変え、渡辺に襲いかからんとする!
 

 ジョンは、“モノローグ”を使用し、ジルコニアが使役する水の精霊・火の精霊に、延々と語り掛ける、という奇策に出る。“モノローグ”カードのテキストは、『カッコいい台詞を言っている間、敵は止まって聞いている』。精霊たちは敵(エネミー相当)として扱うことをマスターが明言していたため、大水も大火事も、拡大が止まってしまう。さらに、ジルコニアやサラサ、リヴァイアサンまでもが、敵対行動を止めてジョンの言葉に聞き入る。
 

ジョン:「さて、ひとりの男がここまでカッコよく決めたんだ。大団円ということにしてくれないかな? もし、それができないのだとしたら、あまりにも無粋ではないか。ましてや、あなたたちは、紳士淑女の類だ。それができないほど、心が小さいとも思えないんだがね」

「・・・・・」

ジョン:「不満があるのならば、彼と同じように、正式に契約を更新して、ホープ・ダイヤの所有権を獲得すればいい」

 
 黙って微笑むサラサ。(法的な所有権と呪いだけ、あのカラードに押し付けて、ダイヤは私がもらっていくわ。何か問題があって?)とでも言いたげな表情である。
 

ジョン:「ジルコニア。あなたはどうだい?」

「き、貴様らなど、リヴァイアサンのブレスで、一撃で死ぬ定めだ! そのように言ったところで、死がほんの少し先に延びるだけ。どれだけ生にしがみつこうとするのだ、この愚か者め!」

ジョン:「タダでは死なん。死なば諸共だ」

「・・・こいつ!」

「彼はヴァンパイアハンター。限りなく死に近づいて、日々を生きている者。あの目は、本気よ」

ジョン:「そして、リヴァイアサンに、あなたと我々を見分けるだけの知性があると思うか?」

「!?」

ジョン:「今日のところは、お前を倒すつもりはない。だから、邪魔をするな」

 
 明らかに格下だと思っていたハンターに、強気に出られ、サラサは胸の高鳴りを抑えられない。
 

ジョン:「というわけで、ジルコニア。あなたにはこのパーティ会場から、退場願おう」

「き、貴様に何の権利があって!」

ジョン:「権利? あるさ。私はヴァンパイアハンターだ」

「そうだったわね」

 
 サラサが音もなくジルコニアに近づき、首筋に噛み付く*8)。苦しむジルコニアを、ジョンは鞭で引き寄せ、白木の杭を用意する。
 

ジョン:「チェックメイトだ」

 
 非力な魔術師の胸が、白木の杭で貫かれる。
「残念ね。生まれたてのヴァンパイアは、すぐ死んじゃうの」
「な、ぜだ、こん、な・・・!」
「あなたが本当に邪悪なら、もう一度転生できるから、頑張りなさい? 邪悪さが足りなかったら、生前の行いを悔いて、地獄に行きなさい?」

 ジルコニアの身体が、通り名と同様、透明な結晶に変わっていく。パリン! と音がして、結晶が粉々に砕ける。
 ジョンは、帽子を被り直すと、サラサに一礼する。
 

ジョン:「また、機会を改めて」

「ええ。今日のところは退きましょう。それでは皆さん、ごきげんよう」

 
 サラサは黒い傘を広げて窓から外へ身を踊らせ、闇の中に消える。

 ジルコニアの消滅によって制御を失ったリヴァイアサンが、全てを消し飛ばさんと息を吸い込む。イリスのファイアボールが注意を逸らす。ディアンはリヴァイアサンの口の中に飛び込み、シールドで喉を塞いでブレスを逆流させる。パン! という破裂音とともに、リヴァイアサンは絶命する。
 勢いよく弾き飛ばされ、窓の外に落下しそうになるディアンを、ゴリラがキャッチ。優しく窓際に降ろされる光景を見て、渡辺は思わずつぶやく。
 

渡辺:「なんて・・・ゴリラは優しいんだ」

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