Eternal Smile > HOPE
 

　限りなく今に近い未来………
　今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 

Prologue

 
　魔女狩りを逃れてフランスからイギリスに渡り、本物の魔法使いになってしまった少女、イリス・オネストは、生き別れの両親を捜す旅の途中で、アイルのアーディネイ女王から協力を要請された。
　ミッションは、闇の魔道士ジルコニアの討伐。聖騎士ディアン・オブローと共に、ロンドンの地下鉄網に潜むジルコニアを追い掛けるが、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。

　呪文で足跡を辿ったところ、ジルコニアが向かった先は、香港。
　アーディネイ女王も、香港で悪しき陰謀が企まれているとの神託を受けたらしい。イリスとディアンは、今度こそジルコニアを止めると心に誓い、香港へと旅立つ。
 

　ジョン・アンダーソンは、ガイア（＊１）では名の知れたヴァンパイアハンターである。つばの広い帽子と仕立ての良いスーツ、容姿端麗なヴィクトリア人紳士。
　しかし彼は、敵をおちょくることに全精力を注ぐ、「残念なイケメン」だった。ガイアから地球へ渡ってきたのも、命懸けでヴァンパイアハンターをやっているのも、理由はただひとつ、カッコいいから。

「食らいやがれ！」
「ハハッ！　この俺はヴァンパイアだぞ。塩酸を浴びたところで痛くも痒くも・・・な、なに？！　身体が溶けていく！　そんなバカな！　塩酸のビンに真水が入っていたとは！　まさか貴様、俺の弱点を知っていたのか？！」
「（え、ウッソ、マッジ？　ラッキー！）ふん。悪党の考えなど、この私にはお見通しだ！」
「うぉーのぉーれぇぇー！」

『塩酸のビンに入った真水をかけられて殺される』。
　偶然にも真の死をもたらされたヴァンパイアの懐から、航空券がはらりと落ちる。到着地は、香港。
「三途の川の渡し賃として、これは私がいただいておこう」
 

　ニッポンに秘密裏に存在する、反金輪企業連合ラウル・ブロック。渡辺明（わたなべ・あきら）は、そのラウル・ブロックで最も優秀な工作員のひとりである。任務に合わせた肉体改造はお手の物。外見も変幻自在。
　現在、渡辺は、ニッポン人男性の平均的身長・平均的体重を有するビジネスマンとして、嵐王寺財閥総帥、嵐王寺勇人（らんおうじ・はやと）の下で働いている。

「例の広告代理店の敵対的買収、問題なく完了いたしました」
　さも当たり前のように告げられ、苦笑する勇人。
「さすがですね。ところで、もうひとつ、お仕事をお願いしてもよろしいですか？」
　勇人は渡辺に、自分の代理として、香港でトップの資産を誇る大富豪、長江実業会長、龍嘉誠（ロン・カシン）とビジネスの話をしてきてほしい、と頼む。
「かしこまりました。最終的に達成すべきミッションは、何ですか」
　あまりにもクールな渡辺に、内心胸をときめかせながら、勇人は真剣な瞳を渡辺に向ける。

「皆に、希望を届けてください」
 

【ＣＡＳＴ】

(→Act 1)
 

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