Eternal Smile > Highlord of Earth
 

第三幕（承前）

 
　月の神殿の階段を下りて行くと、役目を終えたカカルメカの杖は砕け散り、ひとつの宝石（エタニティ・シャード「パレンケの瞳」）のみが残る。
「きみが持っていてくれ。役に立つ筈だ」
　レオンはリディアにパレンケの瞳を託す。リディアは自分の前の場札に視線を落とし、複雑な表情を浮かべる。

　ウィチロポチトリはさらに誘惑を続ける。
『我が故郷（ホームコズム）は既に滅びた。しかし汝らが我と組めば、我は、かつての力を取り戻す』
『この地球をめぐる争いは尽きない。それは、汝らの望むものではあるまい。我に力を貸せば、戦いを未然に防ぐことができるかもしれないのだぞ？』

「みんな、惑わされてはいけません！」
「すまないリディア。今、幻聴が聞こえた」
「ただ、ひとつだけ言えることがある。ウィチロポチトリの故郷は、滅んでいる。これは重要なキーワードだ」

　階段を下りきると、血で緑色に染まった、戦の神ウィチロポチトリの像が待っていた。
『さあ、問おう。汝は、ハイロードとなるか？』

　沈黙が辺りを支配する。

「わかったわ。私が、ハイロードになる。そして、地球を救う！」
　“疑惑”持ちのリディアが宣言する。

「やめてくれ！　シンシアが目を覚ましたら、彼女に何て言えばいいんだ！」
　レオンが叫ぶ。
「だって、ダークネスデバイスの力を使わないと、他のハイロードを倒せないもの！」
「お前にそんなことさせられるかよ。お前は俺たちのリーダーなんだ！」
「でも・・・私はやる。ウィチロポチトリの故郷に渡る！」

「リディア。あんたは恰好をつけすぎだ。ひとりで抱え込みすぎだ。どうして僕たちのことを、もっと信用しないんだ？　僕たちはここまで、どんなに辛い戦いも、何とか切り抜けてきた。どうしてダークネスデバイスの力なんて借りようとする？」
「レディの言うことだからな。私は今まで通り、貴女を支持しよう」
「最終兵器を手に入れたいと言うなら、手に入れるがいいさ。ただしお前が、この地球を守ることができなければ、俺たちがお前を止めることになるだろう」

　エルモが非難し、カドフェルが認め、ジョーが覚悟を問う。
「それがストームナイトの生き様だものね・・・ごめん」
　リディアはジョーに向かって寂しく微笑み、ウィチロポチトリへ歩み寄る。

「ウィチロポチトリ。あなたの悲しみは、私が受け取った。だからあなたは、もう悪いことをしなくていい」
『ふん。甘い奴だ。だがその決意は、本物のようだな』

　リディアがウィチロポチトリに行った〈説得〉の達成値は、４０。

　ウィチロポチトリは、リディアが新たなハイロードになるという言葉を信じた。既に滅びたホームコズムへブリッジを繋ぎ、力を蓄えるために一旦そこへ戻り、リディアが来るのを待った。
　しかし、リディアがブリッジを渡ることはなかった。

　ホームコズムにて、ウィチロポチトリは、騙されたことに気づいて地球に戻ろうとしたが、時既に遅し。ストームナイトは、スティリーの破壊に取りかかっていた。

　カドフェルが。「このスティリーという杭と、私と、どちらが強いか、勝負だ！」
　レオンが。「初めて会った時は、胡散臭い牧師だと思ったけど、あんたの力、大したもんだ。ここで倒れられたら困るからな」（カドフェルをかばう）
　ジョーが。「奴らは任せろ」（妨害するためにやって来た、再再生アステカ超人をサイコガンで瞬殺）
　エルモが。「僕は、ヴィクトリアの夢を正夢になんて、絶対にしない！」

　そして、リディアが。
「今まであなたには、生け贄の血しか、与えられる物がなかった。でも、あなたに私の涙をあげる。あなたの血が、洗い流されるように。これが私の、最後の願い」
　遥か宇宙の彼方のウィチロポチトリに、願いは届いたかどうか。

　スティリーが破壊されるのと同時に、ブリッジは崩れ去り、ウィチロポチトリが地球へ帰還する手段は、永久に失われた。

　ハイロードを擁立し、流血と征服に満ちたアステカ帝国を復活させようという、ダークネスデバイスの野望は、こうして潰えた。

　地球は救われた。
　少なくとも、第１３回オンリーコンが開催される、その日まで。
 

　限りなく今に近い未来………
　今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 

　TORG Play Report『Highlord of Earth』 Fin.

---Thanx to all players, readers, and the Gamemaster!
See You at the next TORG Only Convention!
 

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