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第16回トーグオンリーコンベンションプレイレポート

『正しい世界の救い方』

 

 限りなく今に近い未来………
 今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 


Prologue

(ゲームマスターによる卓紹介を転載)

 
 魔法使いは味方ではなかった。
 あの怪人も当然、敵だ。
 世界のルールは、少しずつわかってきた。
 ならば、次はこちらの番だ。

---米国陸軍将官、作戦行動前のコメント

 今回のシナリオテーマは王道復古。
 ベタで、コテコテで、それでいて一筋縄では行かない、
 ごく普通のヒーローの任務を果たしていただきます。
 

 倒すべきは何か、守るべきは誰か。
 舞台はコアアースからリビングランド、
 もしかしたらさらにその先へ。

 力があるものがヒーローなのでしょうか。
 それとも……
 といった、活劇半分、その他半分のシナリオを用意して
 皆様をお待ちしております。
 

 TORG【正しい世界の救い方】

 ヒーローの登場を、世界は待ち望んでいます。
 ……敵を倒すだけでは、世界は救えないのです。

 スティリー抜こうかなって。

 
【CAST】

 ドミニク・イェーグ リポーター/コアアース
 牧野芹奈(まきの・せりな) 火士ハッカー/ニッポンテック
 マキシミリアン バーバリアン戦士/アイル
 “安全ピンのマリー” アンヌマリー・クロステル ストリートパンク/サイバー教皇領
 “ロザリオマスク” ピーター・ザンギエフ 覆面レスラー(ジャングルの王者)/ナイル帝国

 


第一幕

 
 こんな日が来るなんて思っていなかった。
 私が、一般的にはバーバリアン戦士マキシミリアンとして知られている、夫の克己(かつみ)と並んで、ブリーフィングを受けるなんて。
 

 私の名は牧野芹奈。今回のビジネスは、端的に言うと、アメリカ、リビングランドと呼ばれる原始世界に残っている、自由人村の住民5万人に、希望を取り戻させることだ。

 地球の可能性を奪いに来た侵略者との戦い、いわゆる「ポシビリティ戦争」が始まって数ヶ月。防衛側の地球は、少しずつこの戦争のルールを理解しつつあった。

 侵略にはスティリーと呼ばれる杭を使う。3本のスティリーで囲まれた三角形の内部が、異世界(レルム)となる。アメリカ軍は、その杭を1本でも抜けば、レルムが崩れ、元の地球(コアアース)に戻ることを知った(言い換えれば、実践したということ)。ただし、レルムの中に残されていた人間の多くは、燃え尽きて死んでしまったらしい。
 

 燃え尽きず、生き残れた者たちには、共通点があった。どこかで「希望の物語」を耳にしていたのだ。その物語は、私たちストームナイトが何かを成し遂げ、人づてに、またはメディアを通じて語られたものに他ならない。

 つまり、私たちに求められているのは、レルムのど真ん中にある自由人村で、「みんなに希望を与えられるような、大きな成果を上げる」こと。その「希望の物語」を、5万人の住民全ての胸に届け、希望の欠片(ポシビリティ)を取り戻させること。
 

 だからかしらね。集まったチームのメンバーは、全員とても身体が大きかった。克己が小柄に見えてくるぐらい。

 スキンヘッドのブラックピープル、ドミニク・イェーグ。彼はアメリカで人気のあるリポーターらしく、人を惹きつける話し方をする。

 ドミニクと並んで2メートルの巨躯を誇る、ロザリオマスク。司祭服の覆面レスラー。ゴリラに育てられたという噂だけど、さすがにそれはないわよね。マンガじゃあるまいし。

 「安全ピンのマリー」。フランスから来たパンクなお嬢さん。逆立てた髪型(敢えて言うと、モヒカン)の分も入れれば、身長は克己とほぼ同じ。多分、彼女と克己が、このチームの火力担当。

 私の武器は、モバイルPCと情報。ハッキングによって世界の行く末を少しずつでも変えていく。それが私の選んだ戦い方だ。この後、原始世界へ入ることが判っているのに、役に立つのか、とお思いの方も多いでしょうね。でも、マキシミリアンのマネージャーとして、彼をサポートするために同行するんだったら、文句はないでしょ?
 

 アメリカ軍が、スティリーを抜く作戦を決行するのは1週間後。つまり猶予は1週間。私たちは軍に同行し、村に着き次第、別行動を取ることになっていた。

 実を言うと、アメリカ軍からの要請は「スティリーを抜く前に5万人を避難させる」ことだった。でも、わざわざ自由人村なんて名前をつけて、レルムのど真ん中に残っている人たちだ。筋金入りの頑固者に決まってる。そういう人を無理やり動かそうとすれば、私たちへの心証が悪くなる。

 動きたくないなら、動かなくていい。レルム崩壊の衝撃をやり過ごせるように、「希望の物語」を聞かせてあげればいい。
 でも、そんな風には考えず、確実を期すために細部を切り捨てることを是とする人もいた。
 

 ・・・ブリーフィングでの一幕を思い出した。
 村にいる5万人のうち、荒事に向かないご老人や子どもなど、真に村から連れ出した方がいい住民の数は、約1万人。私は、その1万人だけには避難を承諾してもらって、レルムから脱出させることを提案した(*1)。ところが、FBI(連邦捜査局)からの出向者、スカリー女史が、異を唱えた。

『彼女は単なる協力者。我が軍の作戦へ口出しするのは、越権行為では?』

 幸い、指揮官のスティーブ・ゴールデンベルグは、話のわかる人物だった。

『我々とて、銃で同胞を追い回したくはない。だから待機する』
『軍としては許可できないが、うまくやるならばやりたまえ。我々は関知しない』

 彼は、自由人村の住民に「ストームナイトは味方だ」と思ってもらえるように、憎まれ役を買って出てくれた。それは、とても有り難い配慮だった。
 

 スティーブ指揮官は、こうも言っていた。
『私としては、以前の作戦で貢献してくれた、ジャングルの王者アーネストを呼んだつもりだったが、ふむ、君ではないようだな』(*2

 聞くところによると、ロザリオマスクと、その英雄アーネストは、よく似た背格好をしているらしい。ジャングルの王者なんて、また、随分と強そうな二つ名ね。その人と背格好が似ているということは、ロザリオマスクも、実はすごい人だったりするのかしら。
 

(→NEXT
 


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