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第16回トーグオンリーコンベンションプレイレポート

『正しい世界の救い方』

 

第二幕

 
シーン1

 私たちには、運転手のボビーと衛生兵のレベッカが同行した。2人は、知っていることを快く話してくれた。リビングランド最大の恐竜ボー・アカを飼い慣らす、ゴルトという名のエディーノス(トカゲ人)が、自由人村を度々脅かしているらしい。そして、スティーブ指揮官が当てにしている、ジャングルの王者アーネストは、ゴルトに斃されてしまった、と。

「そういえば」ヴァイキングに故郷を蹂躙されたという、スウェーデン出身のレベッカが続けた。
「村の周囲で、風変わりな魔法使い風の人物を、目撃した者がいる」

 リビングランドに魔法使い? どう風変わりだったのか訊こうとしたが、レベッカもそれ以上詳しいことは知らなかった。
 私は克己の顔を見上げた。その魔法使いが、もし悪人であるならば、アイルの女王に色々便宜を図ってもらっている克己としては、捨て置くわけにはいかないはずだ。名誉にかぶれた騎士って面倒よね。そんな私の内心を知ってかしらずか、克己はいつになく真剣な顔で、私に小さく頷いた。
 

 まずは情報が欲しい。ドミニクと克己は、村の有力者へ話を聞きに行った。ロザリオマスクは、森の奥へ消えた。
 私は、何か別の思惑がありそうなスカリーを尾行した。根拠はない。ただの勘だ。彼女は村外れの廃屋の方へと歩いて行った。途中で「安全ピンのマリー」と合流した。マリーは、話を聞きやすそうな不良連中を追っていて、気がついたらここにいたそうだ。

 見つからないように、注意深く廃屋の窓の下に身を潜め、スカリーの様子を窺った。彼女は、おもちゃのような極彩色の機械で、誰かと通信していた。
「コードネーム“犬”殿。デルファイ評議会は、今回はあなたの提案を受け入れる」
『フィーヒヒヒ! 犬とはひどいな。このワシ、Dr. バスタードに向かって!』
 

 通信機のスピーカー越しであることを感じさせない大きな声。すぐ解った。彼女は、Dr. バスタードというナイルの悪漢と、何らかの取引をしている。

 デルファイ評議会というのは、「強いアメリカ」を志向する集団だ。一言で言えば、超タカ派。その実働部隊はスパルタンと呼ばれ、少しでも侵略者に利益を与えていると看做した者を、虐殺してまわっている。そんな噂を耳にしたことがある。

 スカリーがスパルタンの一員だとするならば、彼女の望みは、5万人の住民の全滅。スティリーを抜く前に住民を避難させたり、燃え尽きるのを避けるために希望を取り戻させたりするのは、彼女が最も忌避したい事態だ。私への敵意があからさまだったのも納得がいく。

 勿論、彼女の思い通りにさせる気はない。売られた喧嘩は買わせてもらいましょう。
 

「リビングランドのトカゲ連中は、語り部を刈り取っている。何故だと思う?」
『お喋りさんは嫌なんだろうよ。それに、密告者殺しはキミの十八番だろう。フィーヒヒヒ!』

 Dr. バスタードとの通信中、彼女は終始苛立っていた。彼女にユーモアを解するセンスはあまりなさそうだ。ロザリオマスクからバナナを差し出された時に、払いのけそうな剣幕で、『カロリー制限中なの』と断っていたくらいだから。
 

 ここで出て行って彼女の正体について問い質すか否か。マリーと私の意見は一致した。「今は泳がせておく」。詰問したところで、作戦の一環だと逃げられればそれ以上追及できなくなる。

 代わりの手は考えてある。私は、スーツの襟の裏から、小さな発信機を取り出した。
「これをスカリーの身体につけてほしいの」
 マリーは快諾し、見事なコントロールで発信機を彼女の背中に投げつけた。これで彼女の動きは把握可能になった。

 
シーン2

 村の中心部に戻ると、村の有力者らしき男とドミニクが、酒を飲み交わしていた。
「「USA! USA!」」
「アーネストの野郎、死んじまったと思ったのに、生きてたなんて、めでてぇや!」

 一体どうしてこんな話になっているの?
 克己とドミニクから聞き出した経緯(一部推測を含む)は、次の通り。
 

 自由人村の有力者は言った。

「アメリカ軍が国民のことを考えていることは理解している」
「しかし、最大で何万人も死ぬかもしれないという作戦に、首を縦には振れない」
「英雄だったアーネストも殺られちまった。もう故郷を捨てるしかないのか?」

 アーネストは、頭は悪いが正義感が強い、いい奴だったとのこと。それを聞いたドミニクが、場の空気を笑い飛ばして言ったらしい。
「何を言ってるんだ兄弟。アーネストはピンピンしてるぜ?」

 丁度そのタイミングで、ロザリオマスクが道に迷って有力者の屋敷の窓の外に姿を見せたらしい。ロザリオマスクとアーネストの背格好はよく似ている(*3)。有力者はアーネストが戻ってきたものと信じ込み、祝いの宴を始めてしまったらしい。
 

「ドミニク。あいつの語りは世界一だ。うん」
 克己は腕組みして頷いた。まさか貴方、彼のハッタリを信じているわけ?

 2人に、誤解を解こうという気はまるでないようだ。でも、ある意味これでいいのかもしれない。アーネストが生きているという知らせが、村の住民に希望を与えてくれるのであれば。

 ところが、話はこれで終わらなかった。まさに「事実は小説よりも奇なり」(*4)だった。

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