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TORGリプレイ

『Samurai Overdrive!』

 

 限りなく今に近い未来………
 今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 


Prologue

 
 石造りの古い教会を背景に、巨大な剣を持った戦士と、ヴァイキングの族長が、
 丁々発止の斬り合いをしている。
 仲間たちの見守る中、戦士の渾身の一撃が、ヴァイキングの身体を両断し、
 返す刃がその魂を切り裂き消滅させる!
 

 ストームナイトが、アイルの元ハイロード、アンガー・ユーソリオン卿を倒した、
 という知らせは、瞬く間に全世界を駆け巡った。
 宮廷へと帰還したストームナイトには、勲章の授与や祝賀会、戦勝パレードなどの、忙しい日々が待っていた。

 他のハイロードたちの反応は様々だった。

 リビングランドのバラク・カーは、深い霧の立ち込める森の中で、ユーソリオンの弱さを嘲笑った。

 ナイル帝国のDr.メビウスは、事もなげに言い切った。
「私がかつて計算した通りだ。何月何日何時何分、ユーソリオンは倒される、と」

 オーロシュにてゴーントマンの留守を預かるテクノデーモン、スラッチェンは、
 酷薄な笑みを浮かべるだけだった。

 サイバー教皇ジャン・マルロー1世、彼の行方は杳として知れない。

 そして、秘密裏にニッポンへの侵略を成功させた、金輪産業CEO、金輪龍一ことNo.3327は、
 パレードの映像が流れるスクリーンを一瞥し、一通の封書を手に取った。
「これで、チェスの手がもう一歩進みそうだな」

 ―――暗転。
 

【CAST】

 ユウイチ・カゲヤマ(26)レルムランナー/コアアース
 リリアン・シュール(18)私立探偵/サイバー教皇領
 闇影(??)ザ・ニンジャ/ナイル帝国
 マキシミリアン(26)バーバリアン戦士/アイル
 ディアン・オブロー(28)バーバリアン戦士/アイル

 


第一幕

 
シーン1 四天王現る

 
 アイルレルム、闇のエリアにある古き城塞。
 城壁の周りには、様々な低級種族や魔物が集い、命令が下るのを今や遅しと待っている。

 細長いテーブルが置かれた会議室の中に、ひとりの男がテレポートしてくる。
 仕立ての良いアルマーニのスーツを見事に着こなす、金髪碧眼の英国紳士。
 しかし、その瞳には、隠しようのない邪悪な光が漂っている。

 男の斜め後ろに、音もなく、黒い肌のエルフの女性が現れる。
「メルキエラですか。随分とお早いお着きで」
「あんたこそ、早いじゃない。サイモン・カー」

 メルキエラと呼ばれた女性がローブを脱ぎ捨てると、鍛え上げられた肉体が露わになる。
 彼女こそ、闇の軍最強の武道家(モンク)の名を欲しいままにしている人物である。

「ご覧になりますか? 我らが盟主、ユーソリオン卿の最期を」
「ふん、悪趣味だね。そんなものに興味はないよ」
 サイモン・カーの掌の上の水晶球が映し出す光景を見て、メルキエラは眉をひそめる。

 と、城塞の真上の空が黒雲に包まれ、赤く、巨大な眼が辺りをぎろりと一望する。
 次いで、角笛の音が響きわたり、巨大な悪魔が天の階を駆け下りてくる。

「楽しそうな話をしているな、人間ども。
 愚かなる指導者を失った貴様等を、俺がこの角笛で導いてやろうか?」

 角笛の主ヴォータンの、傲岸不遜な言動も、二人は全く意に介さない。
「あんたも召喚された身なんだから、いい加減、魔界に帰ったらどうなんだい?」
「その辺にしておきましょう。ヴォータン。貴方と、貴方の部下である曠野の狩人たちは、その数無限とも聞きます。
 貴方たちに本気で蹂躙されては、この地球そのものが保ちませんよ」
 サイモン・カーは薄く笑い、会議室の扉の方を振り返る。

 扉が静かに開き、漆黒の鎧に身を包んだ戦士が、室内へと歩を進める。
 フルフェイスの兜を帯びており、表情はおろか、性別すら窺い知ることはできない。
 闇の戦士は、大きな布袋を無造作に床に降ろす。
 袋の口が開き、中から光の軍の兵士たちの生首がいくつも転がり出る。

 闇の四天王・・・そう呼ばれる彼らの関心事は、ただひとつ。
 次なる盟主は、四人のうち誰か。

「なんだったら、拳に賭けて決めようか?」
 メルキエラの挑発を、サイモン・カーは涼しい顔で受け流す。
「焦ることはないでしょう。各々が功績を立てて、他の者に己が盟主だと認めさせればよいだけのことです。
 闇の戦士のように、実力を示すのもひとつの手段だと思いますよ。ただ私は、軍師という立場でしたから、
 今後もこれまで通り、全体の指揮を執らせていただけると有難いのですが」
「勝手にやるがいい、人間」
「そうね。細かいことはあんたに任せるわ」
 ヴォータンとメルキエラの返答を受け、サイモン・カーはにやりと笑う。

「承知しました。では私の案をご説明申し上げます。
 まずは、この機に乗じて奪われた、闇のエリアを取り戻すのが第一ですね。そして、次に重要なのは・・・」

 彼がぱちり、と指を鳴らすと、ユーソリオンを倒した者たちを筆頭に、
 数多くのストームナイトの写真が宙に浮かび上がり、メリーゴーランドのように回転する。

「彼らの首をどれだけ狩れるか、ではないですか?」

 メルキエラが身を乗り出し、ヴォータンは低いうなり声を上げる。
「いかに我々がユーソリオン卿を失ったばかりとはいえ、いつまでもなめられたままでは困ります」
「あんたの言う通りだ。ごあいさつをしなければねぇ」

 
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