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TORGリプレイ

『Be Strong』

第二幕

 
シーン2 天命

 
「あー、どうぞどうぞ。ゆっくりしてきてください」
 アブラームの能天気な声を背に、ディアンは「知の祭典」出場選手が滞在するホテルへ向かう。

 床に広げた大きな紙からはみ出しそうな勢いで、フランソワが数式を書き綴っている。
 アンは、それにはもう慣れっこという顔で、ディアンに頷く。
「ああ、来たか、ディアン。あたしの方から行こうと思ったが手間が省けたよ」
 

ディ:「フランソワは、ずっとこれをやっているのか?」

アン:「ああ、そうだ」

GM:主催者からもらった問題があるらしく、それを解いています。

ディ:ちょっと覗いてみる。

GM:〈手掛かり分析〉、もしくは、〈数学魔法〉。

ディ:えっ?!

GM:〈数学魔法〉は、ナイル帝国の専門技能です。ない場合は〈科学〉か〈知識(天文学)〉。

ディ:さすがにそれは、ナイルのキャラクターしか持ってないと思う。

強力:ディアンが持ってたら、違う人生になってただろうね(笑)。

ディ:(コロコロ)14。ポシビリティを使います。(コロコロ)10、24。(コロコロ)31。+10、“ひらめき”使って、《知覚》22。

GM:おーすごい。専門技能だから、わからないところも多いんだけど、何を計算してるかはわかる。ものすごく複雑な、惑星の運行を計算している。

ディ:「星、の動き、か?」

GM:そしたら、ピクッと反応して、「わかる? わかるの?! ねえ、数学好き?!」

ディ:「あ、いや、すまない・・・」

GM/フランソワ:「そう? でもこれ面白いのよー。これはね、惑星の配列なんだ!」

強力:・・・・・。

アン:グランドクロス?

スレブ:嫌な予感がするぞ。

ディ:えーと、プレイヤー発言してもいいですか?

GM:いいですよ。

ディ:ナイル帝国には、惑星の配列に深く関わりがある、〈数学魔法〉というものがありまして。

強力:そうですね。

スレブ:自分も聞いた時点で、あー、そうかと思いました。

ディ:【クロコダイル・レギオン】、河からクロコダイルの軍団を呼び出す、みたいな、おかしな効果の魔法や、死んだ人を復活させる魔法もありましたっけ?

GM:究極レベルの奇跡の、【リザレクション】ですね。惑星配列は、実は信仰の奇跡にも効果を及ぼしています。

強力:惑星配列が関係するのは、恐らく儀式魔法レベルで、結果的にクリティカルなものになりがちであるな、とすぐにわかったので、趣深い顔になった。

GM:今言った【リザレクション】は、1週間かけて、死者の魂をこの世に呼び戻す奇跡です。ナイルのハイロード、Dr.メビウスはこれで復活しました。1000年に一度しかできないんです。

アン:さすがに話しておこう。「彼女は、ナイルのヴィランに狙われている」

ディ:!(フランソワを見る)

アン:勿論、彼女が、数学に集中してる時にね。

GM:フランソワは全然聞いてないです。星の動きだってわかる人がいたことが嬉しくて、もっとわかるように説明するには、どんな数式にすればいいんだろう、と考え始めて、上の空で、「大丈夫、わたしと同じ部屋には誰もいない!」(笑)

アン:「・・・ああ、あれなら大丈夫だ」

強力:自分の世界観に入っちゃってるからね。絶対聞こえない。

アン:「バロンに会ったよ」

ディ:「バロン・インサイディア・・・。何と言っていた?」

アン:「彼女を連れて行く、と」
 

「なんだか、思ったよりも腐れ縁になったねぇ」
 アンがタバコをくゆらせたその時、窓の外から、コンコン、と紳士的なノックの音が響く。
 

ディ:「前にも、こんなことがなかったか?」

アン:「ああ、あったね」

ディ:「返事をすれば、来るだろう。しなければ、彼は、ずっと窓の外で待つ」

GM:うん(笑)。

強力:紳士的ですね。

スレブ:実に紳士的。

ディ:オレが呼んでも意味はないから、アンが。

GM:中にいる人なら誰でもいいよ。

強力:ああ、吸血鬼のマナーか。

GM:そうです。因みにこれは、彼が守っているマナーであってルールではありません(笑)。あくまで人造吸血鬼なので。

強力:人造だからこそだね。

アン:じゃあ、小型の花瓶を置いてある机を、窓に向かってブン!

ディ:「あっ!」

スレブ:ガシャーン!

GM:パリーン! ってなったところで、「レディは乱雑にすぎる。しかし、レディが窓を開けてくれたのだから、喜んで、中に入らせていただこう」

アン:多分、思いっきり頭にコブができてる。

GM:無数のコウモリが入ってきて、わーっと集まると、人の姿になる。

アン:とりあえず、夢中になってるフランソワを抱えて、近くにポン、と。

GM/バロン:「大丈夫です、レディ。何の断りもなく、連れて行くような真似はしませんよ。・・・久しぶりですね、ディアン卿」(恭しく礼)

ディ:オレも一礼する。

GM/バロン:「どうでしょう? 先日のお話の続きですが、引き渡していただけると、問題がなくて良いのですが」

アン:「あんた、あたしに対して特別な感情を抱いてるって言ったね」

GM/バロン:「はい」

アン:「あんたの中のあたしが、首を縦に振ると思うかい?」

GM/バロン:「しかし、断らずに連れて行くのは、良くないと思うのです。悪いようにはしませんよ」

ディ:「なら、フランソワを連れて行って、何をする?」

GM:チラッとアンを見て、聞きたい? みたいな顔をします。

アン:じゃあ、それに乗って、喋りやすいように聞いてやる。「あんたらの狙いは何だ?」

GM/バロン:「その子に、幸せな環境を差し上げようと思って」

ディ:「幸せな、環境?」

アン:「幸せな環境ねぇ」

GM/バロン:「でしょう? その子は、どこにいても独りです。だったら自分の力が発揮できるところにいるべきだ」

アン:じゃあ、敢えて、普通のヒーローが言わない答えを言う。「それの何が悪い?」

一同:・・・・・。

GM/バロン:「私もこのような身ですから、人と違う辛さはよく知っています。ですから、孤独を癒して差し上げたいな、という気持ちがあるのも、貴女なら、おわかりいただけるのではないかと思います」

ディ:「孤独を、癒す?」

GM/バロン:「ナタティリ様はおっしゃっていました。彼女の力は、人と断絶するためにしか使えない、と。そして、ナタティリ様は、彼女の力を必要としている」

スレブ:ふーむ。

アン:「なら、尚更渡すわけにはいかない」

一同:・・・・・。

アン:「この子は確かに、他人や他の世界から、拒絶されているんだろう。だからこそ、彼女が彼女自身で、迷いながら悩みながら決める、っていう道まで、周りに封じさせるわけにはいかないよ」

GM/バロン:「なるほど。因みにディアン卿、あなたのご意見は?」

ディ:「子どもは、大人が守り慈しむものだ」

GM/バロン:「そうですね。私もそう思います」

ディ:「ナタティリが、フランソワを慈しみ育てるとは思えない。だから、オレには、フランソワを引き渡す気はない」

GM/バロン:「なるほど」

ディ:とは言いますが、まだ、剣に手は掛けていません。

GM:「では、ひとまずここは引き下がります。あなたたちに敬意を表して、ご忠告差し上げます。私はこのように、紳士的に話をしました。しかし、それを選ばない者たちもいます。どうか、お気をつけください」そう言って、すーっと、視線を上げたところで、アン、〈発見〉。

アン:(コロコロ)2か。ポシビリティ使おう。(コロコロ)15。“アクション”使います。合計+5で、〈発見〉16。

GM:お、いいですね。カードは使える時に使っとくのが良いと思います。そうすると、彼が目で合図を送っているのに気づきます。・・・スナイパーがこちらを狙っています。あなたは対応可能です。

アン:〈銃器戦闘〉で大丈夫?

GM:はい。先に一発撃っていいですよ。

アン:じゃあ、撃っちゃいます。(コロコロ)7。マイナス2だけど、〈銃器戦闘〉18。

GM:ホアッ?!(笑)

ディ:いきなり撃ったのか。「えっ?!」

GM:ヘルファイア・ライフルを構えて、ぶっ放しました。当たります。ダメージをください。

アン:ダメージもマイナス2で、20っス(笑)。

スレブ:火力やばいな。

GM:20は、基本値参考例だと、軽めのトラックなので、イメージ的にはトラックが一撃で吹っ飛ぶ。向こうのスナイパーが、バン! と撃ち抜かれます。同時に、殺気が襲いかかってきます。戦闘です!

 
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