TORG三題噺シナリオ2

『トリニティ・ドール』

Last Updated:2002.11.23
 

 当サイトでは、キリ番を踏んでくださったお礼として、3つのお題に基づいてシナリオを創り、進呈させていただくことにしました。1,000ヒットのニアピン、999ヒットをゲットされた榊良麻さんから戴いたお題は、

  • 追うもの
  • 超小型コンピュータ

の3つ。今回は、アイルソースブックから着想を得て作ってみました。

 なお、以下のシナリオはフィクションであり、実在の人物、国家、団体等とは無関係であることを、ここに宣言いたします。
 

→実際のプレイ風景『人形使いの憂鬱』


はじめに

 アイルの魔法学院卒業生に、リンフィールという男がいた。

 悪戯好きで有名で、しばしば珍妙な魔法をかけては導師に油を絞られていた。
 また彼は、製作した呪文に自分の名を付けることでも知られていた。

 しかし、そんなリンフィールが、ある時を境に、
 自分の名を呪文へ冠するのを止めた。
 他人(ひと)には明かさぬ、ひとつの理由によって。
 

地球で、限りなく今に近い未来………
今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……
ほんの少しだけ未来に、起こるかもしれない物語。
 

ストーリー

第一幕

 ストームナイトは、ケンブリッジに設立されたアイル魔法学院(分室)から、人里離れて暮らすリンフィールという名の魔法使いを説得して連れ帰って欲しいと依頼されます。依頼主によると、最近リンフィールと同期の卒業生がドーバー海峡付近で消息不明になり、その人物を捜すために調査・探索系の魔法に長けている彼の力がどうしても必要らしいのです。

 荒れ地を越え、魔法学院で教えられた彼の家に辿り着くと、上空からグリフォンに襲われます。しかしそれは魔法で造り出された幻影です。誰か一人が幻影を見抜けば、グリフォンの姿は消えます(爪で捕まれて上空へ連れて行かれていた者は落下してダメージを受けます)。

 家の中はもぬけの空でした。寝室に何故か、1匹の蛙がいるだけです。家中を捜索していると、声が聞こえます。「おぉい、可愛いおなごはおらんのか。ワシにキスをして、呪文を解いておくれ」・・・なんと、蛙がしゃべっています。無視して手掛かりを見つけようとするなら、蛙はこう続けます。

「こら、貴様ら屋敷の主人に断りもなく何をするか!」
「このワシ以外にリンフィールなどおらん。解ったなら、早ぅキスをせい」
 

第二幕

 なんと蛙は、自分こそが魔法使いリンフィールだと主張します。ストームナイトが蛙を問い質すと、彼は苦い顔で一部始終を説明します(なお、残念ながらキスをしても呪文は解けません・笑)。

 今より少し前、この館に侵入者がありました。リンフィールはその者に向けて、対象を蛙に変える圧縮呪文【リンフィールズ・リトル・フロッグ】を解放しようとしましたが、その瞬間、カウンターで【スペル・スナッチャー】(呪文剥奪)を使われて、逆に自分が蛙にされてしまったというのです。侵入者は若い女性。色素の薄い髪と肌、それに少しだぶついた軍服を着ているのが印象的だったそうです。

「すごく可愛い顔した嬢ちゃんでな、まさかあれほど高等呪文の使い手だとは思わなんだよ。だが・・・何と言えばよいのか、顔に生気がなかったのぉ」

 そしてリンフィールは、蛙の姿では魔法が使えないので、術者を連れてきて自分を元に戻して欲しいと続けます。「まだそれほど遠くへは行っておらん筈じゃ、今なら追いつける」そう言うと彼はストームナイトの一人に杖を持たせて【ハウンドセント】(猟犬の鼻)の呪文を照射します。

「ワシの蛙変化呪文には特殊な知識が使ってあって、あの嬢ちゃんが解除せん限り元には戻れんのじゃ。ほれ、早ぅ出発せんか。もたもたしとると逃げられてしまう」

 こうしてストームナイトは、匂いを辿ってリンフィールを蛙に変えた術者を追いかけることになります。

 移動手段にもよりますが、件の人物には遅くともドーバー海峡手前の港で追いつきます。リンフィールが言っていた通り、色素の薄い髪と肌をした若い女性です。戦闘が開始されますが、ストームナイトは思わぬ苦戦を強いられます。『モード変更、Fighter ; Mage ; Cleric』無機質な声で呟く度、女性の動きががらりと変わるのです。彼女は、ストームナイトの強さをある程度見極めてから、【ステイ・ボイス】(静止の声)の呪文を使って一行を足止めすると、ドーバートンネルの中へ逃げていきます。

 女性の正体は、サイバー教皇領製の操り人形、カータグラです。カータグラとは、ゴッドネット(サイバー教会が管理するヴァーチャルリアリティ世界)に人格を吸い取られた抜け殻の肉体へ、サイバーウェアを埋め込んだもので、通常は特定の行為を記憶させた「アクトチップ」によって動いています。しかし彼女の肉体を制御しているのは、「精神チップ」という、人格と技能を備えた特別なICです。サイバー教会は、カータグラに複数の精神チップを挿せば、様々な技能を使える強力な兵士になるのではないかと考え、実験を開始したのです。

 用いられている精神チップは、戦士・魔法使い・聖職者の3種類。その中のひとつ、 魔法使いのチップに、リンフィールの同級生の精神が入っています。行方不明だった魔法使いは、ドーバー海峡でストームに巻き込まれてフランス(サイバー教皇領)へ流れ着いたあげく、異端審問に捕まって精神チップにされてしまったのでした。
 

第三幕

 フランスへ逃げ込まれてしまったら、追跡は著しく困難になると思われるため、何としてもドーバートンネルの中で再び彼女に追いつき、リンフィールの所へ連れて帰らなければなりません。ストームナイトは万全の準備(例えば、車の手配)をしてトンネル内へ入っていきます。

 20キロほど行ったところで、ポシビリティの奔流を感じます。アイル/コアアース/サイバー教皇領、異なる3つのリアリティがせめぎ合い、トンネルの中にも関わらずリアリティ・ストームが起きています。どうにかそこを通過してしばらく行くと、女性の姿があります。

 先刻と異なり、女性は逃げ腰です。サイバー教会が、3つの精神を宿した貴重なカータグラである彼女を遠隔制御し、急いで自国へ呼び戻そうとしているからです。闘いの中、彼女がカータグラであることと、サイバー教会の司祭によって遠隔制御されていることに気づけば、〈威圧〉〈挑発〉などの対人行動で制御者を狙って彼女を無力化することができます。

 勝利したかと思われたその時、魔法使いの精神チップがカータグラの支配を奪い返し、呪文を唱えます。しかしその呪文は失敗し、サイバー教皇領の世界法則「異端魔術の法則」に則ってデーモンが顕現します。ストームナイトはカータグラへ憑依したデーモンを逆転負けで追い出し、異界へ送り返すなり倒すなりしなければなりません。

 デーモンを倒せば、倒れているカータグラを難なくアイルまで連れ帰ることができます。カータグラから魔法使いの精神チップを抜き取って持ち帰り、サイバー教皇領出身のストームナイトが自らのチップホルダーへ挿して魔法技能を使うというのも良いでしょう(但し、サイバー教皇領の人間の多くは魔法を悪魔の所業と考え、嫌悪しています。それに、精神チップに身体を支配される危険もあります)。
 


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