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TORGプレイレポート

『Christmas Carol』

 

第二幕

 
シーン3

 翌朝、カイルさんが起こしに来るまで、私は眠りこけていた。ジェシカが魔法で見せた「未来の可能性」を、否定したい気持ちの表れだと思う。

 ・・・祈りとも、歌ともつかない旋律が聞こえた。
 黒い天使が指差した相手は、ものも言わずに焼け焦げた(*7)。
 塔が空を飛び、中空で爆発した。大きな雲が広がり、そして視界には何もなくなった。

 あんな光景を、現実のものにするわけにはいかない。

 カイルさんは、昨夜のうちにニッポンの知人に連絡を取り、フィンランドへの直行便を手配してもらったらしい。手際の良さに、私は感心した。
 カラクリは簡単だった。あの日銀行強盗に襲われたビルのオーナーは、嵐王寺勇人(らんおうじ・はやと)さんといって、カイルさんが以前一緒に仕事をしたことのあるストームナイトだったのだ。弱冠16歳の財閥総帥。きっと有能な方だろう。お近づきになりたいものだわ。
 

 というわけで、半日ほどの旅の末、私たちはフィンランドのドローバックに足を踏み入れた。「サンタランド」の看板は、見るも無残に破壊されていた。

 白装束の忍者が、こちらの様子を伺っていた。
 ニッポンのエージェントが動いている? 今にも攻撃を仕掛けそうなカイルさんを制して、私は彼らにカマをかけた。
「貴方の探しているものは、ここにはありませんよ」
「ほう。聖遺物のことを知っているのか」
 あら。自分から情報を渡してくれるなんて、親切なエージェントさんだこと。
「私たち、協力できると思うわ」
 ジェシカの言葉が追い打ちとなり、忍者は地図を取り出した。

 いわく、この先に、リアリティ・ストームが発生している。すなわち、未知の世界がある。
 ニッポンとサイバー教皇領が探している聖遺物は、ストームの向こう側にある。
 既にサイバー教皇領のホバータンクと戦車随伴兵(スカウト)が、ストームを目指して出発している。忍者たちはストームを越えることが困難なので(*8)、この情報を渡す代わりに、サイバー教皇領に先んじて聖遺物を入手してほしい。

 私は礼を言って忍者と別れた。当然、聖遺物を渡すつもりは全くない。騙される方が悪いのよ。

 先行していたサイバー教皇領のエージェントの相手は、三人に任せた。
 カイルさんとキャプテンは、随伴兵や猟犬、軍馬を次々と無力化していった。ジェシカは吹雪の中で懲りずにコートを脱ぎ、ホバータンクの乗組員の心に深い傷を負わせた。
 

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