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TORGプレイレポート

『Christmas Carol』

 

第三幕

 
 幸雄くんは、まるで迎え入れられるかのように、苦もなくストームを通り抜けた。
 雪に覆われた大地に、一本のモミの樹が立っていた。大きな樹だが元気がない。下の方の葉は枯れかけていた。
 モミの樹には、「サンタランド」という看板が掛かっていた。

 幸雄くんが走り出した。みすぼらしい小屋の入口の横に、大きな角を持った動物がうずくまっていた。
「ルドルフ、大丈夫?」
 それは大怪我をしたトナカイだった。そして私は気づいた。小屋の入口に、主の名前が書かれていることに。

『サンタクロースの小屋』

 カイルさんが、ルドルフと呼ばれたトナカイの傍にしゃがみ込んだ。
「デュナド神よ。この者の傷を癒やしたまえ」
 彼の手が金色の光を放ち、傷はみるみる癒えていった。ルドルフは鼻をピカピカと光らせて野を駆け回った。
「よかったねルドルフ! お兄さん、ありがとう!」
 

「ほうほう! お客さんかい。どうぞ、入っておくれ。開いておるよ」
 小屋の中から声がした。絵本で見たサンタクロースそのままの格好をした老人が、ベッドに横たわっていた。
「サンタクロースとは、あなたのことですかな?」
 キャプテンが尋ねた。
「いかにも、わしがサンタクロースじゃ。・・・おや、久しぶりじゃな」
 老人は優しい瞳で私のことを見ていた。
「どこかで、お会いしましたか?」
「ほうほう! 忘れてしまったのかな。ウサギの人形を、あんなに喜んでおったのに」

 えっ?!
 そんな、だって、あの人形はパパとママからのプレゼント・・・。
 えっ? ええっ?!

「思い出して、くれたかの」
 みんなの、とりわけジェシカの視線を感じた。顔を真っ赤にしながら、私はやっとの思いで小さく頷いた。

 サンタクロースが笑った。気のせいか、顔色が良くなっているようだった。
「怪我をしているのですか。よければ私が、デュナド神に奇跡を・・・」
「それより、お前さんたちの話を聞かせておくれ」

 私たちは、この「サンタランド」へ来た目的を話した。幸雄くんの父親がこの辺りで消息を絶ったこと、父親は、サイバー教皇領の天使と一緒だったこと、サイバー教皇領とニッポンのエージェントが、聖遺物を狙っていること。

 サンタクロースは、全てを知っているかのように言った。
「12月24日、ニッポンの近海。この子の欲しいプレゼントは、そこにある」
 幸雄くんを連れてその場所に駆けつけ、天使の影響力を排除できれば、父親を取り戻すことができる。サンタクロースはそう教えてくれた。しかし私たちには交通手段がない。
 目に涙をためてうつむく幸雄くんに、ルドルフが頬ずりした。

「我々に、あなたのソリを貸してもらえないだろうか?」
 キャプテンがサンタクロースに尋ねた。
「それには条件がある。わしの代わりに、世界中の子どもたちにプレゼントを配っておくれ。このソリには、サンタクロースとして仕事をする者しか乗れないのじゃ」

 クローゼットがひとりでに開いた。
 私たちは、各々選んだサンタ服を着て、ソリに乗り込んだ。
「セリーナ、意外とノリノリじゃない」
 うるさいわねジェシカ! 女物はミニスカしかなかったのよ。そういう貴女は紅白のマント姿? 嫌な予感しかしないわ。
 

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