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TORGプレイレポート

『Christmas Carol』

 

第四幕

 
 サンタクロースのソリは、サンタクロースが子どもたちにプレゼントを配ろうとする時にだけ、本来の速度を発揮するらしい。地球中を一晩でまわり終えるための速度は、マッハ3000! 当然、生身の身体はそれに耐えきれないため、サンタ服が防護服の役割を果たすそうだ。

 私たちは、全てが終わった後、12月24日の晩に「サンタクロースになる」ことを約束し、「幸雄くんにプレゼントを渡すために」ソリで大空を駆けた。幸雄くんの望むプレゼントは・・・。

『お父さん、帰ってきてください』
 

 一瞬にして、ソリはニッポン上空へ到着した。合成音声のような賛美歌が流れていた。
『聖ニコラウス、聖者の名を騙り、欺瞞によって民の心を惑わす悪魔』
『我らは御使い。堕落した民を、神の炎で焼き尽くさん』

 私たちの背後から、九機の無人戦闘機が現れた。眼下には米軍空母が停泊中。そして、冬木武雄は、空母の甲板に天使と並んで立っていた。どうやらあの天使は、戦闘機をハッキングして、私たちをおもてなししてくれるつもりのようだ。

 ソリの上でジェシカが立ち上がった。強風で赤と白のマントがめくれた。今度は赤いビキニ姿だった。ジェシカはガーターベルトからコルト・ピースメーカーを抜いて手の中でくるりと回し、乱射早撃ちで戦闘機の機動を阻害した。

 カイルさんが剣を横薙ぎにした。信じられないことに、九機の戦闘機が一撃でスライスされ落ちていった。

 キャプテンが私をお姫様抱っこして(ごめんね克己)、空に飛び出した。ロケットレンジャースーツの背中に、赤と白のマントがはためいた。そのままキャプテンは空母の甲板に着陸した。私はラップトップコンピュータを取り出し、こちらからもハッキングを仕掛けて天使から戦闘機のコントロールを奪おうとした。

 天使が私に手を伸ばした。
「危ないセリーナ!」
 ジェシカの声が聞こえた。不信心者を焼き尽くす神の炎は、不発だった。当然よ。こんなエセ天使が、サンタクロース=聖ニコラウスの祝福を受けた私を、傷つけられるはずがない。
 天使は怒って私のコンピュータへ侵入しようとした。でも、そのぐらい予測済み。ブロックされた天使はネットワーク内へ逃げ帰った(*9)。
 

 キャプテンが幸雄くんを呼んだ。
「少年! 今度はきみが、お父さんにプレゼントを渡す番じゃないのか」
 幸雄くんは頷いて、冬木氏のすぐ近くにソリを降ろした。

「お父さん。会いたかった。お金が入ったおかげで、綺麗な服も着れたし、素敵な車にも乗れたし、美味しいものも食べられたけど、でも僕、そういうの、もう要らないよ」
 幸雄くんの両目から涙がこぼれた。
「だから、お父さん、帰ってきて!」

 お金が要らないだなんて、パラン教の人たちや、アイルの名誉にかぶれた人たちが口にする世迷いごと。でも、幸雄くんの父親の心を、天使の支配から解き放つには、この言葉が最も効果的だった。

「そうだな。ごめんな幸雄。思い出した。昔、変なこと言って悪かった。サンタはやっぱり、いるんだな」
 正気に戻った冬木氏は、幸雄くんを抱きしめた。
「一番のプレゼントだよ。ありがとう」
「うん・・・うん!」

 これでハッピーエンド、とはいかなかった。天使が最後の力を振り絞り、空母からニッポンめがけて核ミサイルを発射したのだ。
 即座にミサイル搭載のコンピュータをハッキングし、着弾を避けようとしたが、間に合わなかったものが二本。お願い!

 カイルさんが奇跡のような精度で剣を振るい(*10)、動力部を切り離した。核ミサイルはただの動かぬ塊となって海に飲み込まれた。
 もう一本にはキャプテンが飛びつき、ひょいと向きを変えて地球の外へ向かわせた。マンガのように鮮やかな手腕だった。
 

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