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TORGリプレイ

『CONNECT』

第三幕

 
シーン3 Reconnect(承前)

 
 馬車の奥には、ヴェールで顔を覆った、上品な老婦人が座っている。
 明らかに、只者ではない。裕人は何故、このような相手と一緒にいるのか?
 恐怖で肌が粟立つのを感じながら、ディアンは静かに問い掛ける。
 

ディ:「ユウト。なぜ、行ってしまった?」

裕人:「・・・・・」

ディ:「ユウトは、オレには関係ないことだ、と言った。なぜ、頼ってくれない?」

裕人:「なに? 頼らせてくれるの?」

ディ:「いくらでも頼れ。オレは、ユウトを助けるためにあの場に行った。ユウトを助けたくてあの場に行った。オレが決めたことだ」

裕人:「ははっ。あの時、恐怖で足が動かなかったのに? 怖がってたくせに、そう言うんだ?」

ディ:「・・・そうだな。オレは、ユウトがヴァンパイアであることを、認めることが、怖かった」

裕人:「そりゃあ、ね。だって、あなたに嘘ついたのは、俺だもん」

ディ:「ユウトは、ストームナイトだ。それで充分だ」

裕人:「ストームナイトでも、ヴァンパイアであることは、変わらないじゃないか!」

ディ:「ヴァンパイアでも、ストームナイトであることは変わらない」

裕人:「・・・確かに」

ディ:「ユウト」

裕人:「ん?」

ディ:「ひとつ、頼みがある」

裕人:「ヴァンパイアの俺に、何?」

ディ:「このロンドンで、邪悪なヴァンパイアが、人間をヴァンパイアにする実験をしている。オレたちは、そのヴァンパイアを、これから倒しに行く。ユウト。オレたちに力を貸してくれ」

裕人:(そのヴァンパイアは、優美? それとも・・・?)ディアンは知ってるのかな、優美に取り憑いてることを。

GM:知ってます。ソウジが気づいてます。

裕人:うーん・・・。
 

 裕人の迷いは、彼のアイデンティティと深く関係している。
 

裕人:まず、自分がヴァンパイアであることは、確かだ。ストームナイトの力として、ヴァンパイアの力を振りかざしてる。だから、ヴァンパイアの力を、否定しきれない。

GM:ですね。使わなければ、冒頭で死んでるからね。

裕人:そして、優美は、ほぼほぼ魔物になってしまった。助ける手段は、取り憑いてる奴を殺すこと。それを、みんなが手伝ってくれる?

GM:ひとりでは無理だというのはわかっていて、あなたの後援者になってくれる人が現れた。その人と一緒に戦えば、助けられるかもしれないけど、その人から、「助けるっていうのはどういう状態なの? そもそもあなたは、あなた自身をどう思ってるの?」と訊かれている。

ソウジ:難しいなー。

GM:今のあなたと同じようになるのは、助かってるの? 助かってないの?

裕人:肉体的には助かっても、精神的には助かってない。

GM:だったら、ヴァンパイアになればいいじゃん。何を悩んでるの?

ディ:・・・・・。

GM:というのが、サバシーナおばあちゃんの理屈です。ただ、本当だったら、こんなこと「言う必要がない」んです。

アン:うん。

GM:「お前はヴァンパイアであり、私の孫なんだから、私と一緒に、私の息子をやっつければ、お前の妹は帰ってきて、一緒に仲良く暮らせるよ。なんだったら私も力を貸すよ、一族になるかい?」おばあちゃん優しいから、なってもいいかな、って思わない?

裕人:思う(笑)。

GM:そういう話だけすりゃいいんですよ。でも、都合の悪いことをわざわざ話してるんですよ。

アン:揺れ動く選択肢を与えてる。

GM:さっき〈魅了〉で振ってもらったのは、おばあちゃんはあなたが可愛いんです(笑)。だから選択肢を与えたいんです。

裕人:あー、なるほどー。

ソウジ:じゃあ、ちょっとだけ発言していいですか。「きみが裕人か」

裕人:「あなた誰?」

ソウジ:「俺はしがないサラリーマンだ。香川ソウジという」

裕人:「まあ、はじめまして」

ソウジ:「どうも、はじめまして。俺はきみたちの話を、ディアンから聞いただけに過ぎないし、これは勝手な俺の考えだが、重要なのは、どうあるかではなく、『どうありたいか』ではないだろうか」

裕人:「どうありたいか・・・」

ソウジ:「きみが今迷っているなら、これから先どういう風になりたいか、を考えたらどうだろうか。俺も、せいぜい有給休暇を1日取れたぐらいで、定時退社もままならない身だが・・・」(笑)

GM:パンチあるなぁ!

アン:一番ガスッとくる!

裕人:「は、はぁ」

ソウジ:「それでも、労働組合としてついてきてくれる仲間たちもいる。今はまだ、こんなダメダメな身だが、俺は将来、定時退社を全うするべく・・・(*14)」

GM:カッコいい!(笑)

ソウジ:「そんな未来を獲得するため、そうありたいと思って、日々、努力している。たとえ今が、よくない状況だとしても、先のことを信じて、どうありたいかを見つめて行動するといいんじゃないだろうか。ま、こんなオッサンの言うことなんて、きみには説教臭く聞こえるかもしれないが」

裕人:・・・・・。

アン:「ちょっと聞きたいんだが、あんたがヴァンパイアだとしたら、生き方は決まっているのかい? そのレールの通りに生きなきゃいけないのかい?」

裕人:「レール?」

アン:「人間誰しも、確かにレールはあるよ。だけどね、レールは多分選べるよ」

裕人:「レールを、選べる?」

アン:「あんたが走りたいレールが、本当の意味でヴァンパイアになって生きるレールなんだったら、それはまあ、あたしには止める権利はない。だけど、中途半端に、フラフラしたまんまで、レールを走ろうとするんだったら、ストームナイトとしても人生の先輩としても言っとくよ。そんな足元で、そのレールを走るのはやめておけ」

裕人:! あー、正論だー。叩き伏せられたー。

アン:「なおもそのフラフラの足元で、走りたいレールがあるんだったら、誰かに肩を貸してもらうか、互いに肩を組んで、進めばいいじゃないか」

裕人:・・・・・。
 

 裕人は深く溜息をつく。
『どうありたいか』。答えを形にするためには、背中を押してもらう必要がある。
 

裕人:ディアンに向かって聞こう。「ディアン」

ディ:「どうした?」

裕人:「ヴァンパイアである、この、俺を、否定する・・・かい?」

ディ:「ユウトは望んで、ヴァンパイアになったのか?」

裕人:「望んではなかったかな。家族を助けた結果だったから」

ディ:「ユウトが選んで、成し遂げた結果を、否定する権利は、誰にもない」

裕人:「そっか。じゃあ、ヴァンパイアの力を、ストームナイトとして振るう俺を、否定、する?」

ディ:「もしそれが、人々への誇示であったり、弱い者を弄ぶためであるならば、オレは、生命を懸けてユウトを止める。でも、オレは、ユウトが、人々を守るために、ヴァンパイアの力を使ってきたと信じている」

裕人:「そっか! あー。何、難しく考えてたんだろ」

GM:サバシーナが、笑みをかみ殺すようにしています。

裕人:「じゃあ、今の俺を、相島裕人をさ。肯定してくれる?

ディ:何も言わないで大きく頷きます。

裕人:「そっか!」
 

「俺のヴァンパイアの力はさ、誰かを助けたいって思った時に、勝手についてきたもの。
 そう思うことにする!」
 

GM/サバシーナ:「答えは出たかい。あんたは何だい?」

裕人:「俺は、ストームナイト! ってことにしとく!」

GM/サバシーナ:「そうかい。残念だね。あんたとはこれまでだ。血族でもなければ孫でもなければ、おばあさんでもない」

ディ:ユウトの隣まで歩いていって、「ご婦人。邪魔をした」と言って一礼します。やせ我慢しながら。

GM/サバシーナ:「あなたと、あなたの仲間たち。この子を不幸にしたなら、殺します」

一同:!

GM/サバシーナ:「何度でもやり直しはききます。それがヴァンパイアです。そして、もうやり直しがきかない。それがヴァンパイアです。わかりやすく言いましょう。ヴァンパイアとしての生き方を選ぶということは、例えば、あなたが、今ここでこの3人を殺すことです。そして、今でなくても、いつかそうします。それがヴァンパイアです」

裕人:・・・・・。

ディ:「ユウト。心配するな。オレが死ぬのは、ユウトより後だ」

GM/サバシーナ:「(微笑んで)そういうことです。あなたは何も迷っていない。今のあなたが救われているなら、同じようにしてあげなさい」

裕人:おばあちゃん、とはもう言わないな。「サバシーナ。二度目は、こうやって話すこともできないかもね」

GM/サバシーナ:「さあ。次は敵ですかね、ストームナイト」

裕人:「そうだね」

GM:「はい」と言って、ワインを渡します。「持っていきなさい」

裕人:「でもこれ・・・」

GM/サバシーナ:「人の血は入っていません」

裕人:そっか! 最初っからそうだったんだ! ははははは!

GM/サバシーナ:「どうしてもお腹が空いた時に飲みなさい。大丈夫。しばらくはそれで飢えないはずです。少しずつ少しずつ飲みなさい。酒を飲まなければやっていられないことも、人生にはあります」

アン:あ、そこには強く頷く(笑)。

裕人:「じゃあ、そうする。俺、未成年だけどねー」

ディ:「嘘ではないな。もしも、たばかっているならば、オレはお前を・・・!」

GM/サバシーナ:「我が主、ゴーントマンの名にかけて」

ディ:「!」背筋にゾワッ、と悪寒が走ります。

裕人:馬車から降りて、そのまま振り返らないで、歩いていきましょう。

GM:その前に、サバシーナは、あなたに顔を寄せて、血でも吸うのかな? みたいな動きをして・・・ちょっと別室。

裕人:えっ?

ディ:別室? えっ? ぎゃー。

 
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