TORGマスターレポート

『Dawn Before Long』

 

ナイル帝国総督ウー・ハンはご満悦であった。
「ようやく卵が手に入ったアル。これで、自転エネルギーはファラオの物アル。
そして、ファラオがめでたくTORGとなられた暁には、この私も・・・!」
口元が自然にほころぶ。取り繕うように、彼はもう一度傍らの卵を仰ぎ見る。

既に飛行機は東南アジア上空へ差し掛かっている。

「ウー・ハン総督、ウー・ハン総督!」「何アルか、騒がしいアルな」
「前方に謎の大渦出現! 回避できません!」
「何ィ?! アイヤッ!」
ベルトをしていなかったウー・ハンは派手にひっくり返り、壁際まで転がって止まる。
「もっとしっかり操縦するアル!」「ダメです、コントロール不能です!」
「何をやっているアルかーー!・・・!・・・!」

椅子の下に隠れているシンバにはただ状況を見守るしかできなかった。

大方の予想通り、飛行機は密林へ向かって錐揉みで降下(いや、落下)。
――暗転。
 

第二幕

シーン1 運命の出逢い

 シンバは、背を濡らす雨の冷たさに目を覚ます。墜落の際、凄まじい衝撃を受けた筈なのに、ジャングルが育んだしなやかな肉体には傷らしい傷が殆どない。
 飛行機の残骸の中、彼はゆっくりと身を起こす。
 

 目の前に、黒いメイド服の女性がいた。
 

シンバ:「あ・・・(懐から日常単語を書き付けた皮を取り出す)」

 育ての親に貰ったカンニングペーパーを頼りに、必死で言葉を繋げようとするシンバ。

GM/メイド:「もしや、その飛行機に乗っていらしたのですか? お怪我は・・・?」

シンバ:「い、いや、大丈夫でござ候」

一同:喋り方変になってるぞー(笑)。

 その場から立ち去ろうとする彼に、メイドの女性はおそるおそる言う。「何かあっては大変です。よろしければ、少し休まれて行ってはいかがですか」折しも雨はだんだんと激しくなってくる。シンバは彼女の申し出を受けることにする。

 やって来たのは、二階建ての古びた洋館。「旦那様に了解を求めて参ります」しばらくして戻ってきた彼女は、シンバを客間の一室へ案内する。

GM/メイド:「どうぞ、ごゆっくりお休みください。ただし、中庭には、決して近づかないでくださいね」
 

 一方その頃、残る3人が乗った飛行機も、謎の大渦にあおられて難儀していた。メアリィの操縦テクニックで何とか墜落は免れ、とある小島に軟着陸する。

 ふと前方を見ると、森から煙が上がっている。

メアリィ:「あー、こりゃウー・ハンの飛行機も落ちてるねー」

リック:「シンバ・・・いい奴だったのに」(笑)

:「まだ決まったわけじゃないじゃないですか! シンバさんなら、きっと無事ですよ!」

 安否を確認する目的も兼ねて、3人は島の高台へ上り、全系を見渡す。すると、この小さな島にたった一軒、古びた洋館が建っているのが目に付く。導かれるように館へ近づく3人。その館が、先刻飛行機が巻き込まれそうになった大渦の真下にあるということに気づいた者は、まだ誰もいなかった。

:(獅子型のノッカーを叩く)

GM/メイド:(ドア越しに)「どちら様ですか?」

:「旅の者ですが、一晩泊めていただけないでしょうか?」

シンバ:「おぉ、おまえたち、来たのか」

:「シンバさん!?」

 再会を喜ぶ4人。一段落したところで、メイドは改めて4人を客間へ通す。

メアリィ:「この館のご主人にご挨拶したいんだけど」

GM/メイド:「申し訳ありません。旦那様は既にお休みになられています」

 湯浴みの準備をすると言って部屋を出ようとしたメイドへ、亮が声を掛ける。「私はコウヅキ・アキラ。貴女の名を、お聞かせ願えませんか?」彼女は頬を染めて俯き、ごく小さな声でこう答える。

 「・・・キャスリーン、と、申します」
 

 中庭には近づいちゃいけないらしいが、そう言われると見たくなるのが人情。リックとシンバは静かに部屋を出て中庭へ向かう。

 そこで待っていたのは・・・氷の彫像と化したショックトルーパーたち。
 今にも断末魔が聞こえてきそうなリアルさ。あまりにも衝撃的な光景に、2人は心底恐怖を覚え、その場に硬直してしまう(克服チェック失敗)。
 

 一方のメアリィと亮は、屋敷の主人が怪しいとにらむ。アクションを起こすのは危険かもしれないが、リックとシンバがなかなか戻ってこないことに業を煮やし廊下へ出る。

GM/キャスリーン:「どうか、されたのですか?」

メアリィ:「! あ、お手洗いに行こうと思って」

GM/キャスリーン:「ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 本当は主人の部屋を探したかったのだが、キャスリーンに見つかってしまい、仕方なく彼女の後へついて行く。

 と、キャスリーンが、卵を持っている亮に躓いた振りをしてもたれかかる。

メアリィ:(呆然)

:「大丈夫ですか?」

GM/キャスリーン:「・・・貴方が、持っていたのね」

 キャスリーンは、亮の肩に置いていた手を、悩ましげに彼の胸へと滑らせる。しかし亮は、毅然とした態度で彼女へ告げる。

:「御免なさい。貴女のために持ってきたんじゃないんです」

GM/キャスリーン:「私は、貴方を死なせたくないんです」

:「(首を振って)貴女がこれを、貴女のご主人のために・・・、悪しき目的のために使おうとするのなら、渡すわけにはいきません。できるなら私は、貴女の瞳を曇らせるものから、貴女を救いたい」

 亮はキャスリーンの瞳を見つめる。真っ直ぐに、ただ一途に。

:「どうすれば、貴女を救うことができますか?」

GM/キャスリーン:「(か細い声で)それが、戴きたいの・・・」

:「御免なさい。これは、渡せません」

GM/キャスリーン:「どうしても、だめなのですか・・・?」

:(無言)
 

 「貴様の仲間が引き裂かれても、果たして同じことを言えるかな?」
 

 突然、キャスリーンの口から聞いたことのない男の声が流れる。
 彼女は踵を返し、2人の前から走り去る。向かう先は――中庭。
 


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