ようやく平常心を取り戻したリックとシンバは、中庭へ足を踏み入れる。
無論、氷漬けのショックトルーパーをなるべく見ないようにしながら。
すると、大理石製の胸像のひとつが台座ごと動くことに気づく。
2人がかりで押してみると――地下への階段が現れる。
しかし力の加減を誤ったため、胸像は地響きを立てて倒れる。
「・・・・・」「・・・・・」
降りてみるか? リックは目でシンバへ問いかけ、シンバは大きく頷く。
第二幕
シーン2 永遠(とわ)の約束
キャスリーンを追いかけようとしたメアリィと亮は、何か重たい物が倒れる音を聞く。急ぎ中庭へ駆けつけると、倒れた胸像の傍らに佇むキャスリーンの姿が目に入る。
亮:「キャスリーンさん・・・」
GM/キャスリーン:「追ってきたか。愚かな」
キャスリーンの胸元から、めきめきと音を立てて獣の頭が生える。非常におぞましい光景だが、亮は全く動じない(克服チェックに成功)。
亮:「私が・・・必ず貴女を助けます!」
一方その頃、リックとシンバは、とある小部屋に到着していた。部屋の奥には不気味な色の蔦で覆われた機械が1台。2人は、それが地球の自転を止めている「地獄のマシン」であると確信する。
機械に向けて一歩近づいたその時、地面が揺れ始め、機械を中心に竜巻が発生する。そして、階段の上から、氷を纏ったショックトルーパーの亡骸が、新たな犠牲者を求めて彷徨い下りてくる!
- ラウンド進行:1ラウンド目
GM/キャスリーン:「いい加減に諦めて、卵を渡せ」
亮:「メアリィさん、お願いです。彼女には手を出さないでください」
あくまでもキャスリーンを説得しようという亮。メアリィは構えかけたマシンガンを下げ、気づかれぬようにそっと懐へ手をやる。先程亮と相談して、自分が預かった「ファベルジュの卵」が、そこにある。
一方地下では、「地獄のマシン」を止める試みが開始されていた。階段を下ってくるショックトルーパーを、素早く動いて翻弄するシンバ。彼は、野生の勘で機械の仕組みを見抜き、リックへ助言する。
シンバ:「よこの方! いろいろ押せばきっと止まる!」(“推理”カードを使用し、ドラマチックな行動解決A段階をクリア)
リック:「横・・・これだな! そっちは任せた!」
2ラウンド目
空から新たな侵入者が現れる。
メアリィ:「アブリー!? あんた、こんな所まで!」
GM/アブリー:「約束通り卵を戴きに来た! ん、んんー! 何だお前は!?」
GM/キャスリーン:「貴様も余の邪魔をするか! 皆まとめて氷漬けにしてくれる!」
獣は冷気を纏いながら低い声で言い放つ。
その頃地下では、リックが見よう見まねで機械をいじり、渦を止めることに成功していた(BC段階クリア)。残るは機械を逆回転させて地球へ自転エネルギーを注ぎ込むのみ。
3ラウンド目
「ヒーロー:疾風」、勝利は近い!
シンバが、躍りかかってきたショックトルーパー数人を槍で一突きし壁へ縫いとめる。リックはその横で、コンソールへ指を走らせ続ける。
そして遂に、「地獄のマシン」が逆回転を開始する(D段階までクリア)!
と、一際大きな揺れが地下室を襲う。2人は“緊急行動”を駆使して大急ぎで地上へ向かう。
そして、中庭では。
GM:獣の口から冷気が迸ります。全方位攻撃ー。(コロコロ)えっ、1?
一同:おぉ、愛の力だ(笑)。
GM:アブリーはメアリィを威圧。「私は、美の何たるかも解らぬような化け物に卵を渡したくないだけだ!」・・・そんなぁ、また1だって。
メアリィ:「何のことだい。あたしは卵なんて持ってないよ」
その時、地下室入口から立ち上っていた竜巻がすぅっと消えていく。キャスリーンは状況を理解し、凄まじい形相で地下室を振り返る。「・・・おのれ! 生かしては返さぬぞ!」
たまらず声を上げる亮。
亮:「貴女と私、どちらも幸せになれる道はないのですか?!」
GM/キャスリーン:「・・・・・」
亮:「お願いです、キャスリーンさん・・・!」
彼の一途な想いは、キャスリーンの心を動かし――
彼女の瞳から、一筋の涙が流れる。
GM/キャスリーン:「できれば、貴方とは違う形で出逢いたかった・・・」
彼女はみるみる戦意を喪失していく。そして、祈るような目をした亮へこう告げる。
「貴方と私では、生きる世界があまりにも違いすぎます。今世で2人、幸せになる術はありません。けれど、せめて生まれ変わったその時は・・・」
その時、天啓のようにひとつの結論が浮かぶ。
キャスリーンが「ファベルジュの卵」を手に入れようとしたのは、それが彼女に唯一絶対の死を与えることのできる道具だからだ。一度魔物と成り果ててしまった以上、彼女は、唯一の正しい方法で倒されない限り、永遠に輪廻転生を繰り返す。そして、彼女に真の死を与える方法とは、オカルト儀式によって、ファベルジュの卵に封印されることなのである。
真実を悟った亮は愕然とする。しかしキャスリーンをこのまま放っておくわけにはいかない。亮たちはストームナイトであり、彼女は魔物・・・オーロシュの手先なのだ。
選択肢はふたつ。まず、彼女を物理的に殺し、かりそめの死を与えること。そうすれば彼女の魂は必ず他の器に入って復活する。だがそれは裏を返せば、彼女の魂がゴーントマンの道具として使われ続けるということである。そしてもうひとつが、彼女に真の死を与え、万に一つ、生まれ変われるかもしれない可能性に賭けて待つ、というもの。彼女の魂は永遠の苦しみから解放されるが、再び逢える保証は全くない。
GMは亮に選択を委ねた。そして、彼は。
亮:「すみません、メアリィさん、卵を貸して下さい。皆さん、ごめんなさい、いいですか?」
メアリィは懐から卵を取り出して亮に渡す。異論を挟む者は誰もいなかった。
亮:「ありがとうございます。・・・キャスリーンさん。これから、貴女をこの卵の中に封印します。永遠の苦しみから貴女を救うために。どうか私を、信じてください」
4人は亮の知人であるヴィクトリア人の執事、セバスチャンへ封印を頼むことにする。
亮:「貴女に再びめぐり逢えることを、私は信じています。ずっと! ずっと、待っています!」
キャスリーンは涙に濡れた瞳を亮に向けて微笑む。
「アキラ、さん・・・。貴方のこと、決して忘れません・・・」
封印を終え、セバスチャンは亮に卵を手渡す。
亮:「私にこれを受け取る資格は・・・あるのでしょうか?」
GM/セバスチャン:「気に病むな若造。おぬしの祈りは、必ずやあの娘に通じておる。そして、信じ続ければ、いつの日か想いは叶うであろう」
キャスリーンが眠る卵に目を落とす亮。顔を上げると、卵を眩しそうに見ているナイル帝国総督ミルトン・アブリー卿と目が合う。
亮:「!」
GM/アブリー:「安心したまえ、それを戴こうと言い出すほど私も野暮ではないさ。美しき宝は、相応しき者が持つ時にこそ輝きを増す。その卵は、今の私には眩しすぎる」
そしてアブリーは、去り際にこう宣言するのだった。
「私は、私の宝を追い求める! さらばだ、ストームナイト!」
その頃、飛行機墜落現場にて。
「ハァー、とんだ目に遭ったアル。生きているということは、私の運も捨てたモノではないアルなー」
ナイル帝国総督ウー・ハンは、やっとのことで瓦礫の山から抜け出した。懐へ手をやり・・・青ざめる。
「ファベルジュの卵が、な、ないアル!! ど、何処アルか、まさか壊れてしまったアルか?!」
すっと、彼の鼻先に槍の穂先が突きつけられる。「何者アル!」
振り返るとそこには、ジャングルの王者シンバの姿。「生きてたか、ウー・ハン」「アー!?」
水平線の向こうから朝日が昇る。地球に訪れた、数日ぶりの夜明けだ。
-
亮:では、敷物を敷いて、朝日に向かってお祈りをします・・・。
リック:「(隣へ歩み寄って)綺麗な朝日だな。いつかきっと、キャサリンがお前と一緒に朝日を見られる日が来るよ」
亮:「リックさん・・・」
リック:「キャサリンは生まれ変わって、必ずお前とめぐり逢う。俺はそう信じてる」
亮:「・・・キャスリーンだよ」(笑)
メアリィがぽんと亮の肩に手を乗せる。
メアリィ:「さっき、受け取る資格はあるのかなんて言ってたけど、あんたにしか持てない物だと思うよ。それにね、最初っから背伸びしなくたっていいのさ」
ニヤリと笑い、背を向けて歩き出す。
メアリィ:「縁があったらまた会おう!」
亮:「あ、待ってください。ニューヨークまで乗せていってくれませんか?」
亮は、決意を秘めた瞳で力強く言う。
亮:「ファベルジュの卵の本当のオーナーに会って、何年かかっても必ずお金は払うから、買い取らせてください、って頼みたいんです」
一同:!
リック:「ったく、お前って奴は・・・」
限りなく今に近い未来………
今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
TORG『Dawn Before Long』 Fin.
---Thanx for all readers and EXCELLENT players!
→Epilogue
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