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TORGリプレイ

『二通の手紙 〜聖なる墮天使〜』

 

 限りなく今に近い未来………
 今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 


Prologue

 
まだ雪深い険しい山地を、10数人の子ども達とひとりの若い女性が進んでいる。
非常に辛い旅であったことは、全員がボロボロになった服や靴を纏っていることから、想像ができる。

――路地裏で身を寄せ合って夜を過ごした。貨物列車の中から放り出されたこともある。
ゴミや石を投げられたり、犬をけしかけられたりという心ない仕打ちを幾つも受けた。

やがて彼女達の前に、小さな教会が現れる。
その教会の扉を開くと、両手を広げたマリア像が、迎え入れてくれているように、彼女達には見えた。
 

 【CAST】

 リン(15)デュナドの司祭/アイル
 メイ・スカイウォーカー(18)ロケットレンジャー/ナイル帝国
 ジェローム・ドノヴァン(17)シークレット・エージェント/サイバー教皇領
 シグマ(30代)秘密工作員/コアアース
 

第一幕

 
シーン1 二通の手紙
 

ゲームマスター(以下GM):では、オープニングの方から始めさせていただきます。自己紹介は、後ほど別のシーンでやってもらいます。まず、そちらの2人。リンちゃんとメイちゃんは、ある日の朝早く、急な用事があるということで、ペラ・アーディネイ女王に呼ばれます。

シグマ:なんだってー。

GM:ペラ・アーディネイ女王というのはですね、アイルの善のハイロード。一番偉い人で、非常に高貴な方です。

リン:おお、すごいですね。

ジェローム:メイが呼ばれるのはありだと思います。前回(*1)、女王の目の前で“モノローグ”かまして“偉業”達成してるので。

メイ:そんなこともありましたねー。遠い目。

GM:アーディネイ女王は、謁見の間の隅っこの、元段ボール箱と思われる木箱5、6箱を示します。何故、元段ボール箱と思ったかというと、木箱の横に、「ペ○シコーラ」とか、「愛媛みかん」とか、そういうのが印刷されてるからです。

メイ:アイルに持ってこられたから、段ボール箱が木箱に変身しちゃった(笑)。

GM:はい。中には、ざっと見たところ、保存食とか医薬品とか衣類とかが入ってるんですけど、アーディネイ女王はこう言います。「昨日、一通の手紙と共に、これらの物資が届きました。見た通り、大した量ではありません。しかし、どうやら、さほど豊かなわけではなく、自分たちの生活を切り詰めてまで、これらを送ってくれたようなのです」見るとですね、リンちゃんだったら、この荷物が〈名誉〉の光を放っているのが判ります。

リン:おお。

GM:そして、アーディネイ女王は、ひとつの小さい袋を取り出します。掌大の、小さい包みなんですけど、中には4枚ほどのクッキーと、1枚のメモが入っています。こんなメモ。

リン:はい。読みますね。『このお菓子は、私たちが心を込めて作りました。見た目は悪いですが、味は保証します。これを食べればきっときっと、元気100倍! 勇気100倍になること絶対です。ですから、どんなことがあっても負けないでください。くじけないでください』

メイ:・・・泣かせるーっ!

GM/アーディネイ:「私たちは、戦乱の間に、この小さなお菓子のような、小さな思いやりを忘れていたかもしれません。私は、この贈り物をしてくれた方々の加護をデュナド神に祈りました。すると、この方々に重大な生命の危機が迫っているというお告げがありました。そこで、お2人に頼みがあります。今動けるストームナイトはあなた方2人だけです。無理は承知です。この方々の護衛をお願いできませんか」

メイ:「是非ともお任せくださいっ! そういう小さな希望の灯を絶やしてはなりません、女王陛下!」

シグマ:だよな。

GM:そうすると、アーディネイ女王は、「後から、何とかして援軍は送ります」と約束し、最後に、小さなその袋をもう一度リボンで結んで、あなたにそっと授けてくれます。

リン:・・・はい。

メイ:要は、箱の送り主のところに、これから行けってことですね。

GM:では次、ジェロームとシグマ。ここはバチカン市国の、小さな応接室です。あなた方の前には、きらびやかな法服を纏ってはいませんけど、顔は何度か見たことがある、バチカンの枢機卿がいます。彼は、一通の封書を手元に置いて言います。「ある日、私の元に、手紙が届きました。手紙には、既に打ち捨てられた小さな教会を、正式な教会と認めて援助してほしいという依頼が書いてありました。現在、そこではひとりのシスターが身寄りのない子ども達の面倒を見ているそうです。勿論、我々としては、そういう人物のバックアップをするのはやぶさかではありません。ですが知っての通り、今の現状では、なかなか難しい。その上、その人物が、サイバー教皇領のエージェントであり、カモフラージュのために行動している可能性もまた、否定できません」

シグマ:ふむ。

GM/枢機卿:「本来ならば確かに我々が行わなければならない調査です。しかし、あのエセ教皇どもの手下の陰謀ならば、我々がそれを見破っても危険を伴います。そこで、お2人に実情の調査をお願いしたい。勿論、それなりの報酬は用意いたします」

シグマ:「子どもがエージェントという可能性もあるんですかい?」

GM/枢機卿:「これは、風の噂なんですが、以前、別のストームナイトが、子どもを爆弾代わりにするような陰謀を阻止したことがあるそうです。アイルのペラ・アーディネイ女王が、その関係で危機に陥ったという話も聞きます」

ジェローム:シグマに、「あんたの考えで、何歳までが子どもかは知らんが、子どものエージェントというのも確かにいるだろう」と言って、ふっと横を見ます。

シグマ:「否定はしねぇな。うん」

ジェローム:「俺はこの話に個人的に興味がある。依頼を請けようと思う」

シグマ:教会の場所はどこです?

GM:ポーランドの、結構端っこの地方都市です。

シグマ:東欧ですね。

GM:ええ。侵略に直には関わらない場所であることは違いないです。ただし、フランスが手を伸ばすには、逆に都合がいいかもしれない。何せ、直で目の前に危機が迫ってないから。

ジェローム:「なるほど。ドイツなどと正面でやりあっている間に、東欧へ手を伸ばそうというのか。いかにもエセ教皇が考えそうなことだ。それで、我々が教会に向かう足はどのようにしたらいいんだ?」

GM/枢機卿:「足ですか。遠回りではありますけど、電車と、必要ならば車の手配もしますよ」

シグマ:そういえば、〈地上車操縦〉技能ないんだな。シグマは。誰か運転して。

ジェローム:〈航空機操縦〉しか持ってない。

シグマ:じゃあ電車で(笑)。

ジェローム:なんてダメなエージェントなんだろう。

メイ:電車で移動するストームナイト。地味だ。

GM:では、そういう感じで移動するところで、シーンが変わります。
 

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