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TORGリプレイ

『Red Giant』

 

 限りなく今に近い未来………
 今夜、あるいは明朝、さもなければ来週……ほんの少しだけ未来の物語
 


Prologue

 
 地響き。湿った熱風。
 盲目の予知能力者、カトリーナ・トヴァリシュは、見えないはずの風を「視て」、
 自分がとんでもない場所に迷い込んでしまったことを知った。
 そして、真正面から彼女に注がれている視線に気付いた。

 視線の主の容貌は、暗闇に紛れて判別できない。瞳の奥で、狂気の火がゆらゆらと揺れている。

 不意に、赤い炎が視線の主の背後に立ち上る!
 炎はやがて五芒星の形となり、まるで生き物のように、ゆっくりと彼女へ歩み寄ってくる。

 助けを求める叫びは、声にならない。

「カトリーナっ!?」
「あ・・・」

 父親代わりのニコライ・オンダレフが、カトリーナの両の肩を掴む。
 普段なら、彼はまず手に触れて合図を出してから、彼女の身体に触れる。
 ―――そのプロセスを飛ばしたということは、自分はよほど切迫した叫び声を上げたのだろう。
 彼の心配げな眼差しを感じて、カトリーナは少し恥ずかしくなる。

「ごめんなさい、ニコライ。驚かせてしまいましたね。怖い夢を、見たのです」
「どんな夢?」
「・・・・・」
「貴女が見る夢です。場合によっては、各国に警告を発しなくてはならないでしょう。話してください」
 ほんの一瞬、ためらいの表情を浮かべてから、彼女は夢の光景をニコライに語り始める。
 


第一幕

 
シーン1 四つの力
 

舞台は変わって、イギリス、オックスフォード。
アイルのペラ・アーディネイ女王は、最後に謁見の間に現れた少年を見て、小さく頷く。
「お揃いになりましたね。よく来てくださいました、ストームナイト。
 皆さんが、世界各地で成し遂げられた偉業。それは、ここアイルにも伝わっています」

少年はさりげなく首を動かし、嵐王寺財閥の名で求人を出して集めたエージェントたちを流し見る。
ひとりは以前にも一緒に仕事をしたことがある、悪即斬の騎士。
ひとりは奇妙な宇宙服のようなスーツをまとい、白い歯を光らせている。
ひとりは・・・トカゲ?!
 

ゲームマスター(以下GM):キャラクター紹介、嵐王寺さんから頼んでいいですか。

勇人:わかりました。キャラクター名は、嵐王寺勇人(らんおうじ・はやと)。年齢は16歳、キャラクタークラスは、財閥の総帥です。出身コズムはニッポンテック(変身)なので、元は地球人ですが、侵略によって、より一層、お金を稼げるようになりました。仕立てのいいブランドスーツを着て、ぴしっと決めておりますが。

GM:前回は凄まじい苦労を(*1)。

勇人:しておりますので、今回はちゃんと、地球文化の解る人、っていう発注をしました。求人案内には、太字で「常識のある人」 って(笑)。

カイル:じゃあ俺、書類選考でアウトじゃん(*2)。

勇人:カイルさんは、顔を見てあれっ? と思ったけど、他の人がいるから大丈夫だろう、っていう判断。だって、アイル側から、この人ですよって紹介されて、イヤだ、って断ったら、色々問題になるじゃないですか(笑)。キャラクタースペック的には、後方支援系。お金で何とかするのが基本ですけど、戦闘になったら、口先三寸で相手を倒すか、バッドステータスを与えて、白兵戦系の人に殴ってもらう形になるかと思います。

GM:そのカイルさんは、アーディネイ女王から直々に呼ばれております。自己紹介どうぞ。

カイル:アイルの騎士、カイルです。『スレイヤーズ!』という小説の、外伝に、非常にダメダメな騎士が出てくるんですけど、そこから名前をもらいました。ただ、お母さんを出すと、ちょっとまずいかなー、って。

勇人:バックスタッブを使う、撃破役ですよね(*3)?

カイル:お母さんすごいです。隠密しながら、気配も見せずに、敵をやっつける。文字通り、モンスターペアレントなので、普通の騎士にしました。年齢は26歳です。プレートメイルを着ていて、剣を持ってぶった斬る。これ以外できません! なんかこいつ、敵っぽいなーと思った時にはもう、斬りつけてます。

勇人:確認はしてくださいね?(笑)

GM:では次の方。

ライトニング:あ、はい。わたくし、エジプトの方からやって来た、ロケットレンジャーの、キャプテン・ライトニングと申します。日夜正義のために戦っていて、まぁ、長くなるんでこの辺でやめておきまして(笑)、とにかく、わたくしが来た以上、悪は全て、打ち倒します!

カイル:通じるものがあるな。

勇人:わはははは(乾いた笑い)。

ライトニング:年齢27。身長190、体重75。白人で、ブルーの目で金髪。どっかにいたなー、空を飛ぶ人でそんな人がいたなー。

GM:ありがとう! そして、ありがとう! の人だ(*4)。

ライトニング:でも本名は地味で、ジョン・スミスなんですけど。

勇人:偽名にしか聞こえないんですけど(笑)。

ライトニング:ロケットレンジャーですから、相手を撹乱しながら飛んで、ぐるぐるぐるぐる、〈飛翔〉で間合いを取って、何とかプレイヤーズコールに持ち込む、というのが基本になるかと思います。

カイル:どのぐらい飛べるんですか?

勇人:すーげぇ飛べます。航続距離は、リンクが切れない限り無限。

GM:ダイスで1振った瞬間に、ぷすん、ってスーツが機能停止して、大変なことになっちゃいますけど。

カイル:成層圏にも?

ライトニング:本人が飛べると思えば行けます!

カイル:素晴らしい。成層圏から、「ロケットパーンチ!」とかやったら痛そうですよね。

勇人:伝説の一撃ですよ。

ライトニング:クレーターができるぐらいの伝説の一撃。

GM:だいぶ、前振りが必要そうですけどね。1ラウンド溜める、とか。

ライトニング:「みんなの力を俺に貸してくれ!」と言って、上空に。

カッティングエッジ(以下エッジ):うわー、かっけぇ! そして、何で俺がここに呼ばれたか、よくは解らないけど、俺の名前は、カッティングエッジ。英語の熟語で、最前線だぜ! キレキレだぜ! みたいな意味。本名はスコット・タイガーなんだけど、これも、元々リビングランドにいた俺が、コアアースの機械ってものに触れた時に、感じちゃった名前なので。

勇人:絶対そうです。そもそも、ファミリーネームなんて、ねぇから(笑)。原始人に。

エッジ:この前、履歴書書いて、送ったのが、どうやら採用されたみたいで。

GM:履歴書書いたんだ?

エッジ:一応〈語学〉技能あるんで。嵐王寺さんは、きっと、俺が人間だと思ってるだろう。大体俺は、人間に間違われるから、字だけだと(笑)。

カイル:え、見た目は何なんですか?

エッジ:トカゲです(笑)。エディーノスですから。トカゲが、カメラ用のポッケがついてるチョッキを着て、襟巻き巻いて、銃を持って、スパナも持ってる、みたいな。

カイル:D&Dのリザードフォークか。「あ、トカゲだ」って言うと怒るのかな?

エッジ:「この柔肌野郎」と怒ります(笑)。

カイル:女王様はどう思ってます?

GM:エディーノスをですか? 清き心を持ったストームナイトであれば、どなたでも関係はございません。

勇人:アイルでは、清い心かどうかが、最重要なので。

カイル:黙ってるけど、(トカゲでもいいのか・・・)って思ってます。

エッジ:今まで、どぶさらいのような仕事ばっかりだったけど、今回はちゃんと名のある人に、雇ってもらえて、ビジネスパーソンとして、ステップアップできるかなー、と思ってます。スペック的には、《知覚》と《知力》の高さを活かした、やっぱり後方支援系ですね。あとは、後ろで銃器をばんばん撃つとか、〈発見〉とか、〈知識(機械工学)〉とか、〈科学〉とか。

GM:科学の子なんですよ。外見はトカゲですけど。

カイル:やべぇ、トカゲに《知力》で負けてると、劣等感が。

勇人:しょうがない。得意分野が違うんですから。

エッジ:俺の、自信ある行動は、全て科学的思考に基づいているので、科学がなくなっちゃったら、ちょっと悲しくなると思います。
 

【CAST】

嵐王寺勇人(16)財閥の総帥/ニッポンテック
カイル(26)騎士/アイル
キャプテン・ライトニング(27)ロケットレンジャー/ナイル帝国
カッティングエッジ(??)天才的エディーノス/コアアース

 
GM :では、話を戻しまして、女王陛下の前に、全員集合したところから。

勇人:僕のモットーはタイム・イズ・マネーなので、ぎりぎりまで商談を片付けながら、時間通りに入ってきて、「失礼いたしました、女王陛下」と。

GM:入った瞬間に、見えるのが、騎士と、白人のロケットレンジャーと、エディーノスです。

勇人:「カイルさん、どうも。先日はお世話になりました。この度もよろしくお願いします」と、きちんとビジネストークをします。因みに〈名誉〉何レベルでしたっけ?

カイル:5レベルです。

勇人:あなたには高貴なオーラが漂っていて、問答無用で、顔が美形になってます。アイルには名誉の法則という世界法則があって、魂の有り様が、その人の外見と能力を決めます。〈名誉〉技能で表されて、最高15レベルなんですけど、5レベルだと2段階目に来ていて、誰が見ても高貴な人、です。

GM:美しいだけじゃなくて、光っている。

エッジ:なるほどー。

勇人:隣に目を移すと、キャプテン・ライトニングは、ナイル帝国の人で、ナイル帝国には、正邪の法則というのがあって、全ての知的生物は、善か悪かに二分されます。中立はいません。なので、あなたは、純粋たる善! もっとぴっかぴか! 超一流の絵師が描いた、アメコミの超イケメンヒーローみたいな。

エッジ:すごい! 眩しい!

GM:作画監督、超気合い入ってるッスよ。

勇人:彼を見て、僕は、心の中で、(なるほど、この美しさ・・・ナイルか!)人格的には信頼できるけど、それ以外の、僕の期待する方面の働きはできない、ってことが解った(笑)。

GM:きっぱり言った、今!

ライトニング:いや、ポンテクの期待するようなことは、一切できませんよ。隠し事はできない、腹芸もできない。

勇人:とりあえず、キャプテンに名刺を渡して、「よろしくお願いします」と、丁重に礼をして、あー、僕の頼んだ、ちゃんとした人はどこかなー(キョロキョロ)。

エッジ:俺、ちゃんとしてるから。ちゃんと言葉も喋れるし。

勇人:なるほどなるほど。ちゃんとした、人・・・。えーと、他にいないの? みたいな顔をした後で。

GM:アーディネイ女王が、とどめとばかりに、「お揃いになりましたね」と言う。

勇人:あー、もう、今回の人事担当者もクビだ!(笑)「素晴らしい、ストームナイトを集めていただいて、心から感謝申し上げます」

エッジ:棒読みだ。とりあえず、俺は事態を静観するよ。一歩下がったところでみんなを見ているよ。

カイル:そういう腹芸というか、深慮遠謀みたいなことはできるんですか?

GM:コアアーサーだからできます。

勇人:他3人は、できない(ライトニング)、制限がある(カイル)、やらないと話にならない(勇人)、です(笑)。

エッジ:ニッポン人を相手にする時は気をつけろって、俺の知り合いは言ってた。

勇人:ニッポン人はそういう誤解を受けているようですけど、ちゃんと礼儀は通します。

カイル:やー、なんか、今回も苦労しそうだねー。でもそんなことカイルは知らない。頑張るぞー。

エッジ:・・・こいつ馬鹿だなー(笑)。

 
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