TORGリプレイ

『HEAVEN』

 
 

第二幕

 

―地球の某所、館の一室にて―

仄暗い月明かりの下。
両手で抱えていたジェシカをそっと寝台に横たえると、黒騎士は冑を脱ぐ。
少し長めの金髪が冑の中からこぼれ落ち、男の横顔に影を落とす。
男=ケルビムは跪き、恭しくジェシカの手を取って口付ける。
 

「我が剣を捧げし女王よ。やっと貴女を助け出すことができました。
 我が賜りしケルビムの御名において、
 貴女を、我が身命を賭して、守り抜くことを誓います」
 

そう呟くと、ケルビムは再び冑を被って部屋を辞去する。

瞳を閉ざし、力無く横たわるジェシカの口元が、ふと、誰かの名を呼ぶ形に開いた。

 

―オックスフォード王宮にて―

「デニス・クォーターメイン氏より、通信が入っております」
アイル女王ペラ・アーディネイは、浮かぬ顔で受話器を受け取る。
『なんでも、かの大事件を起こした犯人を、残党の一派に奪い返されたとのお話で。
 さすがはアイルの精鋭たる騎士殿達ですなぁ』大統領の痛烈な皮肉。
「ストームナイト達はよくやってくれました。
 確かにジェシカの身柄を奪われはしましたが、被害は最小限に食い止めたのです。
 そしてきっと、彼らなら、過ちを犯した者達を正しき道へと立ち返らせてくれる。
 私はそう信じています」
『信じるのは自由なんですがねー。
 そうそう、貴女の所でも、あのグリゴリと名乗る一団が、破壊活動を行っているとか。
 世界政府としても、対応を講じなければならんでしょう。
 そこでだ、我が、アメリカから実行部隊を出すので、承認を願いたい。
 我らの威光を示し、奴らに圧力をかけるのだ。
 エジプトの、帝国の方も動いていると言う話ですしな』
「・・・えっ?」

 

―米国大統領執務室にて―

ホットラインを切ると、デニス・クォーターメインは傍らの男を仰ぎ見る。
「これでよかったですかな、ローゼンクロイツ卿」
黒スーツに深紅のネクタイ、バラのネクタイピン、胸にピラミッド型のバッジ――
ローゼンクロイツと呼ばれた、その六十がらみの老紳士は小さく首肯く。
 

「今はこれでよろしい。兵を見せておくことに意味があるのです」
胸のバッジに刻まれた、目の意匠が、鈍く光る。

「真に地球を救うためには、貴方の力が必要なのです」
切れ長の瞳が、大統領の姿を映す。

「デニス・クォーターメイン大統領」
相貌から受ける印象は、笑みを浮かべていてもなお、冷たい。
 

そしてローゼンクロイツは、大統領に右手を差し出す。
「よしなに、お願いいたします」

 

シーン1 再起
 

オックスフォードに戻ったストームナイトは、アーディネイ女王の前に呼ばれる。
「敵は少数とは言え良き精鋭のようですね」報告を聞いた女王はこう感想を述べ、
再びストームナイトに動いてもらうことになるだろう、と告げる。

女王によれば、グリゴリと名乗る連中は、各地へ移動を始めているらしい。
また、ケルビムこと黒騎士がデュナドの名を叫び、聖印も帯びていたことから、
現在エデンの関係者リストを洗い直して、彼の素性を探っているところだという。
 

GM:みんなの方で何か行動したいことがあれば、言ってください。

セバス:うーん、特に動けそうな状況でもないしな。

マッコイ:まず何処に連れ去られたかっていう情報がないとどうにもならん。

ディアン:片膝をつき、頭を垂れて動こうとしません。

GM:そうすると、トルウィンがあなたにまず立つように言い、立ったらあなたの肩に手を置いて、「まっすぐ前を見て歩かねばだめだ。それでは、捜すものは見つからないぞ。まだ、間に合う」と言って頷きます。それだけ言うと、彼女には彼女の仕事があるんで、そちらへ戻ります。

ディアン:・・・(無言でトルウィンの後ろ姿に一礼)
 

ジェシカを取り戻すため、ストームナイトは行動を開始する。
マッコイと和歌は、ネットワークでの追跡。
セバスはオカルト関係の蔵書を紐解き、グリゴリとケルビムについて推理。
マキシムとディアンは、王宮から外に出てフィールドワーク。
 


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