TORGリプレイ

『HEAVEN』

 
 

第四幕

 

―エデンにて―

アンテナ基地の屋上では、墜落したヘリの残骸が煙を上げている。
愛機ハインドで近くに着陸したマッコイは、一瞬だけそこへ目を遣り、煙草に火を点ける。
やがて、セバスチャンと和歌が階下から姿を現す。
「一人は確認した。もう一人も、この場所にいないってことは、上だろうな」
3人は黙って空を見上げる。
虚空に浮かぶ月が、不吉なくらい静かに、辺りを照らし出していた。

 

―米国大統領執務室にて―

『・・・領! テロ攻撃により、・・・の管制システム使用不能です!』
『・・・州空軍基地、滑走路完全破壊!』
世界中の宇宙関連施設や、大きな滑走路を持つ施設に、
何者かが攻撃を加えているという連絡が次々と入る。
「了解した。こちらで順次手配をしよう。下がってくれたまえ」

デニス・クォーターメインが人払いをすると、その傍らにローゼンクロイツが出現する。
いつものように大統領へ恭しく一礼し・・・ふと、口元が苦々しげに歪む。
「どうされました、ローゼンクロイツ卿?」
「いえ、少々計算違いが発生しました。しかし、
 非常に低い確率で起きる誤差の修正範囲内ですので、問題はないかと思われます」

ローゼンクロイツは言葉を切り、目を細めて邪悪に微笑む。
「所詮は卑小なる人の身、我らが大望の、邪魔にすら成り得ません」
そして大統領の背後に立ち、息が掛かるくらい耳元に唇を寄せる。

「貴方は、神よりもたらされる福音を、待っていればいいのです。
 Y・H・V・H、Y・H・V・H、・・・」

紡ぎ出される言霊が呪詛のように渦を巻きデニスを絡め取る。
いつしかデニスは、恍惚の表情を浮かべていた。

 

シーン1 真実への道
 

エデン残党の攻撃を退けたストームナイトは、基地内部で思案に暮れていた。
彼らの目前には1台の端末がある。
 

マッコイ:マスター、“アイデア”なんだけど。光をもう一度発動させる方法を知りたい。

GM:オッケー。あれは機械的なモノでもあるけれども、周りで行っていた儀式の分はセバスがフォローできそうです。あの、ばっちりカバラだから(笑)。

セバス:あ、じゃあオッケーだね。

GM:基本的には「セフィロトの樹」の再現ですね。あの図形を全部書いて、天頂へ繋ぐっていう形になってる。「真実への道」というヤツですね、はい。それプラス、テロ攻撃の標的になるかもしんないから、時間稼ぎの手さえ思いつけば、多分発動自体はできます。

セバス:どっちにしろ、儀式すんの俺でしょ?

GM:そう。儀式すんのは勿論貴方ひとり。足んない部品とか調達するのはマッコイ。実際に端末いじるのは和歌。

セバス:うぃ。

GM:因みにシュアくんも、押っ取り刀で駆けつけて、「手伝いまーす」って言いながら必死で今、スパナを片手に、不思議メカと格闘しています。

マッコイ:「ところでシュア、米国は一体何考えてんだ? アメリカ“軍”と、アメリカ“政府”の間には、何か齟齬があるように思えて仕方がないんだが」

GM(シュア):「現場レベルの指揮官は必死で守ってますもんね。ただ、上の方の人間は、結局ここの奴等を黙認してるみたいッス。エデンの残党軍と、モロ、つるんでるンですよ」

マッコイ:「ふーむ・・・どうにかして、アメリカの連中を取り込めないモンかなぁ」

GM(シュア):「ぶっ飛ばしたいのはやまやまなんですが」

マッコイ:「なぁに、馬鹿とハサミは使いようさ」

GM:ナイルの奴等を思い浮かべながら(笑)。「まぁだ戦ってますからねぇ。けど、ウー・ハンは下がったみたいですよ」

マッコイ:「下がったぁ?」

GM(シュア):「うん。多分あの、デタラメーズのことですから、デタラメーなコトしてくるに違いないですよ」

マッコイ:「まずいぞ、奴等必ずもう一回出てくる。月の向こう側から!」(笑)作業を急ぎましょう。

GM:っていうところで、和歌ちゃん、コンピュータの技能持ってないと思うけど、《知覚》で。

和歌:はい。(コロコロ)10です。

GM:じゃ、起動はできたけど、「パスワードを入れてください」で詰まっちゃう。

セバス:「んー?」(何かやりたそうな顔)

和歌:「・・・やる?」

セバス:じゃあ、「やってみようかのぅ」とか言いながら、資料当たって〈手掛かり分析〉。(コロコロ)17です。

GM:はい、わっかりましたー。カバラのルールに則って、Y・H・V・HにSをくっつけて、YをIに換えて、I・H・S・V・Hとすると、「イエス」って読み方ができるんですが。

セバス:ほぅ。

GM:多分これがパスワード。要するに神に倣ったんですね。

セバス:「ほれ、入れてみぃ」

和歌:「え、うん、じゃあ入れてみよっか」

GM:カタカタカタってやるとですね、パスワード認証、OK。プロテクトキー、クリア。

和歌:「お、すごいじゃん!」

セバス:「おー」

GM:不思議じじいだー。オカルトで導き出すのはどうよ? っていう(笑)。

和歌:「じゃあ、とりあえず見てみよっか」

GM:セバスの指摘を受けて、和歌が端末をネットに繋ぐと、そこへ某所から、ポシビリティが流れてくる。

セバス:うお!

マキシム:な?

和歌:・・・なんてこったい。

GM:えー、多分、BABELの事件で集めたポシビリティが流れてきてる。

マッコイ:それは止めないとまずいんでないかい?

セバス:でもそれ、要は、前の事件の時にため込んだ奴を使ってるっていうことでしょ。

GM:そうでーす。

セバス:ウィルス自体はもう、消去してるし。

GM:で、そうしたぐらいで、そこにメールが入るんだ。

和歌:「何だろう?」

GM:件名「ボクも仲間に入れて」で、発信者が、アッシュになってます。

マキシム:お。

マッコイ:返信。返信。

GM:返信と押すとですね、回線がふぁーって開いてですね、中に映像が出てきます。前髪に銀のメッシュがちょっと入っている、少年の姿です。『お久しぶり!』

セバス:「おおー」

マッコイ:「よぉ! 何かフランスでも騒ぎがあったようだが、どうなってるんだ、大丈夫か?」

GM(アッシュ):『大丈夫! 負けてない!』

ディアン:ねぇ、性格変わってないか?

GM:超前向きさっ。『そっちのお姉さん、えー・・・和歌さん、だよね。はじめまして』

和歌:「はじめまして。よく知ってるね私のこと」

GM(アッシュ):『知ってる知ってる。有名人だし。ストームナイトのアッシュです。とりあえず、みんなに力貸しに来たよ!』

和歌:「おぉ、ありがとう」

マッコイ:「助かるー!」

GM(アッシュ):『そっちのシステムを復旧するだけでいいんでしょ?』

セバス:「よく判らぬがそういうことらしいから、よろしくな」

GM(アッシュ):『オッケー! ボクも、本体は行けないけど、みんなについて行くから』

和歌:「それは心強いな」

セバス:まぁな、こいつもエデン出身だからな。

GM:そう。ここは地元ー。で、見てるとですね、彼がものすごい勢いでシステムを復旧していきます。

和歌:すごいねー。

セバス:わーい。リモートだリモートだー。

マッコイ:「さて、周りに警戒するとしようか。結線が復帰したことがバレると、さすがに連中も動いちゃう」周り中に信号弾発射ー。お前らしばらく頭伏せてろ、と言わんばかりに。

セバス:じゃ俺は、儀式の準備を進めてる。

GM:〈オカルト〉で振っちゃってください。

セバス:(コロコロ)弱っ! 5。ポシ。(コロコロ)・・・20。

GM:では、信号弾だか照明弾とか煙幕とか飛び交う中で必死で床に図形を書く人が一人いる(笑)。しばらくすると、発動の目途が立ってきました。で、さすがにちょっと手持ちの信号弾が尽きかけてきたかなっていう頃、水鏡で、ペラ・アーディネイ女王が。『皆さん、ご無事ですか?』

セバス:「まぁ、何とか無事ですなぁ」

マッコイ:「二人ほど行方不明だが何とかなってるよ。多分ね」

GM(アーディネイ):『状況を聞かせてください』

セバス:かくかくしかじか。

GM:こう、うなだれながら、『月ですか・・・』(笑)

マッコイ:「どうも、現場と政府側にかなーり温度差があるような気がしてならんのですよ」

GM(アーディネイ):『・・・わかりました。かの大統領に、真意を質して参ります』

マッコイ:「できたらですね、今回の情報をアメリカのマスメディアに流せばかーなーり面白いことになるんじゃないかと思うんですがね」

GM:苦笑いしながら、『できる限りのことは、やりましょう』そして、もう一個水鏡が開いて、トルウィン・タンクレッドの姿が映ります。『アッシュ殿。そのシステムは、何回使えそうだ?』『えー・・・一回で少数がせいぜい。それ以上だと、要するに、エレベーターと同じで安全確保できないんで、無理』

マッコイ:巧い表現だ(笑)。

GM(トルウィン):『ならばその場所は、我らが支えよう。貴殿らは月へ向かってくれ』

マッコイ:「でもねー、ひとつ思ったのよ。俺は向こう側へ行って役に立つのかなと。ヘリごとは行けないでしょ、だって」

GM:そうするとですね。アッシュが、『行けるよ』

マッコイ:「マジか?!」

GM(アッシュ):『アーカイブしてやるよ(笑)。魂があるとうまくいかないけど、魂がない物なら』

セバス:圧縮・・・。
 

『準備オッケー! システム復旧! 回廊、行きまーす!』
アッシュの声が掛かると、床に書かれた10の図形(セフィラ)が輝き始める。
マッコイ、セバスチャン、和歌は頂点の円の中に立ち、その時を待つ。
そして・・・月を向いたアンテナから、光の回廊が伸びていき、
3人を空高くへと運び去る。
 

マッコイ:「さぁて、向こう側はどうなってるかだな」
 


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