第三幕:Year of No.6
シーン2 ストームナイトの嘘と真実(その3)
- 時刻は夕方。しとしとと冷たい酸性雨が降り始める。
それをものともせず、数人の子どもたちがバラックの間を走り抜ける。
「あっちに変な生き物がいるってー」
「話し声とか聞こえたらしいぞ」「見に行こうぜー」
アーウィン:我々も、その生き物を捜しに行きましょう。めぼしい出来事といえば、それぐらいしかないですから。
カケル:うん。そいつが本当に話せる知的生命体なら交渉したいな。
- しかし、その生き物は居場所を刻々と変えているらしく、
捜索は空振り。仕方なくストームナイトは療養所へと帰還する。
「どうなさいました? 浮かない顔ですが」
- 阿笠:「正直、戸惑っております。ストームナイトが悪い奴だとは」
「・・・ストームナイトか。まぁテレビでも観るが良い」
- ドクターは旧式テレビの電源を入れる。
金輪がスポンサーを務めるニュース番組が、丁度始まるところである。
『ストームナイト・トゥディ!
本日は、高名なストームナイトのレッドハンドさん、ミスター・ホーさん、ヴォータンさんにゲストとして来てもらいました!』
- 全員の眼が釘付けになる。そこに映っていたのはなんと、
先刻S級手配犯を捜していた3人組であった。
『レッドハンドさんといえば、ナイル帝国が悪の組織だと気づいて善に転向した、正義のストームナイトですね』
『ああそうだ。昔は酷かった。しかし気がついたんだよ、ナイル帝国の真の姿に!』
『確かに私の上司も酷いヤツだった。私は決別したんだ』
『俺モ・・・ダ』
なお補足すると、レッドハンドはナイル帝国十総督のひとり、
ミスター・ホーの正体はオーロシュの怪物、
ヴォータンは「角笛の主」と呼ばれるアイルの強力なデーモンである。
つまり、3人ともストームナイトを名乗る価値など全くない、悪役たちだ。
看護師が、これ以上見ていられないという表情でテレビを消す。
- 稼頭姫:「あなた方が、テレビに出ているストームナイトを嫌っている理由は、何故?」
「昔のストームナイトはこうではなかったからさ。今のような腐りきった連中ではなかった。もっと何て言うかな、手強い・・・じゃなくて、根性があった」
- カケル:「そうでしょう。だってこいつら、ストームナイトじゃなくて、ストーマーじゃないですか」
「その通りだ! まったく、軽々しく名乗りおって。それが頭に来るのだ。彼女が怒る理由はまた違うと思うが」
と、その時、療養所の裏で大きな物音がする。
咄嗟に窓から外を見ると、尻尾を持ち毛むくじゃらの足をした
人間大の生き物が路地裏へ走り去るところだった。
ストームナイトは、手近にあった武器の代用品を掴み、急いでその後を追う。
- カケル:(袋小路に追いつめ)「フリーズ! 動けばこのバットが火を噴くぜ!」
「ぎゃあ! な、何だ?」
- アーウィン:「まあ待ちなさい。そのようなことをしてはいけません」
「た、助けてくれ、助けてくれ」
そこにいたのは尻尾を丸めてうずくまる一匹の犬。
より正確に言うと、スーツを着て携帯電話を片手に持つ、犬がいた。
稼頭姫:す、す、す・・・!(驚愕)
- アーウィン:「スクサーカ!? どうしたんだ、その姿は?」
「おお、私を知っているのか!」
アーウィン:多分やっと話を聞ける相手に出逢ったような気がする。「オーロシュのナイトメアが、どうしてこんな所にいるんだ?」
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