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TORG往復書簡リプレイ

『MOMO Can Survive』

Epilogue

 
GM:フィラデルフィアからの帰りの船は、物資の代わりに避難民を乗せ、順調に旅を続けます。

球太郎:避難民に武勇伝を面白おかしく語り、偉業の伝播を狙います。・・・と思ったが、今回の事件について喋るのは船の信用に関わる。キメラの件はフレーバー戦闘だからフレーバー偉業だし、パンドラの件や星辰の件はきちんと偉業を起こしたけど昔過ぎて、偉業の伝播にはならないですかね。

GM:偉業を語り、それを聞いた人にポシビリティを取り戻させるには、「その土地で成された偉業」について語らなくてはなりません。残念ですが、今回の事件の話以外は、偉業伝播の条件を満たさないことになります。

球太郎:なるほどなるほど。球太郎としては、さすがに船の不祥事を自分から吹聴するわけにはまいりません。そこで、メアリィ船長自ら「このキュウタロウはな、船を救ってくれたんだ」みたいに水を向けて、話しても問題ない流れを作ってくれ、そして球太郎が偉業の伝播をする、という展開を希望します。

GM:メアリィがどう判断するか。迷うところですが、「スペシャルズは合衆国大統領から直々にレジスタンス抹殺命令を受けていた」、「その話が避難民やレジスタンスの耳に入ることは避けたい。偉業によって希望を取り戻してもらうはずが、逆に合衆国全体を信じてもらえなくなる結果に繋がりかねない」、以上2点の理由により、彼女はあなたに、今回の事件の話はしないでくれ、と頼みます。

GM/メアリィ:「あたしがもっと経験のある立派な船長なら、もっといいやり方を考えつくだろう。けど・・・すまない。あたしはこれが最善だと思う」

球太郎:全面的に賛成です。そこに思い至らず、あんな提案をし、恥じ入るばかりです。「わーかってる! そんなヒデェこと、話すわけねーよ。俺は別に、自分の手柄を吹聴したいわけじゃねーし、あんたは充分立派な船長だって事実を差し引いても、その判断は最善だと、俺も思うぜ」

GM/メアリィ:「・・・ありがとう、キュウタロウ」

GM:さて、改めてエンディングのご相談です。やりたいことはありますか?

球太郎:方向性や、希望として頭にあるのは、次の3つです。
 

 1 スペシャルズ(笑)、特殊任務(笑)へゴー!
 

球太郎:モモとヴォルフの三人で、あたかもスペシャルズの再来のごとくジープを駆り、点在するレジスタンス村を助けたい、という主旨です。物資の一部を分けて届けたりとか、若干名ですが希望者をジープで連れ帰ってフィラデルフィアや他の地へ運ぶとか。

GM:レジスタンス村=立ち退きを拒む頑固者の村、なので、住民をコアアース側へ連れ出すのは容易ではありません。でも、定期的に訪れて物資を届けることは、「合衆国政府はあなた達を見捨てていないよ」というメッセージを届けることにもなりますから、是非やっていただきたいです。ストームナイトが偉業を起こして伝播できればさらによし!

球太郎:自分もまさにそう思って、1を考えました。賛成していただいて嬉しいです。
 

 2 球太郎の里帰り
 

球太郎:これは、とにかくモモを親に紹介したいぜ、という主旨です。父・求作、母・玉子までは決まってますが、兄弟姉妹は特に思い付きません。

GM:九州男児のお父ちゃんは、息子が女の子連れてきたら、どんな反応するんでしょうね。これまで、野球に夢中で異性とのお付き合い経験がまるでゼロなのだとしたら、母ちゃんはモモを絶対繋ぎとめたくて、要らん世話を焼こうとするかも?
 

 3 再会・アラスカにて
 

GM:えっ(笑)。

球太郎:これはさらに未来の話で、「もし、ヴォルフの狼化が思考にまで進むもので、いつか野生に帰ってしまうとしたら」という仮定に基づくものです。アラスカで狼ボスを営む彼に、モモと娘と三人で会いに行くというシーンが、何故か降りてきてしまったのです。

GM:うーん、全部採用! と言いたいのは山々ですが、ひとつ伏線消化のセリフが残ってまして、それを伝えて、余韻と次回への引きを残して終わりたい、という思いもあります。

球太郎:マスターにお任せします。自分の希望した案の取り扱いとしては、1だけ軽く演出してもらえれば。残りはいつかSS書きます!(爆)
 

〜彼の物語〜

 「ほんじゃあ、船長。特殊任務、行ってきます!」
 荷物の積み込みなど出発準備を終えた球太郎は、モモ、ヴォルフを伴い、船長に挨拶をする。
 船長と敬礼を交わし、三人はジープへ向かう。

 甲板にたむろしている船員たちに向かって、
 「いいかお前ら、部外者は首を突っ込むなよぉ? これは、スペシャルズの特殊任務なんだぜぇ?」
 聞かれもしないのに、妙な口調(イメージはスギちゃんです)で吹聴してまわる球太郎。

 『おい、それマジでやめろ、タマキチ』
 「俺はぁ、球太郎だぜぇ」
 「球太郎さん? それは、歌か何かの真似ですか?」
 「いや、これはな、スギちゃんと言ってだな・・・」
 と解説しようとして、何だか自分が馬鹿みたいな気持ちになる球太郎。
 「ま、いっか。よし、こっからは真面目に行くぜ」
 『ククク、早速尻に敷かれてやがるなタマキチ』
 「うっうるせえ! そして俺は球太郎だ!」

 モモは直接的なことを何も言わないのに、
 勝手に忖度して、勝手に尻に敷かれる。それが球太郎クオリティ。
 そして、尻に敷かれる球太郎を見て、からかわれた溜飲が下がったヴォルフである。

 行きはレジスタンス村への物資をジープに目一杯積み込み、ヴォルフは乗らず隣を併走。
 帰りは三人で乗り込むという、このチームならではの行程である。

 「そういやヴォルフよぉ、お前あれからずっと狼のままだけど、変身とかねぇのか?」
 『ああ、これな、一度なったら戻らねぇんだわ』
 「おまっ!? そーいうことは早く言えよ!
  てかそんな大事なこと、こんな日常会話でさらっと言うなよ!」
 『言えとか言うなとか、どっちなんだよタマキチ』
 「球太郎だっ!」
 「お二人とも、そろそろ着きますよ」
 任務開始のため、この件はいったんうやむやになったのであった。

 レジスタンス村にて。
 まずは、村長など代表者的人物に挨拶。アメリカ海軍船から物資の譲渡に来た旨を話し、
 さらに、現在の生活における困難や脅威について話を聞く。

 船と違って護符がないから、リビングランドでも腐らない物資に限るが(例えば何だろう?)、
 とにかく、持ってきた物資を必要なところに配っていく三人。
 ヴォルフも、大八車をくわえて引っ張って参加。

 

GM:リビングランドでは、死んだ生物や、加工食品はすぐ腐るのでNG。一方、原型をとどめていないハンバーガーは何故かOKだそうです。届けて安全なのは、元のままの形の新鮮な果物野菜、クーラーボックスに入れた魚(これはグレーゾーンかも)、などですかね。

球太郎:ハンバーガーは、子どもたち喜びそうですね!
 

 子どもたちが物珍しさに寄ってくるので、ひとしきり遊んでやる三人。
 カッコイイ狼形態のヴォルフは男の子から、優しいモモは女の子から大人気である。
 球太郎などは、体力もてあました少年少女に野球を教えはじめ、
 そろそろ帰りますよとモモからたしなめられる有り様は、もはや母子のようでもある。

 どうせ俺たちは見捨てられたまま死ぬんだ云々、と愚痴やかましい飲んだくれに、語りかける球太郎。
 「大丈夫、合衆国はあんた方を見捨てない。その証拠に、俺たち、海軍の指令で来てるんだぜ」
 おどけて敬礼をしてみせる。
 「勿論、俺たちストームナイトも同じだ。・・・また来るからな」

 その時!!
 見張り塔からの鐘の連打と絶叫が、敵の来襲を告げる。
 村の外に、水平線が見えないほどの、エディーノスの大軍が迫っている!

 『よりによって俺たちがいる時にカチコミとは、何とも間の悪い敵さんだ』
 「ふっ、違ぇねえ。行くぜヴォルフ! モモは、安全なところに隠れているんだ! 一歩も・・・」
 外に出るなよ、という言葉を飲み込んだ。
 違います、とモモの目は告げていた。あなたと同じ、ひとりのストームナイトでありたい、と。
 「よし、モモは村人を頼む。村長さんと連携して、避難誘導を!」
 「はい、球太郎さん!」
 自らの戦場へ駆けていくモモ。それを見送る球太郎。
 『フッ、尻に敷かれるばかりじゃねえみてぇだな』
 ひとり頷くヴォルフである。

 避難誘導組と連携し、全く被害が出ない原っぱを主戦場とすることに成功。
 あとは男二人の独壇場である!

 

ヴォルフ:『どおりゃああ!・・・おい、しゃくだがよ、大物(ヤツ)の相手はお前に譲るぜ、タマキチ!』
 

 ヴォルフが、狼の膂力と敏捷性をフルに活かし、
 ボスと思われる族長エディーノスの前に立ちはだかる雑兵エディーノスの群れを吹き飛ばす!

 

球太郎:「球太郎だっつーの!」
 

 いつものツッコミを入れながら、球太郎はアイコンタクトで了解の旨を伝える。
 もはや即席コンビではない、固い絆で結ばれたバディによる鉄板の連携だ。

 球太郎はバットを構え、族長エディーノスと相対する。
 目に昭和の野球漫画のごとき暖かな炎がともり、それが身体中に伝播していく。
 そして・・・

 

球太郎:「ホームランバッティング! 場外まで・・・飛んでけぇぇぇ!!!」
 

 族長エディーノスは霧の彼方へ飛んでいき、雑兵エディーノスは統率を失い散り散りに逃げ出す。
 霧の隙間から僅かに晴れ間が差す。村人たちの心に、僅かに希望の灯がともる。
 またこいつらがやって来るのを待ってみよう、それまで踏ん張ってやろう、と。

 

 帰り道。ひとしきり、村の様子の話や戦闘の感想戦で盛り上がった後、ふと降りた沈黙の中、
 『・・・言っとくが、後悔はしてねぇぞ』
 ぽつりと語るヴォルフ。行き道で球太郎と言い争いになり、うやむやになった件である。
 『俺がこの姿になって走らなけりゃ、あの村はなかったかもしれねえだろ』
 「そりゃあ、そうだけどよぉ」
 一方の球太郎は、歯切れが悪い。色々と納得行かない様子である。
 『そもそもが、自分の蒔いた種だ。仕方ねえだろ』
 「償い、ってことか?」
 『そんな綺麗な言葉はしっくり来ねえが、間違っちゃいねえな』
 ふぅ、と息をつくヴォルフ。元の姿なら、旨そうにタバコを吹かしていたであろう佇まいである。

 『ま、この姿も、なってみればそう不自由はねぇさ。戦闘の動きとしちゃあ充分以上だし、
  船長だってこの俺をスカウトしてきたんだから、ストームナイトとしても問題ないってことだな』
 胸を張るヴォルフに、球太郎はかすかに顔をしかめる。
 「うーむ、仮に人間形態に戻ったら、お前がランだったって船長にバレるもんなあ」
 『バレるぶんには別に構わねえ。今までの非礼を詫びるだけさ。
  ただ、ランだった時の記憶がわずかに残ってるが、あの時の船長への憎しみは異常だった』

 もしかしたら、それもファーザーの洗脳プログラムに組み込まれていたのかもしれない。
 万が一にも、手駒が船長に同情して計画がご破算にならないように。
 勿論、単なる憶測だが、そんな見解を話したところ、球太郎も頷く。
 「確かに、あいつならやりかねねえな」

 『洗脳だの改造だので、アタマやココロがどうにかなるのと比べりゃ、
  カラダが人と違うくらい、どうということはねぇさ!』
 再び胸を張って見せた後、ある懸念が胸を掠める。

 『ただな・・・』
 変わらないと思っていたアタマやココロについて、最近嫌な予感に悩まされている。
 もしかしたら俺は、だんだん、野生の狼に近づいてきているのではないか、と。

 最近、自分が自分でない時間が増えてきているような気がする。
 まず、意識がよく飛ぶ。恐らく居眠りだろうとは思うが、頻度がだんだん増えているのが気になる。
 また、食事のことばかり考えていたり、気が付いたらちょうちょを追っていたり、
 思考が動物化しているのではないか、と思われる出来事が頻発する。
 こうして思念波で人と話すことはおろか、思考すらできなくなり、野生の狼に戻る。
 いつかはそういう日がくるのではないかという、強い予感がある。

 「ただ?」
 続きを促す球太郎に、今の予感をそのまま話したくはない。
 なので、思い切りはしょって返す。

 

ヴォルフ:『いつまでも、この船にいられるわけじゃないだろ。俺も、お前も。・・・前々から考えてたんだが、見所のある若いヤツを鍛えて、後を任せられるようにしたい。球太郎も一緒にやらないか?』

球太郎:「そいつぁ面白えな! 喜んで付き合うぜ!」
 

 ヴォルフが、いつものニックネームではなく、球太郎の名を呼んだことに、
 モモは少し目を丸くし、そして微笑んだ。
 何の特訓をしようか、という話題で子どものように盛り上がる男二人を、
 女は静かに、しかし嬉しそうに見守っている。

 

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