TORGリプレイ

『月光夜曲』

 
 

第一幕

 
シーン2 砕かれた心
 

聖騎士ランバート・ローレンス。アイルの人間でその名を知らぬ者はない。
彼はまた、戦争初期から活躍しているストームナイトとしても有名である。
彼が、死亡したのは、今から2ヶ月ほど前のこと。
死の状況に関して、詳しいことは何も伝わっていない。

そして今、遺跡専門のトレジャーハンターリックと、
世界を旅してまわるシスターのシンディ、
名誉を重んじるバーバリアン戦士ディアンの3人は、
ホテルの一室で、ランバートの妹、フィアナ・ローレンスと対面している。
 

GM:さて、故人であるランバートと知り合いだったことにしたい人はいますか?

シンディ:じゃあ、私は昔、高潔な彼とちょっとだけ行動を共にして、立派な人だなーと憧れてたことにします。

GM:了解しました。ではシンディ、あなたは1枚の写真を持っています。一緒に行動した時にチーム全員で撮った写真です。ランバートと、あなたと、マルセルというサイバー騎士と・・・。

シオン:(はっとして)しまったぁー!

GM:あとは、ナイル出身の、エマニエルという男が写っています。

セバス:ぐはっ! う、うちの坊っちゃまですか?

一同:えーっ!(驚き)

セバス:はーい、捜してまーす。確かね、貴族世界に生まれた割にしがらみに耐えられなくて、ナイルへ行っちゃったんだ。

シュア:炎とか使うヒーロー。空も飛ぶよね。

シンディ:ヴィクトリア人貴族がナイルに染まっちゃったんですか。じゃあ私は、坊っちゃんが執事から逃げ回ってるらしいってことを知ってる?

GM:知ってます。『いやー、爺がうるさくてね。だがやはり、僕は、貴族として、ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の務め)として、地球の危機を見過ごせない! まぁ、爺には少々悪いがね』

セバス:まさしく坊っちゃま!(笑)

GM:そんな、おっとり熱血肌のエマニエルと、激情家のランバート、そして、いつの間にか仲間になっていた、冷静沈着、クールなタイプのマルセル。彼らは息が合った3人組で、色んな困難を切り抜けていました。現在、ランバートの死と共に、残る2人の行方も判らなくなっています。

シンディ:「そういえば、あれから、マルセルさんとエマニエルさんの話を聞かないわね」

GM/フィアナ:「エマニエルさんが、現在どちらにいらっしゃるかは判りません。ご存命であることは確かです」

シンディ:「あぁ、それはよかった。便りがないのはいい知らせよ」

GM:その言葉を聞くと、フィアナは暗く沈んだ目をあなたに向けます。「皆さんに、お力添えを願いたいことというのは・・・私の兄を殺した、あの忌まわしき人狼、マルセル・ジュネを、倒すための、手伝いをして欲しいのです」

一同:!!

シンディ:「オー、そんなはずはないよ! だって彼らはあんなに息が合っていて・・・」

GM/フィアナ:「(強い調子で)そんなことは知っています! 私だって、あの日まではそう思っていた」

シンディ:「あの日?」

GM/フィアナ:「兄が、マルセルに、殺された日です」

シンディ:「オー」と言って十字を切ります。「大体そんな、ワーウルフなんてワーウルフなんて、そんなことあり得ないわ」
 

「いるんですよ。そういった生き物が」――低い女の声。
ドアがガチャンと開き、褐色の肌のインド人執事が車椅子を押してくる。
車椅子に乗っているのは、20代後半くらいのヴィクトリア調の衣服を着た女性。
一目見て判る。彼女の両足は、すねの辺りから欠損している。
そして、身体のあちこちに、傷跡と火傷の跡が刻まれている。
 

GM/女性:「存在します。ええ。実在します。信じたくないかもしれませんけど。あとお嬢さん。あなたがそう思うのはよく解りますけど、その娘(こ)の前で、それ以上言葉を続けるのは、あまりにも、残酷ではなくて?」

シンディ:じゃあ、はっと口を押さえて、「オー、ノー」

GM:そうするとフィアナは、「いいんです、エリスさん。いずれ、言わなくてはいけませんから」

リック:「殺されたっていうのは、どんな状況で?」

GM:簡単に言うと、2ヶ月前の夜、場所はフィアナの家。ストームナイトとして、仲間として、一緒にいた筈のマルセルが、急に、人狼と化して暴れ出し、武器も鎧も置いてくつろいでいたランバートを殺しました。フィアナは別室にいたので、その瞬間は見ていません。

ディアン:「何故、人狼が、マルセルだと判った?」

GM:「お揃いの銀のロケットを、兄たちは持っていました。エマニエルさんは、傷ついた私を助けて、一緒に脱出したので、人狼が彼でないことは判っています。そして、その人狼は、身体の中に、大量のサイバーウェポンを装備していました。少なくとも、あの3人の中で、サイバーウェポンを持っていたのは、マルセルだけです」〈説得〉あるいは《魅力》で判定してください。これは相手の感情を読むための判定です。

シンディ:〈説得〉ですね。(コロコロ)達成値11。

ディアン:“貫禄”使用、17。

リック:・・・2(苦笑)。どうしようもない。

GM:では、シンディは、あぁ、フィアナの心の傷は深そうだなと思います。そしてディ。フィアナがマルセルと名を呼ぶ時に、ただごとではない深い感情を感じます。

ディアン:(考え込む)

GM/フィアナ:「今回の私の依頼は、名誉ある任務とは違います。これは、私個人の、復讐にすぎません。でも、私とエリスさんだけでは、あのマルセルに追いつくことはできても、倒すことは、難しいのです。ですから皆さんに、お力添えをお願いしたいのです。皆さんの名前は、以前に兄から伺っています。このようなお願いをするのは、心苦しいのですが、今の私には、皆さんぐらいしか、信用できる人間がいないのです・・・」

シンディ:そりゃもう、一も二もなく、「ついて行かせてください」と言います。

リック:「まぁ、ここまで言われちゃあな」

ディアン:(驚いた表情)

シンディ:じゃあ、ディアンに目で訴えかけます。だって、この人たちについて行かないと、何しでかすかわかんないし、真実を知りたいし、私だって私だって私だって、マルセルさんマルセルさんマルセルさん、うわー(笑)。

GM:いっぱいいっぱいだね(笑)。

ディアン:「・・・フィアナ。フィアナは、何故復讐を選ぶ? マルセルを見つけて、殺すことを、本当に、望んでいるのか?」

GM:彼女は一瞬戸惑いますが、「そうです、望んでいます」と答えます。「何故ならば、そうしないと、私自身が、今いる場所からもう先へ進めないからです。私がマルセルを殺すか、私が殺されるか。それしかないんです」

シンディ:「ところで、エリスさんとおっしゃいましたね。あなたは、どうして・・・?」

GM:では、エリスが少し微笑んで答えます。「そうね。ざっくばらんに言わせてもらうわ。これは、彼女も了解済みなのだけど、私は彼女を利用しているわ。私の目的は、マルセルではない。マルセルの背後にいる、マルセルにあの力を与えた者を追っているの。何故ならば、それは私の血縁だから」

シンディ:〈手掛かり分析〉で、この言葉に含まれた意味を、察してみていいですか?

GM:どうぞ。ちょっと難しいです。

シンディ:(コロコロ)達成値21。

ディアン:“ひらめき”交換しよう。「『マルセルに、あの力を、与えた者』?」と繰り返して、シンディが整理できるようにする。

シンディ:ありがとうー。(カードを交換)じゃあこれで+3、24。

GM:まず判ること。見た感じ、エリスはヴィクトリア人です。そしてエリスの血縁者こそが、マルセルを人狼に変えた張本人。

シンディ:血縁って言ったら、親戚か、もしくは親兄弟・・・。

GM:まぁ、本人も血縁ですかね、一応。ただ、彼女は血縁という言葉に、あまりに多くの意味を含ませようとしています。ぼかされてしまって確証は持てません。

シンディ:わかりました。

GM/エリス:「彼女の作品であるマルセルを倒すことが、必ずしも私の目標である女を追うことには繋がらないかもしれないけど、それでも、手掛かりは得られるわ」

セバス:女?

GM:エリスが追っているという、血縁者のことです。

シンディ:い、今、彼女の「作品である」マルセルとか言いましたね?

GM:ええ、言いました。「それでね、私と彼女の調査の結果、今マルセルは、アメリカにいるらしいの。・・・グレゴール、あれを」エリスが言うと、執事が、ぺこりとおじぎをして、車椅子の後ろのポケットから、資料を取り出します。FAXの文面なんですけどね。
 

『ミセス・エリス

 貴女のご依頼されていた調査の結果は、大変に興味深いものでした。我々が現在追っている怪事件にも、貴女の追っているワーウルフが関連している可能性が、多分にあると考えられます。
 そこで提案があります。我々は貴女に、全ての経済的・情報的協力を惜しみません。ただし、ひとつ条件があります。我々は貴女の努力を見て、非常に感動しました。それを人々に伝えるために、その一部始終をドキュメンタリー番組として、放映したいのです!
 勿論、プライバシーの問題などには最大限配慮いたします。放映権について、打ち合わせをさせていただきたいです。是非アメリカ・ロサンゼルスまでおいでください。

ファーストエンターテイメント プロデューサー ジェイク・ノリ』
 

一同:来たー(笑)。

GM/エリス:「このように、マルセルと思しき情報が寄せられています。(少し顔をしかめて)正直、テレビとかいう見世物になるのは、好ましくないのですが、アメリカは、私にも彼女にも不慣れな土地。私たちは彼らと、契約をしました。ですが、彼らが必ずしも信用できるとは限りません」

シュア:だよな。

GM:フィアナが続けて、「それで、皆さんに、協力をお願いしたかったんです」落ち着いたのか、フィアナは肩を落として、少し申し訳なさそうに、あなた方を見ています。

シンディ:「それは、こちらから同行を願い出たいくらいですわ」

GM/エリス:「では、リックさん、シンディさん、ディアンさん。私たちにご協力いただけますか?」

リック:「まぁ、正義の味方を気取るつもりじゃないが、やらなきゃな」

GM:フィアナは立ち上がると、深々と頭を下げて、「お願いです! どうか、力を貸してください」

ディアン:「フィアナ」

GM/フィアナ:「・・・はい」

ディアン:「人生の、短い時間を、復讐にすり減らすのは、勿体ないことだ。俺は、フィアナに、そんな時間を使ってほしくない」

GM:それを聞くと、彼女は少しだけ寂しそうに笑って、「でもね、これは、けじめなんです。私にとっても、あの人にとっても」

ディアン:「それに、復讐は、名誉に生きる、騎士のすることではない!」

一同:おぉ。

GM:彼女は、何かを諦めたような顔をして、「騎士叙勲の話は、もう、お断りしてあります。私は、騎士でもなければ、女王の臣民でもありません。今はただ、ひとりの女です」

ディアン:・・・・・。

GM/エリス:「解ってあげて。今のところ彼女には、こうする以外、道がないの。(少し嘲るように)あなたも、その心を砕かれるような目に遭ってみれば、解るかもしれないわ」

リック:「なーに、フィアナの手を汚させなくても、俺たちがその狼野郎をやっつけちまえばすむことだろ。行くぜ、シンディ、ディアン」と言って、退出を促します。

GM:では、依頼を受けたということでよろしいでしょうか。

ディアン:少し違う。放ってはおけないから、近くで見守る、そんな感じ。

シンディ:私も、「ついて行かせてください」って言っただけで、エリスには、具体的に力を貸すという返事はしません。

GM:了解しました。フィアナは、首から下がるロケットを握り締めて、「ありがとうございます!」と呟きます。ここでシーンを切ります。
 

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入手NPCカード:フィアナ、エリス、グレゴール執事、マルセル
 


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