TORGリプレイ

『月光夜曲』

 
 

第三幕

 
シーン1 せめて、人間として
 

シオンが酒場を出たのとほぼ同刻、チンピラどものアジトにて。
「ホントだよ! それ以上俺は知らねぇよ!」
顔を腫らした男が、侵入者に向かって声を絞り出す。
「畜生、帰ってくれ、帰ってくれよ!」
「・・・マリアのバーか。やっと見つけたぞ!」
仕立てのいい革靴が、埃のかぶった床を横切り、バタンとドアが閉まる。
 

GM:では、第三幕を開始します。時刻は夜。

シグマ:「あー疲れた疲れた、今帰ってきたよ」

GM:そんなあなたに、ジェイクが喜び勇んで、「近づいてきたわよ」

シュア:「何かあったの?」

GM/ジェイク:「似顔絵作って、調べてもらったんだけど、それっぽい人物の目撃情報が得られたわ」

シュア:「どこで?」

GM/ジェイク:「警察。霊安室に侵入して、死体の一部をかっさらって行ったらしいのよ」

シュア:「それいつの話?」

GM/ジェイク:「昼間よ」

シンディ:「どこの部分ですか?」

GM/ジェイク:「なんでも、殺された人間の、大腿骨を持って行ったらしいわ」

ディアン:「スケルトンでも、作るのか・・・?」

シュア:気持ちいい話じゃないなぁ。「思い当たる節はありますか?」

GM:では、そうするとエリスが少し表情を硬くして、「私への、当てつけかしらね」

シュア:「にしては、リスクが大きすぎるような気がします」

GM:「殺された人間というのは、それ自体がひとつの呪物です。可能性として、奪われた骨は、彼が殺した相手の骨かもしれません。それに・・・」と言って、エリスは自分の足元を見て、「先端につけるべき槍の穂先を、彼はもう既に、手に入れていますから」

シュア:チラッとセバスを見る。彼女の言ってることって合ってる?

GM:〈オカルト〉武器作成に身体の一部を使うというのは、割とありがちな話です。

セバス:でしょうね。

GM:足首の骨を尖らせて槍の形にするというのは、まさしく「エリスを殺すための武器」という気がします。エリスを殺す以外の目的で、エリスの骨を使う理由が見当たらない。

セバス:逆に、マルセルに殺された相手の骨を使えば、マルセルを殺すための武器を作れる。エリスがそれをしない理由・・・(しばし考え)そうか、堕落か。エリスも堕落してんのか、もしや。

GM:〈看破〉すれば判りますよ。邪魔されるかもしれないけど。

セバス:じゃ、勝負かけるか。「骨、ですか?」とか言いながら。

シンディ:ただ、向こうにも、セバスの正体がバレちゃいますね。

シュア:その辺は覚悟の上でやらないと。要するにあなたは魔物ですかっていうのを黙って調べるわけだから、無礼極まりない話なので(笑)。

GM:エリスはセバスの視線に気づくと、にっこり笑って言います。「私のことを、見てみます? まだ人間かどうか。実は私も、あまり自信がないんですよ。自分がまだ人間なのか、ね」

セバス:「ほぅ」とか言いながら、〈看破〉、やってやるよ!

GM:そうすると、執事のグレゴールが、むっとした顔をして前に出ようとするんですが、エリスが「・・・どいていなさい」と言うと、あなたを睨みつけてから、二歩下がる。

シュア:一瞬腰を浮かし掛けるけれども、グレゴールさんの動きに合わせて、こっちも退きます。

セバス:では行ってみますかねー。(コロコロ)うわ、低っ! ポシ。

GM:消しません。難易度はエリスの《精神力》です。

セバス:(コロコロ)じゃ、“ドラマ”使っちゃおうかな。(コロコロ)33。ボーナス+10か。達成値21。

GM:姿が見えます。彼女の全身から、何本ものイバラが生えています。そして彼女の眼窩は落ち窪み、あなたにはまるで死体のように見えます。簡単に言うと、これは、堕落の第三段階です。

一同:!!
 

魂を汚す〈オカルト〉儀式に、ひとたび手を染めた者は、
堕落度というポイントを得る。邪な目的で〈オカルト〉を実践したり、
殺人、拷問などの邪悪な行動を取るたび、堕落度は累積していく。
そして堕落度が第四段階へ突入した時、その者は完全に堕落し、
人外の魔物と成り果てる。
つまりエリスは、あと一歩で魔物となってしまうのである。
 

シンディ:「無礼だわ! そんな風に女性をジロジロ見るなんて」

GM/エリス:「まあまあ。(シンディからセバスへ向き直り)どうでした? 私はまだ、人間でしたでしょうか? なにせ、自分を見ることはできませんのでね」

セバス:「・・・・・」テーブルの下で、手をギューッと。ちょっと拳をプルプルさせてる。そのまま今度は横目でフィアナを見る。

シンディ:「そんな、そんな!」

ディアン:「シンディ。セバスチャンを、信じよう」

セバス:(コロコロ)ポシで振り足します。(コロコロ)達成値19。

GM:フィアナの堕落度は第一段階です。時々目が光ったり、身体の周りに小さいゆらぎが見えたりします。彼女の魂は、若干汚れてきています。しかし、まだまだ人間です。

リック:・・・・・。

シュア:ひとまず、後ろのグレゴールさんまで見ていただければ。

セバス:多分相当勝負しないと無理でしょ、これ。

GM:グレゴールを〈看破〉しますか?

セバス:やるしかないっしょ。全員まとめて、見てやるさ!

GM:どうぞ。

セバス:(コロコロ)はい、まわりました。

一同:うぉー!(笑)マジかよ!

セバス:(コロコロ)29、達成値20。

GM:恐怖の力が妨害します。

セバス:達成値20で止められた? やべ、強ぇ。

シュア:いや、「恐怖の力が妨害」だから、この中に魔物がいるってこと。

シオン:ひぃぃぃー!
 

正体を見破られそうになった時、魔物は「恐怖の力」という
特殊能力で、その試みを妨害することができる。
今回のように、〈看破〉を妨害した場合には、
その旨をプレイヤーへ伝えるのがお約束である。
そうすれば少なくとも、「この中に魔物がいる」という情報を
得ることだけはできるのだ。
 

セバス:ガタッ! と立って、「失礼した」と言って、ゆっくりと顔を上げ、「・・・何かしらの決心があったんでしょうなぁ」とか言って、もう一回ちゃんと座り直す。全員を見て、最後にぐっ! と執事を睨んで、黙りこくるよ。

一同:(沈黙)

シュア:じゃ、セバスを睨みつけて、エリスさんの前に、最初に逢った時のようにひざまずいて手を握って、「あなたたちは、人間です」と、目を見て話し掛けます。「僕たちは、あなたたちの想いを知っていて、ここまで共に歩んできました。だから、僕は言います。あなたたちは、人間です!」

GM:ではそうすると、エリスはあなたの肩に手を置いて、「ありがとう、貴方。でも仕方がないの。これは、私たちがこの道を歩むと決めた時に、逃れられないでついてくる、影なのだから。せめて多くの時間、人間でいられるようにするのが、私たちの務めかしらね」

シンディ:「(泣きながら)そんなこと、そんなこと、あるわけないんです! 救われない人間なんて、いるわけないんです!」

GM:グレゴールが寄ってきて、シンディの肩をポンポンと叩いて、小さく頷く。

シュア:フィアナを見て、「あなたたちが下げている、ロケットの中の景色が曇らないように、僕たちは全力を尽くします」

GM:うわ、言われた。そうするとフィアナは、ぎゅっとロケットを強く掴んで、あなたを睨みつけてから、あなたと目線を合わせずに、小さく頷きます。
 

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