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TORGリプレイ

『Pandora』

 

あとがき

 
 過つは人の常、許すは神の業。

 GMのしゃあみです。時事ネタを採り入れた『Pandora』、記憶が風化する前に何とか完成しました。

 注釈にも書きましたが、このシナリオは、TORG日本語版翻訳者、山北篤さんの「STAP細胞のトーグ的解釈」というツイートから着想を得て作成しました。技術アクシオム23(コアアース)と24(ニッポンテック)の差は、現実の地球においては、もはや存在しないかもしれません。しかし、実験結果の確実性とか倫理観の希薄さとか、その辺りが異なるのだと、私は解釈しています。

 なんて言っておきながら、女性科学者をめぐる攻防は全然メインじゃないんですけどね(笑)。
 

 このシナリオで一番やりたかったのは、「ヒーローらしい決意」に、報いることでした。

 1年前、私は『I Have No Mouth, and I Must Scream』というセッションに参加しました。その導入は、「サイバー教皇領、ゴッドネットの地獄に囚われた無辜の人々の魂を救い出す」というもの。依頼には裏があり、依頼人は別の目的を果たそうとしていました。しかし、ストームナイトのひとり、神崎さんは、「騙されたとしても自分がやったことに対するケジメはつけたい」と、100人余の魂を実際にゴッドネットから連れ出しました。さらに彼は、セッションのエンディングで、魂を収めたチップを手に、どこかに安置されているはずの肉体を奪い返すため、相棒のマルセルと共にサイバー教皇領へ向かいました。

 私はこのエンディングに本気で感動しました。彼こそ真のヒーローだと思いました。そして、肉体を奪い返す話、つまり、1年前のセッションの続編を作ることにしました。
 

 もうひとつ、企んでいたことがあります。1年前のセッションで私が使ったキャラクター、牧野芹奈の夫という設定の「ハイロード殺し」マキシムと、芹奈が共演した神崎&マルセル両名との対面です。

 神崎さんとマキシムは、どちらも剣の道を極めようとする戦士。2人のガチ勝負は、きっと盛り上がるよね?
 芹奈はマルセルといい雰囲気だった。マキシムと引き合わせてみたら、どうなるだろう?

 結果は皆様ご覧の通り。私の予想と期待をはるかに上回る名シーンが生まれました。

「お前の気持ちはよく解った。いつでもかかってこい」
「神が、俺に答えをくれたのだ」

 この会話が特にたまりません。マキシムはマルセルの本気を知って、かと言って譲る気はないぞという覚悟を示しました。マルセルは初めから賭けに負けることを知っていて勝負を挑み、ただ一度だけ、神の名を騙り嘘をつきました。私は芹奈になったつもりで悶絶しておりました。さしずめ今回のセッションは、「芹奈さん乙女ゲールート」といったところでしょうか。何という私得(笑)。
 

 ついでにもうひとつ。ゲージが60に達する前に準備が完了してしまったため再登場させられなかった、天使ユーリエルですが、彼にも前後編ならではのバックグラウンドがあります。『I Have No Mouth, and I Must Scream』の冒頭、ストームナイトがゴッドネットに侵入した時、ユーリエルもマルローに破門され、地獄へ落とされていたのです。彼は地獄の蓋が開いたのを見て脱出し、サイバー大天使の許に身を寄せました。基本的には上司(サイバー大天使)の命令が最優先ですが、マルローに一泡吹かせるためだと言えば、こちらの作戦に協力させることも可能でした。自己矛盾を抱えた面白い存在なので、もう少し出番を作ってあげたかったけど、まぁしょうがない。ストームナイトの皆さんの動きはそれだけ素晴らしかったです。
 

 見たかったものを全部見せていただいたセッションでした。さらに! マルセルのプレイヤーさんから、彼のアフターストーリーを頂戴してしまいました! 前後編セッションでの出会いを経て、彼は新たな生き方を選びました。皆様にもその姿をご覧いただきたいと思います。
 


 
《REC》
 

――視界は?

「まだぼやけている。だが、最低限の視力は確保できているな」

――やっとその気になってくれてこっちも安心したよ、審問官殿。

「ひとつ、区切りがついたまでのことだ」

――アップデートどころかほぼリプレースだ、いくらあんたでも落ち着くまでは無理はするな。

「ああ。こんなに体が"軽い"のは久しぶりだ。逆に馴染むまで自分の動きは難しいだろう」
 

――あんたやあの"サムライ"、日本から来た小僧に、"英雄"殿のお陰でパリは盛り返した。

「お前たちが掴み取ったまでのことだ。俺たちは切欠を与えたにすぎない」
 

――俺も含めた100人、助ける義理はなかったはずだ。どうして戻ってきた。

(ため息)

「……"神"がそうしろと俺に告げた」
 

――カンザキ、だったか。随分お気に入りのようだったが。

「あいつは若い。若く、眩いほどの"光"を持っていた。それを導くつもりで、あいつの旅に付き合ったまでのことだ」
「初めのうちは、そのつもりだったよ」

「……誰かと背中合わせで戦うことなど、もうないと思っていた。それも、あれほどまでに強く真っ直ぐな男と」

――前よりよく笑うようになったな、旦那。

「ああ。自覚はある」
 

――ランオウジ。日本から来たあの小僧、年齢に外れた風格を持っていたな。

「戦い方は一つじゃない。俺やカンザキには出来ない戦いを、あいつは出来る」
「そして、俺が知り得ぬ修羅場を、あいつは潜ってきた」

「お前たちを救出するには、あいつの力添えがなければ不可能だったろう」

――祝いの席で聞いた。旦那を説教したんだってな。

「嬉しかったよ。本当に」
 

――ハイロード殺し、マキシミリアン。まさかこの目で拝めるとはな。

(沈黙)

――見ていたぞ。

「ああ」

――俺達の象徴(emblème)のお膝元じゃ、あんたもあの英雄殿も何も出来ない。知っていたろうに。

「ああ」

――何故だ。

「"知って"いた。"納得したかった"だけだ」

――そうか。
 

――カンザキと行かなくてよかったのか。

「ああ。あいつの目的は達した。俺の力は必要ないだろう」

――あんたには必要に思えるがな。

「教化が必要らしいな」

――冗談も上手くなったよ。
 

(笑う二人)
 

「もし、あいつと俺がまた共に行く運命なら、神が引き会わせるさ」
 

――安定稼働に入った。もう動けるはずだ。

「感謝する」

――パリに『女神』を連れ戻してくれた礼だ。今回は無料にしておいてやる。

「カンザキが教えてくれた。"タダより高いものはない"と」

――そういうことだ。さあ、顔見世に行くとしようか。

「ああ」
 

――ようこそ、レジスタンスへ。
 

《STOP》
 

2015.08.13(プール帰り、日焼けの跡がもんげー痛い・・・) しゃあみ・拝
 


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