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TORG往復書簡リプレイ

『Pandora's Box』

第二幕

 
シーン5

 
 かつての炭鉱都市、ランスに作られた観光名所、ルーブル美術館別館。
 フランスを支配するサイバー教会は、その建物と敷地を丸々病院に転用していた。
 これこそが「神の救護院」。

 遠くで様子を窺いながら、球太郎はふと、美術の教科書の挿絵を思い出す。
「『民衆を導く自由の女神』・・・」
 眠たい美術鑑賞の授業の中で、その絵だけは、鮮烈な印象を放っていたことを覚えている。
 

ナオミ:「えっと、活性化させた魂の成分を、(マルセルを見て)あなたが肉体に注入するのよね。それは直接被験者のそばで行う必要があるのかしら。医療現場だと、ロボットに遠隔操作でオペさせるケースもあるけど」

GM:考える必要があるのは、魂を「どこで戻すか」「いつ戻すか」「戻した後、100人をどのように誘導するか」です。

球太郎:「じゃあ、こんなのどうっすかね。まずディ様がレジスタンスを率いて陽動、その隙に先生と俺で潜入。生身で捕まってる人がいるならそれも助けつつ、肉体安置場所を探す。見つけたら先生がサイバーデッキで解放。そしたら、解放したみんなに、ここから逃げるよと簡潔に状況を説明します。その時、解放した先生本人が目の前にいて、私が解放したと言ってくれれば説得力が増すと思います」

マルセル:「・・・続けろ」

球太郎:「そして戦える人と戦えない人に分ける。戦えない人を先生が誘導して裏口から逃げます。戦える人は俺と一緒に救護院の勢力をディ様たちと挟撃、制圧します。救護院の中の勢力を全員ぐるぐる巻きに拘束して、逃げれば作戦完了!」

GM:おおっ!

球太郎:「さながら、民衆を導く自由の女神的な絵が3組できるわけです。女神役がみんな野郎なのは、この際目をつぶってもらいます」可能か妥当か不可能か荒唐無稽か、判定をお願いします。

GM:いいですねー。ワクワクします。

球太郎:嬉しいリアクションありがとうございます!「作戦コードは、民衆を導く自由の女神・トリコロール! 通信傍受に備えて、携帯やメールのやり取りは避け、暗号を設定しましょうよ」

ディアン:「暗号?」

球太郎:「俺たちを色でチーム分けするんす。派手に陽動していただくディ様率いる赤チーム! クールに逃走するマルセル先生の青チーム! 素人(『しろ』うと)丸出しの俺、白チーム!」

ナオミ:「トリコロール。三色旗ね」

球太郎:「作戦成功した時は『赤(白・青)旗完成』、失敗やアクシデントで救援を求める時は『白旗破れた』、自分のチームが救援に向かう時は『赤、補修に入る』といった暗号をつかうのはどうですかね?」

ディアン:「わかった。オレたちが、道を切り開く。球太郎は、正面から進んでくれ」

マルセル:「レジスタンスにも、襲撃に加わってもらう。その点に関しては賛成だ」

GM:ディアン卿に、裏口、潜入などと言っても無駄だ。一部作戦を練り直すぞ。マルセルの顔にはそう書いてあります。

球太郎:そりゃそうすね。(だいたい、ディ様のリアリティで通信は無理だって。学べよ俺)心の中で独りごちながら、トリコロール案を泣く泣く取り下げます。

ナオミ:「私は? どこでどうしていればいいの?」

球太郎:「えーと、ナオミさんは…」
 

―球太郎のメール―

 勿論、この危険な任務に連れていくより、安全な場所で待ってもらうことが最善なのは言うまでもない。
 ただし、それは安全な場所なんてものがあればの話。
 事ここに至り、ナオミさんにとって安全な場所など、フランスのどこにもない。
 ならば、せめて自分の手の届くところで守るしかない。

 連れていくなら自分以外のチームに入れた方が安全性が高いのでは、と考え・・・
 その考えを打ち消した。
 目の前にいる2人は、ストームナイトの大先輩。実力的に遥かに上ではあれ、
 同じ作戦に従事する、同じストームナイトである。
 安易に頼り、負担を増やすべきではないし、そうしたくない、と思った。
 そこで、自分のチームについてきてもらう提案をしようと、決意した。
 

球太郎:「ナオミさんは・・・俺の女神になってください

ナオミ:・・・・・。

マルセル:・・・・・。

ディアン:「球太郎・・・」

球太郎:一瞬遅れて、自分の発してしまった言葉の意味を理解します。顔がみるみるうちに真っ赤になり、必死に言い訳をまくしたてます。「いや! ちがくて! その、ほら、民衆の何とかの絵になぞらえてですよっ、俺のチームの、女神的ポジションってか、そう言いたかっただけでっ・・・!!」

ナオミ:「野原くん・・・」

球太郎:要するに、「俺の(チームの)、女神(に相当するポジション)になってください」、つまり、俺のチームについてきてください、とでも言えば良かったのですが、慣れないユーモアを発揮しようとして、大失敗こいた球太郎でありました。

GM:言いやがった! いい! こーいうの大好き! 球ちゃん最高! どう返事すべきか、一生懸命考えました。

ナオミ:「年上だけど、いいの?」

マルセル:「・・・は?」

ディアン:「えっ?」

ナオミ:「貴方の年収っていくらぐらい? 手取りは? 貯金は?」

球太郎:あまりの話の飛躍に目を白黒。

GM:先輩ストームナイト2人は、時が止まったかのように固まっています。ようやくマルセルが一言。

マルセル:「作戦の話に戻るぞ」

ナオミ:「ご、ごめんなさい」

球太郎:わあい! 思った以上のリアクション、ありがとうございます!! ナオミたん、もしや、まさか・・・デレた、のか!?

 
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