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TORG往復書簡リプレイ

『Pandora's Box』

第二幕

 
シーン4

 
GM:野次馬が遠巻きにあなたを眺めています。「おいギャルソン・ジャポネ(ニッポン人ボーイ)。派手にやったなあ。教会に目ぇ付られたら大変だぞ。お前、一体何者だ?」

球太郎:ここで普通にストームナイトと名乗ってもいいものなんでしょうか? 世界観的な疑問なんですが、人々は、侵略者は嫌だと思っててストームナイトに好意的なのか、逆に侵略者万歳でストームナイト帰れ! なのか。地域によって違うなら、サイバー教皇領の雰囲気はどっちでしょうか? 好意的なら、ストームナイトであると名乗り、人々に助力を乞う予定です。

GM:私の解釈だと、サイバー教皇領では、ストームナイト=「教皇を偽りと喧伝するとんでもない輩」、と広報されています。ただし、反教会のレジスタンスにとっては、ストームナイト=「根性のありそうな連中」。レジスタンスを味方につけることができれば、戦況を大きく動かすことも可能でしょう。そしてあなたは“偉業”カードを使いましたので、今のホームランは、人々の心に火を着けるトリガーとなりました。堂々と名乗っちゃっていい(むしろ推奨!)と思います。

球太郎:では、堂々と名乗りますね。あと、ひとりで考えるのも限界なので、先生にニンジャを全員ぶっ飛ばした旨メールを入れて合流を求めます。
 

―球太郎のメール―

「ストームナイト、野原球太郎!・・・騒がせてしまって、すんません」
 堂々と名乗った割に、決まり悪く頭を下げる辺り、まだ慣れてないようだ。
 とりあえず、称賛の声には、どーもどーもと手を振ります。

 ここからの内容を大声で言い立てるのはバカなので・・・
 ギャラリーの中でいい面構えをしてる奴に近寄って、小声だが真摯な感じで話しかけます。
「教皇領に捕らわれた人を助けたい。神の救護院てとこなんだが、
 なにせこちとら地理からして不案内。どうにか手伝ってもらえると助かるんだが・・・」
 

球太郎:確認ですが、神の救護院は、病院としての顔を持ってましたっけ? それとも、ただの収容施設という恐ろしい顔しか持ってませんでしたっけ?

GM:マルセルから聞いていたことにしますが、神の救護院は、普通の医療施設ではないです。サイバーウェアを移植する手術室、移植後の精神障害を和らげる入院病棟、洗脳映像を見放題のテレビ室(笑)、などで構成されています。ただの収容施設という解釈の方が近いです。

球太郎:わかりました。手伝ってもらえるとしたら、内容は考え中です。球太郎は頭脳キャラじゃないので、ナオミさんとディ様と先生とみんなで考えたい。三人で文殊の知恵、四人いればなおよし、です。

GM:いい面構えをした男は、「お、そ、そうか。応援してるぜ。じゃあな」と言って、立ち去ります。

球太郎:「えっ?」肩透かしを食らって、若干凹みます。

GM:ギャラリーのほとんどは、いそいそと元の日常に戻っていきます。しかし、あなたの偉業と宣言は、ランスの街の人の心に確実に変化をもたらしました。ひとりの少女があなたに近づき、赤と青の包み紙のキャンディを、2つ、手渡します。「ストームナイトさん、これ、あげる!」

球太郎:「ありがとよ」頭なでなでしながら、キャンディを受けとります。超越した事件の時、小さなストームナイトを同じようになでなでしたことを懐かしく思い出します。球太郎はそれでいいんですが、プレイヤーは思い切り動揺しますよ! まさか・・・メルモっ!?(*8

GM:かもしれません(笑)。そして、いい面構えの男の隣にいた、細面で顔色の悪い男が、あなたの肩を掴みます。「おい、ストームナイトと言ったな! 俺はポール。兄貴たちが捕まって、『ここじゃないランス』の神の救護院に連れて行かれちまった。頼む! 兄貴たちを助けてくれ!」

マルセル:「他に難を逃れた者は? どれだけの人員を動かせる?」

GM:メールを受け取り、この場所を探し当てたマルセルが、ポールに問います。「あ・・・声を掛ければ、戦える奴が、それなりに」

球太郎:ポールの肩を掴み返し、「ありがとう! すまないけど、たのんます」瞳を燃やしたまま、力強く依頼します。「声を掛けられる限りの仲間に、伝えてください。今から、通りすがりのストームナイトが神の救護院に殴り込みをかける。ポールの兄貴たち以外にも捕まった人がいるなら全員助ける。無理にとは言わない、ついてきたいヤツ、ついてこれる人は是非、手を貸してほしい、と」
 

 あたふたと駆け出すポールの背を見送り、球太郎はポリポリと頭をかく。
「何か、大事(おおごと)にしちまいまして・・・すんません」
 

ディアン:「(首を振って)球太郎がやったことは、すごいことだ。立ち上がる勇気を、みんなに思い出させた。オレも、オレたちの姿を見て、みんなが希望を取り戻してくれたら、と思って戦っている」

球太郎:「あっ、ありがとうございます!」自分の考えは間違ってなかった、ディ様たち偉大な先達と同じ道を歩いてるんだ、と自信を深めます。

ナオミ:「ねえ野原くん。ニッポンだと、魂の抜けた人間って表現は、無気力、無感動の言い換えとして使うけど、貴方が助けようとしている100人は、多分そういう意味じゃなくて、死体みたいに寝てるのよね。どうやって連れ出す気? いくら『殴り込みをかけ』ても、中の人が逃げられない状態にあったら、無意味だわ」

球太郎:「それはですね」とメモリーカードを出して、「マルセル先生が、このメモリを使って、何やら難しいこと(〈サイバーデッキ操作〉のこと)をすれば、みんな目が覚めるって、依頼主が言ってたっす!」

マルセル:「メモリ、だと?」

球太郎:「はい、先生。先生が持ってる魂のチップを、このメモリに入ってるパスコードでアクティベート(活性化)するそうです!」

GM:!

球太郎:およそ自分からは出てこなさそうな言葉を、棒読みで一気に吐き出します。「マルセル先生は技術者じゃないから、アクティベートのことを知らないだろう、とか芹奈さん言ってたんで、これだけは伝えなきゃと思って、丸暗記してたんすよ」ということで、リプレイにあった依頼文(*9)をそのまま聞いた設定にしてみました(笑)。

GM:やられた! お見事です。最初の芹奈さんからの依頼の部分に、「100人の魂が入ったメモリ」と書いてしまったので、細かいことすっ飛ばした(結果的に嘘をついた)からと言って彼女に謝らせるつもりでした。事情を知ってくれているなら話が早い。

球太郎:いや、細かいこと言ってもわからないだろうから、依頼を要約する形で「つまり、これに100人の魂が入ってるみたいなもんよ、オーケー?」みたいに言ってくれたのだ、と解釈しますよ。なお、球太郎は過去の出来事から、科学者の言葉を、意味はわからなくても大事にする傾向があります。

GM:芹奈さんビジネスの時は堅いから、『つまり、これに100人の魂が入っているようなものだと考えてください』かな。

マルセル:「そうか、パスコードか! 迂闊だった。完全に失念していた。野原・・・感謝する」

GM:マルセルは額に手を当てて上を向きます。彼が動揺を見せるのは初めてのことです。

球太郎:「よ、良かった! 丸暗記した甲斐がありました! そういえば芹奈さん、これはあたしたちのしょくざいなの、なんて言ってたっけ。何食べるのかな(食材)とか、宿題と聞き間違えたかな、とか思ったけど、マルセル先生なら意味わかるかなと思って、そん時は聞き流したけど・・・」

マルセル:「芹奈は罪を背負ってなどいない。これは、俺自身の、贖罪だ」

GM:あれ? マルセル先生、芹奈さんのことを話す時、普段と雰囲気違うな。でも芹奈さんってマキシム兄貴の奥さんだよな。と、不思議に思ってもいいです(笑)。

球太郎:んっ? となりますが、そういうこともあるだろう、と納得します。片想い自体は、思春期以来ずっと慣れ親しんだ感情だし、球団では恋の鞘当てはしょっちゅうで、負けた男の大半は、想いを胸に秘めて潔く想い人と友を祝福する。そんな気持ちのいい連中を見てきた球太郎は、先生の気持ちが痛いほどわかるし、そんな先生を身近に感じるのでした。

ディアン:「オレも、ひとつ、気になった。ポールが『ここではないランス』と言った。どういう意味だろう?」

マルセル:「(キーボードを叩きつつ)パリの北に、もうひとつランス(Lens)という町がある。特に目立ったシンボルはない町だが・・・いや、違った。近年、ルーブル美術館別館(Louvre-Lens)が建てられ、ドラクロワの絵画『民衆を導く自由の女神』も、そこにあるらしい」

ディアン:「新しい建物・・・。そこが、神の救護院かもしれない」

GM:ディアンが静かな怒りのオーラをたたえているのが、あなたにも見えた気がします。

 
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