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TORGプレイレポート

『I Have No Mouth, and I Must Scream』

(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)

 

第二幕

 
シーン1

 私たちは、ジャックインした場所、フランス国内のサーバールームで目覚めた。
 気分は最悪だった。警戒していた筈なのに、何故こんなことが起きたのか、理解できなかった。
 いや、フィクサーが裏切ったという現実を、認めたくなかった。
 ひとつ明らかなのは、私たちがとんでもない災厄を現実世界に解き放ってしまった、という事実だった。
 

 神崎さんは、あれを放置するわけにはいかない、見つけ出して倒そう、と言った。
 私も基本的には同意見だった。サイバースペースを移動し、データを食い潰す怪物。ゴッドネットの地獄の底に繋がれていたのだから、サイバー教会にも手に負えない代物に違いない。仮にもストームナイトを名乗っている以上、不始末の責任はきちんと取らなくてはならない。

 同時に私は、フィクサーと連絡を取り、彼女に説明を求めようと思っていた。
 嘘にも裏切りにも慣れている筈の私を完璧に欺いた彼女は、一体何者なのだろう。

 フリオさんがエスプレッソを淹れて戻ってきた。場の空気が少し和らいだ。
 因みに、私がかなり年上の男性である彼のことをファーストネームで呼ぶのは、ゴッドネットの中で「セニョール・アルジェント」と呼び掛けたところ、「僕のことは、フリオで結構」と返されたからだ。
 

「・・・繋がったぞ」
 ムッシュー・バルボーが、着信拒否を無視して、フィクサーを呼び出した。
「ここまで来て何も説明なしとは、筋が通らないよな?」
 凄みのある声だった。私は彼の隣に立って、デッキを覗き込んだ。まるでその様子が見えているかのように、フィクサーが言った。
『あら芹奈。お目覚めの気分はいかが?』

 何かが切れた。気がつくと私は、体面を取り繕うことを忘れて言い返していた。
「・・・貴女に名前で呼ばれる筋合いはないわ」

 重要な部分を意図的に隠して、彼女が私たちに汚れ仕事をさせたことが許せなかった。そして、彼女にその尻拭いをする気が全くないことも。
「私はもう、貴女のためには動きません。あの怪物をどうにかするためだけに動きます」
 

「事態を収拾するために、知っていることは何でも話せ」
「セニョリータ。女の嘘は装飾品と言われるが、仕事に関しては、嘘はつかないでほしいな」
 ムッシュー・バルボーとは対照的な、フリオさんのおどけたような言葉に、フィクサーは軽く笑って、3つの質問に答えると言った。

・地獄から誰を助けたかったのか。
 彼女の答えは、『レイ・ハーソン』。アメリカCIAの工作員。

・お前は何者だ。お前はストームナイトか?
『勿論よ』と彼女は答えた。その口調には、真実味が全くなかった。
 神崎さんがため息をついた。
「悪いけど、あんたの今の言葉は信じられない。俺の仕事はここまでだ。けど、あの怪物に対しての、けじめはつけるつもりだ」

・何故、レイ・ハーソンを助けたかったのか。
『彼が、サイバー教皇領の暗部を知る唯一の地球人だからよ』
 フリオさんが苦笑いした。
「セニョリータは人を騙すのが巧いな。肝心なところが抜けている気がするよ」
 

『これでいいかしら? 私からも、ひとつ、お知らせがあるの。・・・通報したから』

 気がつくと、私たちのいる建物は、教会警察に完全に包囲されていた。
「そこまで正面切って裏切ってくれると、逆にこちらも割り切れる」
『でしょ? 曖昧なのは嫌われると思って』
 ムッシュー・バルボーの義眼が鈍く光った。
「神のご加護を」
 

 轟音、閃光、爆発。教会警察の一斉攻撃が始まった。

 ムッシュー・バルボーが私の手を握った。
「芹奈。お前を必ず、愛する旦那の元へ帰してやる。この手を離すな」

 言うなり私たちは、決死の覚悟で外へと駆け出した。
 

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