Eternal Smile > I Have No Mouth, and I Must Scream 『I Have No Mouth, and I Must Scream』(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ) 第二幕 窮地を脱した後、私たちは、ニッポンへ向かった。 CIA工作員、レイ・ハーソンは、かつてニッポン人女性と婚姻関係にあった。 さらに、怪物が興味を示していたブラウザゲーム『ストこれ〜ストームナイト・これくしょん』のマスコットキャラクターは、「本音エリス(ほんね・えりす)」という名で、実は原エリスが演じているらしい。 さらにさらに、レイ・ハーソンはカリーナという女スパイとコンビを組んでフランス入りしており、2人とも以降の消息は不明である。 嫌な想像しか浮かばない。あの怪物の中にはレイ・ハーソンが取り込まれていて、彼=怪物は、娘のエリスを求めてニッポンのサイバー空間へジャンプしたのではないだろうか。 エリスに、「怪物があなたを狙っている」と警告を発しなくてはならない。 いいえ、ニッポンならば不可能も可能になる。金の力があれば。 私は、以前のビジネスでお世話になった、嵐王寺財閥の若き総帥、勇人さんに連絡を取った。勇人さんもストームナイトなので、「ゴッドネットの地獄から逃げた怪物が原エリスを狙っている」なんて突拍子もない話を、とりあえず信じてくれた。 私たちは勇人さんに、「我々はサイバー犯罪の専門家である」「原エリスに危害を加えようとするストーカーの存在を知り、ボディガードをするために来た」という設定で、エリスと話をする場をセッティングしてもらえるよう頼んだ。4人で知恵を出し合って考えた、会心の設定だ。 原エリスは、マネージャーの女性と一緒にやって来た。マネージャーの名刺には、「大原節子(おおはら・せつこ)」と書いてあった。 エリスは私たちの言葉を全く疑わなかった。でもまだ、半分しか対策は終わっていない。 ムッシュー・バルボーは、使い慣れたサイバーデッキを無理矢理ニッポンのネットワークへ繋ぎ、非合法な情報収集を行おうとして、突然、動きを止めた。がつん、と鈍い音がして、机に頭がもたれかかった。 「ちょっと・・・しっかりして?・・・誰か! 誰か来て! マルセルがっ!」 神崎さんとフリオさんが飛んできた。神崎さんが彼の上半身を起こし、フリオさんが、焦点の定まらない瞳の前にサイバーデッキをかざした。 「これは、きみのものだ」 マルセルの義眼に光が戻った。彼は別人のように力強くサイバーデッキに指を走らせ、わずかな手掛かりから、重要な真実にたどり着いた。 のだけど、私たちはそれをすぐには教えてもらえなかった。 (→NEXT) "Eternal Smile" Since 2002.02.02 E-mail:charmy_s@mac.com |