Eternal Smile > I Have No Mouth, and I Must Scream 『I Have No Mouth, and I Must Scream』(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ) 第三幕 私は彼女に復讐したい。 そう思っていた。 マルセルが私たちを呼び出した。 そこには、大原節子の名前があった。 「どういうことだ? 原エリスのマネージャーが、フィクサーだって言うのか?」 カリーナという女スパイのことは、私も気になっていた。フランスで消息を絶ったという彼女が、もし生きていればだけど、一番の容疑者と言っても過言ではないと思う。レイ・ハーソンとも関わりが深そうだし。 私たちの疑問は、マルセルの次の一言で綺麗に氷解した。 「俺は、サイバー教会に弓引く背教者だ。カリーナが何故こうまでしてレイ・ハーソンを助けたかったのか。その事情によっては、芹奈、お前の復讐を俺が止めることになる」 私は決心した。この3人にならば、私のことを少し話してもいいと思った。 私は、ニッポンでは死んだ人間とされている。昔私は、とあるビジネスで捨て駒にされて、彼に命を救われ、彼と結ばれた。アイルに亡命し市民権を得て、今はロンドンで暮らしている。 3人は黙って私の話を聞いていた。 彼女の潜伏先は、探せばすぐに見つかった。話をつけるなら今夜だ。明日、原エリスは「ストこれ」に関する重大発表を行うと言っていた。マスコミの注目を集めるそのタイミングで、怪物やカリーナが何らかのアクションを起こす可能性が高い。 マルセルと私が出掛けようとした、その時だった。 「俺は牧野さんに訊きたいな。今、幸せ?」 不意打ちだった。私は思わず神崎さんに「えっ?」と訊き返し、頭の中で2つの人生・・・企業のために尽くしていた頃と、彼に助けられた後・・・について考え、たっぷり10秒ほど経ってから、小さくうなずいた。心なしか頬も赤かったと思う。 「俺はイベント会場を見張って一晩過ごすことにするよ。さっきから妖刀がうなってるんだ。嫌な予感がする」 因みに、フリオさんは、原エリスのところへ行くとのことだった。 (→NEXT) "Eternal Smile" Since 2002.02.02 E-mail:charmy_s@mac.com |