Eternal Smile > I Have No Mouth, and I Must Scream
 

 
TORGプレイレポート

『I Have No Mouth, and I Must Scream』

(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)

 

第三幕

 
※このプレイレポートは、芹奈のモノローグという体裁を取っています。本来ならば、彼女が見ていないこと(登場していないシーン)は書けないはずです。しかし、ストーリーの重要な要素が語られていますし、“ロマンス”カードを引いたフリオが、真摯にエリスと向き合う姿がとても素敵なので、特別に三人称でお送りします。

 
シーン2

 原エリスは、翌日のイベントに向けて、深夜まで歌とダンスのレッスンに励んでいた。
 フリオが「ブラボー!」と拍手すると、彼女はぱっと顔を輝かせて彼に駆け寄った。

 フリオからの賞賛の声に、謙遜しながらも、彼女は喜びを隠さなかった。
「私、本物のアイドルになるのが夢なんです。・・・そして、私と母を捨てた、あの父を見返してやるんです」

 エリスは続けて語った。ゆきずりの恋愛というやつだろうけど、父が母に会いに来てくれることはなかった。それなのに、母は私が父を悪く言うことを許さなかった、と。
「私は父に復讐したいんです」
 

「セニョリータ。男と女の間には、子どもにはわからない、複雑なものがあるんだよ」
「あー、またそうやって子ども扱いする!」
 頬を膨らますエリス。その眼差しが、懐かしむような、慈しむようなものに変わった。
「おじさまが、お父さんだったらいいのにな」
「!! お父さん。お父さんかー・・・」

 フリオが衝撃を受けているのは、発言の中身よりも、齢35で「お父さん」と呼ばれたことにだ。35歳なら15歳前後の娘がいてもおかしくはないが、男心はなかなか複雑なようだ。

 肩を落としたフリオを見て、エリスは慌てて謝り、お兄さんと言い直した。そして、
「別に全然、恋人だって構わないんですけどね」
「セニョリータ。ひとつだけ教えておいてあげよう。イタリア人の男に、そういうことを言っちゃいけないよ。彼らは本気にするからね」
「本気にしてくれてもいいんですけど」
 

 突然のエリスの告白を、フリオは、笑い飛ばすでも聞き流すでもなく、真っ直ぐ受けとめた。
 しかし答えることはしない。代わりに彼はこう言った。

「きみが本物になりたいのなら、復讐は忘れることだ」

 明日の晴れ舞台を楽しみにしているよ。
 きみは何も心配しなくていい。きみの夢は、僕らが守る。
 そう言い残してフリオは帰っていった。後ろ姿に向けて、エリスは小さくつぶやいた。

「おじさま。何か私に、隠していませんか?」
 

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