Eternal Smile > I Have No Mouth, and I Must Scream
 

 
TORGプレイレポート

『I Have No Mouth, and I Must Scream』

(おれには口がない、それでもおれは叫ぶ)

 

第四幕

 
 カリーナは言った。
「あの人は、可能性を食らうベヒモスになったんだから」

 ゴッドネットを飛び出し、現実世界へ出現する能力を得た怪物を、カリーナは『ベヒモス』と呼んだ。彼女は、原エリスを餌にしてベヒモスを操り、世界を破滅へ導こうとしている。それがどんなに恐ろしいことか、彼女にも解っているはずだ。きっと彼女は、あの狭い部屋の中で、 一晩まんじりともせずに過ごすのだろう。

 それでも彼女は復讐を望む。それだけ彼女の執念は強い。
 なら、私は・・・?

 神崎さんは言った。
「俺のやることは変わらないよ。ベヒモスを見つけ出して、奴を斬る」
 フリオさんは言った。
「女性が泣くのは、見たくないな」

 昨夜、私は、彼女の暴走を止められないことが悔しくて泣いた。
 マルセルは言った。
「止められなくても、終わらせることはできる」

 終わらせる・・・。
 私がカリーナに銃口を向けて引き金を引けば、確かに彼女の復讐は未遂に終わる。
 でも、本当にそれでいいの?

 
シーン1

 ゴッドネットで誕生したベヒモスは、大量のデータを文字通り「食い潰し」ながら、ネットワークを渡り歩いたようだ。それはサイバー教会やニッポンにとって、宝の山に等しい。ベヒモスの顕現(現実世界への出現)に合わせて、教会警察やニンジャの襲撃があることは容易に予想できた。
 また、データうんぬんを抜きにしても、可能性を「食い潰す」怪物というのは、兵器として使い出がある。どこの世界が横槍を入れてきても不思議はない。

 神崎さんとマルセルは、下調べ済みのイベント会場で警戒にあたった。フリオさんはエリスを見守る位置に立った。私は会場全体が俯瞰できる位置、かつ自分が矢面には立たない位置に、ノートPCを持ち込んで座った。

 イベントの冒頭で、原エリスが「ストこれ」のマスコットキャラのプレイヤーだったことと、今日からサービスが世界展開することが発表された。

 その時、多数配置されたディスプレイのひとつから、ベヒモスが顕現した。
 

 空から黒い影が降りた。どこぞの企業忍者だ。神崎さんは脇差を抜き、6人もの手練れを相手に大立ち回りを始めた。やがてその手が妖刀にかかり、彼は迷わず妖刀を抜き放った。
 一瞬の後、黒い影は全て地面に転がっていた。私の目では何が起きたのかさっぱり判らなかった。神崎さんはそのまま、ベヒモスに走り寄った。
 

 揃いの赤いコートを身に着けた、サイバー教会の異端審問官が、靴音高らかに現れた。マルセルが無言でその進行を妨げる位置に立った。
「真の神よ。この愚かなる罪人を、まだ、見ていてくれるのなら、力を」
「何だこいつ? そんな旧式のサイバーウェアで、我らに刃向うつもりか?」
「・・・まさか、俺の顔を知らん奴がいたとはな」
 すさまじい銃撃。けれどもマルセルは、微動だにせず立っていた。

「ひとつ教えておいてやる。貴様らの信じる神は、ここにはいない」
 

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