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TORGリプレイ

『地球の長い午後』

 

第二幕


シーン4 Tender Lie
 

GM:メイラに関して調べる際、どういう方法を取りますか? 例えば、会話をすることによって、情報を引き出そうとする。周辺情報から、推測する。あるいは、他人に訊く。というのがありますね。素直にキャラクター同士で会話するのもアリですし、〈発見〉や〈説得〉で、一度に判定してしまうのもアリです。

リン:うーん、何訊けばいいんだろう?

GM:多分、彼女もそれは同じでしょうね。「私、何訊かれるんだろう」って顔してるので(笑)。ではそうすると、彼女が言います。「なあ、リン」

リン:「はい」

GM:「さっき無線の向こうにいたのは、私の声だったな。あれは、本物の私、なのか?」

リン:「おそらくは」

GM:「だがしかし、私も、あなたのことを覚えているし、私は一体何なんだ?」と言って、真顔で思索に入っています。

大悟:きっと生き別れの双子か三つ子に違いない!(笑)

マッコイ:単純に考えればクローン。

リン:クローンって、記憶とかそういうのも、持ってるものなのかな?

大悟:それは場合によるでしょう。ニッポンテックのハイロードの、金輪龍一は、6人のクローンを持ってて、あれは、意識と記憶を共有してるし。

マッコイ:要するに、クローンの出来次第。

リン:じゃあ、あり得るんだ。

GM:あり得ます。ただ、魔法の世界のあなたからすると、何らかの魔法で、分身させた、くらいの認識かもしれません。

リン:うん、まあ、そうだろうなあ。

GM:要するに、あなたは、異世界の技術を使えば可能かもしれない、というのは知っている、といった程度ですね。しばらくすると、逆に、彼女が訊いてきます。「なあ。本当に、あの男(マッコイを指す)を、信用していいのか?」

マッコイ:フゥーッ!(タバコの煙を吐き出す)(笑)

リン:「彼は、充分信用できる人物なので、安心してください」

GM:「だが、私の記憶の中で、最後に残っているのは、あの男と同じ顔の男に襲われた記憶。それしか残っていないんだ」

リン:「さっき無線に出た彼女も、あなたにそっくりな顔をしているのだから、他に、同じ顔の人物がいるということも、考えられます」

GM:「そうか。確かに、それはあり得る。(溜息をついて)一体、何を信用していいのか解らない」

リン:・・・・・。

GM:「そういえば、モナリザという人物を知っているか? 私の頭の中に、私がハチ・メイラ=2であるという記憶と、モナリザであるという記憶が、同時にあるんだ。ただし、ハチ・メイラという人格の方が上位にいるらしく、モナリザというのは、記憶の片隅に残っている単語でしかないんだが」

大悟:では、別人格?

マッコイ:精神チップでも埋め込んだのかな。

リン:モナリザのことは知らないんですよね。

GM:あなたは知りません。・・・いや。皆さん、〈リアリティ〉で判定してください。これは運試しです。達成値12以上だったら、モナリザという人物を知っているかもしれません。

ディ:(コロコロ)惜しい、1足りなかった。

マッコイ:(コロコロ)低い。3だから、マイナス8。

大悟:うーん、たった17しかありません。

リン:12。ぎりぎり成功です。

GM:では成功した2人。モナリザというのは、そもそも、人間ではありません。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、絵のモデルになったと言われる女性。それを模して創られた、サイバー教皇領のネットエンティティの名前です。

マッコイ:ネットエンティティ?

GM:要するに、パリを防衛するために、優れたサイバー技術者がゴッドネットに放流した、ネット生命体です。基本的には、サイバー教皇領の天使とか、司祭とかを排除するための、自我があまりないプログラムだったんですが、それが徐々に人格をつけていった、という話を聞いたことがあります。

マッコイ:ほう。

GM:ある時、ベルナール・ジュネという。

ディ:う?!

GM:異端審問官の長がいるんですが、その人のトラップによって、まずモナリザのプログラマーがとっ捕まりました。モナリザ自身も、大暴れしたんですが、結局サイバー教会に捕獲され破壊されたらしいです。

ディ:ベルナール・ジュネって、マルセル(*14)の伯父さんだよね。

GM:はい、そうです。よく覚えてるなー。

大悟:となると、多分、破壊されたモナリザの、基本プログラムをベースとして、ハチ・メイラの次の予備、メイラ=3になる予定の義体に、それを移し替えたのが彼女じゃないか、ということが、自分で理解できるかどうか(笑)。

ディ:プレイヤーは理解できても、ナイル帝国の人間の理解を超えてますもんね、それ。

GM:〈手掛かり分析〉。

大悟:(コロコロ)10、振り足し。(コロコロ)12か。ここは“ヒーロー”を使っとく。(コロコロ)25。〈手掛かり分析〉で20、ってトコですかね。

GM:いいでしょう。あなたの推理は、ほぼ合っています。ただし、あれは義体ではありません。あれはデータです。

ディ:データ?

大悟:〈顕現〉で、姿を現してるだけか。

GM:はい。説明します。〈顕現〉というのはですね、現実世界に、電脳世界の生き物が、ひょいっと湧き出す、という現象です。このメイラあるいはモナリザは、本来ネット上にしかいない身体が、〈顕現〉技能によって実体化している、要するに、かりそめの肉体を持って現れている、生きたプログラムだ、ということが、2人には理解できました。それを他の2人に、あるいは本人に言うかどうかは自由です。

マッコイ:聞いても半分しか理解できねぇんだろうなー、こいつの技術アクシオムでは。

GM:いや、待ってくれ。あんたが一番技術アクシオム高いぞ。

大悟:喩えるならば、召喚魔法で、異界から生物を召喚してるようなもの。

ディ:召喚魔法で現れたのが、このメイラなんだね。

GM:2人は、彼女の身体の一部が、なんかさっきに比べて薄くなってないか? しかも、正確に言うと、ゆらぎがあって、薄い部分が時間によって移動してないか? という気がします。

大悟:ということは、あの棺桶型のサーバーは、‘天空’を、北極点に導くためだけじゃなく、それを複数台用意して、なおかつその中にネットエンティティを置くことによって、確実にテックサージを起こすための手段だった。

GM:・・・まぁ、プレイヤーが気づいたんで、いいでしょう。正解です。

ディ:確実にテックサージを起こす手段、というのは?

大悟:テックサージを起こすには、地球自体に、技術アクシオム26の物質を埋め込む必要があるんですよ。ジャン・マルローがハチ・メイラ=2にチップを埋め込まれたのと同じように。それをするための誘導路となるのが、モナリザというプログラム、プラス、サーバーなんですよ。

ディ:だとすると、北極点の周りに、サーバーが他にもあると考えられるから・・・。

マッコイ:各機を破壊していく。

大悟:もしくはネットエンティティを解放すれば。

ディ:(ひらめく)あ! ネットエンティティじゃないの? メイラが見た、ゴッドネットの中でハインドに乗って攻撃したマッコイって。

マッコイ:ほう。

大悟:それを確かめるためにも、サーバーのところに行く必要性が出てきますね。うまくすると、‘天空’が、突き刺さっていることを維持できなくなる可能性があります。

ディ:何だっけ、砂を取っていって。

GM:棒倒し?(笑)

大悟:そうそう。それと一緒。要するに、棒の周りの砂が、サーバーなんですよ。今、そのうちのひとつがないから、少しずつそこから棒が傾いてく状況なんで、砂がなくなっちゃえば、エベンスロー自体に、ポシビリティ的にダメージを与えられる筈です。これ、推理間違ってますか?

GM:7割合ってる。3割は違う。で、今、プレイヤー同士は相談してますけど、この情報を、キャラクターには言いますか、言いませんか?

ディ:彼女がエンティティだということを、言うか言わないか。

GM:要点はそこです。

大悟:何を言ってるんですか! ナイルが隠し事するわけないでしょう。頭で思ったことがそのまんま口からバラバラ出てきますよ。

マッコイ:ナイルヒーローとアイルの司祭が隠し事できるわけがない。

GM:いや、黙っていることは、実は可能。ホスピタリティの問題なので、相手が傷つくと思ったら、黙っていることは、不可能ではないです。

ディ:沈黙は嘘と同じじゃないのかな?

GM:黙っていることで、彼女に対して、何か悪影響があるならば、それは言わなきゃダメですけど、影響があるかは判らない状況なので、僕は問題ないと判断します。逆に言うと、リンが、モナリザあるいはメイラに対して、事実を告げるか否か。「あなた実は、この世界に存在しないのよ」って。

リン:それはちょっと言えないなー。

ディ:言えないね。確かに。

GM:ここにいるのは、「ハチ・メイラ=2という人物の、過去のどこかの時点での情報を基に作られたプログラム」に、「モナリザという、ネット上を巡回しているプログラム」を加えた、混合体なので、実はこれはハチ・メイラ=2でもモナリザでもなくて、別のひとつのネット生命体と見る方が正しいです。アイル人のリンからすると、これは、メイラの魂と、モナリザの魂を掛け合わせて創った、ゴーレムみたいなもの、というのが一番近いでしょう。

リン:うーん、私はそういう風に判断するだろうけど、他の人の方が、技術的なものには詳しいだろうから、こっそり相談すると思う。「私はこう思うけど、コアアース的には、どういうことなのかな?」って。

GM:はいはい。ではその間、誰かがメイラ、あるいはモナリザ、正確に言うと、この名前のない彼女の相手をしてください。ヘリの中なんで、大声で喋ると聞こえますからね。

ディ:ならオレが、彼女に対して、マッコイはそんなことをするヤツじゃないというのを、とうとうと説いています。

GM:「いや、だがあの時あの男は、でもそれを言ったら私の方も・・・」(困惑)

ディ:「オレは、そっくりなストームナイト(*15)を2人知っている。ひとりは髪をツンツンに立てた、ニッポンテックの二挺拳銃の男で、もうひとりは、サイバー教皇領出身だ」

GM:「何か、共通点があるのか?」

ディ:「奇抜な格好をしていた」

大悟:それだけかい!

GM:ぽかーんとしている。

ディ:「だから、共通点がなくても、よく似ている人間はいるんだ」

大悟:ディの肩をぽんぽんと叩いて、「難しいことを言わなくていい。こういう時は一言でいいんだ。世の中にはそっくりな人間が3人いてな!」

GM:うわ、ベタベタだー!(笑)では相談どうぞ。

リン:はい。かくかくしかじか。

マッコイ:うーーーん。しかしそうなると、プログラム同士を、誰がそもそも組み合わせたんだってところに疑問がいくワケだが。少なくともハチ・メイラ本人がそんなことをしたとは思えんし。

大悟:サイバー教皇領のリアリティ持ってるキャラクターがいると、かなり話違うんですけどね。

GM:いないのを見越して、今日はこのシナリオを用意してきてる。

マッコイ:現象として何が起きたのかは解ったんだが、点と点ばっかりで線にならん。もう少し情報が欲しいなぁ。

GM:ではリンは、モナリザ、あるいはメイラに対して、今の時点で何か言いますか、言いませんか?

リン:薄くなってるんですよね?

GM:えーとね、薄くなってる部分が、たまにあるぐらいで、これは現在、リアリティが不安定だから、という予想がつきます。逆に言うと、ゴッドネットが完全にぴたっと張り巡らされると、現実世界にいるのも、ネットにいるのも、一緒になるんで、むしろ身体がはっきりします。

リン:現時点では、言いません。

GM:了解です。因みに、モナリザには、〈顕現〉技能があります。何かというと、モナリザに、一対多行動で〈顕現〉技能を使ってもらうことによって、あなた方は、ハインドごと、ゴッドネットにいる扱いにできます。

大悟:それだと、グリッドからグリッドに移動がものすごく楽になりますね。

ディ:ただ、そのためには、モナリザに事実を告げて、〈説得〉して、動いてもらう必要がありそうですけど。

GM:はい、正解。

リン:ああ、なるほどー。

大悟:えー、私の方を、期待したような目で見ないように(笑)。リンちゃんがメインで彼女に話をすると決めた以上、私、口出せないんで。

GM:ではお次、マッコイいきましょうか。

 
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