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TORG往復書簡リプレイ

『MOMO Can Survive』

第一幕

 
シーン2(承前)

 
GM:ある日、あなたの携帯電話に、ストームギルド(*6)というドメイン名から、一通の求人メールが届きます。
 

『求む! ストームナイト
 リビングランド縦断、フィラデルフィアへ補給物資を運搬
 USSチャレンジャー号 船長メアリィ・マーシ』
 

GM:USSチャレンジャー号は、アメリカ南東部ノースカロライナ州の港から、デラウェア川を遡り、危険を冒して補給物資を運んでいる、アメリカ海軍の現役の艦艇です。

球太郎:ふむふむ。

GM:物資が届かなければ、フィラデルフィアはハードポイントとしての機能を保つことができず、陥落して多くの犠牲者を出すことになるでしょう。そのため、若き女船長メアリィ・マーシは、優秀な船員を常に探しています。

球太郎:「USSチャレンジャー号、か」

GM:今は省力化が進み、20名弱の乗員で、70名ほどの兵員を運べる船を動かせるそうです。因みにこの航海では、フィラデルフィアから脱出する避難民を乗せて帰るのが通例になっています(行きは物資を届け、帰りは人を乗せる)。

球太郎:ハードポイントに物資を輸送し、帰りに避難民を送り届ける。一挙両得の作戦。ストームナイトとしての責任感に火が灯ります。
 

 「この一手が戦況を変える・・・ですよね、先生」
 

球太郎:パリでのマルセル先生(*7)の言葉を思いだし、この任務もまた、積み重ねるべき一手だ、と決意を新たにします。しかも、リビングランドでモモの手掛かりを探せるんだから、一石三鳥!
 

 ロンドン、パリ、ニッポンと、様々な場所を渡り歩いて、残念ながら成果なし。
 しかも、守ってやるどころか、彼女の類い稀な記憶力と知恵、
 そして優しさに助けられてばかりと来たもんだ。

 

球太郎:「モモの手掛かり、なかなか見つからなくてごめんな。今度こそ、モモがうちに帰れるように、俺、頑張るから!」せめて力強く、約束の言葉をかけます。

モモ:「私は、球太郎さんを見ていられれば、それだけで幸せです」

球太郎:「なん言いおーとね」つい訛りが出ながら、モモの頭をくしゃっと撫でます。

モモ:「!」

球太郎:「俺ばっかり見てたら三日で飽きるぞ」こんな下手な返ししかできない自分にうんざりします。「それに・・・」
 

 モモが自分に抱いてくれている好意は、刷り込みなのではないか。
 

GM:・・・・・。

球太郎:もしそうであれば、自分は彼女の気持ちを、価値観を、不当に歪めていることになる。アクシデントによって刷り込まれた、そんな幸せではなく、彼女の記憶を取り戻して、彼女が抱いていた本当の幸せを取り戻さなければならない。
 

 (自分も、モモを見ていられれば、幸せだろうな)
 自分の中の、より素直でシンプルな気持ちには、必死で蓋をし、全力で目を逸らす。

 

球太郎:ところで、手掛かりを探すための時間は、果たしてどのくらい取れるんだろう? 本件の乗船は、片道でしょうか、往復でしょうか。往復の場合、停泊期間、もしくは自由行動できる期間はどのくらいありますか?

GM:任務は往復ですが、シナリオは往路だけで終わる予定です。フィラデルフィアを発つまでに二、三日、時間があると聞いています。

球太郎:シナリオは往路だけ。これは、船上で何かが起こると見ました!

GM:さて、どうでしょう(笑)。そんなことを考えながら、港に向かって歩いていると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできます。
 

「おおーい! 球太郎、ここやここや!」
 スタジャンにガウチョパンツにスニーカーという、ラフなスタイルの神野海優(*8)が、
 球太郎に気づいて大きく手を振る。
 

球太郎:「海優さんっ!?」めちゃくちゃびっくりします。「どうしてこんなところにっ!?」モモを連れて近づきます。年下の筈なのに、何故か彼女には頭が上がらず、背筋は我知らずピンとなってしまうのは、相変わらずです。

GM/海優:「ええ腕のストームナイトを知っとるって、ウチがストームギルドに売り込んだんや。ウチは球太郎の代理人(ルビ:エージェント)やからな!」

GM:海優は悪びれもせずに言います。大方、紹介料と称して、球太郎に払われる報酬のいくばくかをポケットに入れるつもりなのでしょう。

球太郎:金にまつわる云々のことは全く頭をよぎらず、その言葉に全面的に頷きます。「モモ、この人は神野海優さん。俺のエージェント・・・えーと、大変お世話になってる人だ」

GM/海優:「来てくれておおきに! って、おや? その娘は、カノジョさんかい?」

球太郎:「ち、違うって! ナイルで助けた子なんだ。記憶がないみたいで、モモって呼んでる」

GM/海優:「『これはこれは。少年も隅に置けないな』・・・所長やったら、こないな風に言うかもな」

球太郎:「いやいやいや、隅に置いといてくださいよ、って、所長に言うぞ俺は!?」こういう他愛もない馬鹿話のなかに、尊敬する所長(*9)を明るく偲ぶことに、何だかほっこりしたものを感じます。

モモ:「海優さん、はじめまして。球太郎さんが、いつもお世話になっています」

GM:ぺこり、と頭を下げたモモは、海優にカノジョかと訊かれた時、心なしか頬を染めたように見えました。

GM/海優:「似合いのカップルやないか」

モモ:「!」

球太郎:「ごっ、ごめん、モモ! 海優さん、何言ってんだろな、ははは! 突拍子もないこと言うけど、根はいい人なんだ、ははは」

モモ:「・・・・・」

球太郎:えーと、自分は、モモの反応を見て、「自分の彼女なんぞに間違われて、恥ずかしがっている」と、ネガティブな見方をしてます。よって、モモを何とかフォローしようと、まくし立てるが空回り。「勘弁してくれよー海優さん! 彼女恥ずかしがりやなんだから、そういう冗談は無しだって!」赤面しながら、ほとほと困ったように泣きつきます。

GM/海優:(こりゃあかん、という顔)

球太郎:とはいえ、エージェントとしての彼女には、絶大な信頼を置いています。「そ、それにしても、残りの手がかりはここだ! ってピンポイントの行き先の依頼を持ってきてくれるんだから、恐れ入ったよ。ホント、感謝する!」勿論偶然だろうけれど、それも含めて、この頼れる代理人のチカラなんだろうとさえ思います。

GM/海優:「ピンポイント? 何やそれ?」

球太郎:モモの来歴を探す今までの冒険と、これまで有力な成果がなかったことをかいつまんで話します。

GM/海優:「なるほどな」

球太郎:「そんなわけで、何か分かったら、教えてもらえると助かるよ」

GM:「りょーかいや。気ぃつけてな!」海優は敬礼に似たポーズをしてあなたたちを見送ります。

球太郎:その言葉に、心底安心し、信頼を新たにします。ただ、出発に際し、多くの言葉はいらないかな。シンプルに、大きな笑みで、「ありがとう。・・・行ってくる!」

 
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