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TORGリプレイ

『Pandora』

 

第一幕

 
シーン2 Pour Mon Chéri

 
 嵐王寺財閥の若き総帥、嵐王寺勇人にとって、牧野芹奈は、良きビジネスの相手である。
 芹奈は勇人に、「何かあればいつでもお力になります」と約束している。
 しかし、今回は勇人が力を貸す番だった。
 

GM:あなたは、芹奈の夫であるマキシムを捜して、ニッポンの芹奈の潜伏先へ連れてきてほしいと頼まれました。そして、2人は今、黒塗りの高級車の中にいます。車載テレビでは、また、ニュースが流れています。
 

 一方、宝条主任研究員は調査委員会の検証チームとは独立して検証実験を行う模様です。現在は準備段階で、作製を開始する時期、場所などについては、明らかにしていません。
 
 解説員に聞きます。
 
『検証チームが論文の手法で幹細胞を作製できなかった場合でも、科学的には「存在しない」と結論付けることはできません』
 
 それはどうしてですか?
 
『「ある」ことは証明できても、「ない」ことの証明は非常に難しいんですね。科研の幹部は「宝条氏が作製できなければ、ないとの結論になる」と話しています。科研が宝条氏の検証実験を急遽容認したのは、細胞が存在しないことを前提にした動きとの見方もあります』

 
勇人:まあ、線引きは必要でしょうね。悪魔の証明を行うことは困難ですが、かと言って、証明できないから実験を続けていいかというと、ずっと給料だけ支払うという不思議なことが発生するので。

マルセル:そもそも、ニッポンテックの科研って時点で、信憑性は推して知るべし。

神崎:間違いなく科研の中に裏切り者がいるんだよね。情報だけ持って、他んトコヘ行っちゃうよ。

勇人:因みに、テクノロジー的には、クローンは造れるんだけどね。

GM:はい。今、勇人がとても大事なことを言いました。ニッポンテックの技術アクシオムなら、クローンは実現可能*9)です。

神崎:ふーん。

勇人:ただ、一般化されている技術では全くないです。

GM:サイバー教皇領でも、理論上は可能なはずです。ただし、クローンを造るよりはむしろ、肉体を機械に置き換えて原罪をなくす、という方に向いているのが、サイバー教会の教義です。

勇人:じゃあ、隣のマキシムさんに、世間話っぽく、「理論上はできると聞いていますけど、どうなんでしょうね」

マキシム:「クローンはいるぞ。俺、斬ったぞ」

勇人:・・・・・。

GM:その通り。彼は、ニッポンテックのハイロード、No.3327のクローンのひとりをやっつけている経験者です。

マキシム:「お前、知らないのか?」

勇人:「知ってます知ってます。あの件ですよね。実際に、斬った人が言うんだから、間違いはないでしょう。でも、面白いですね。機会があれば、出資も考えなくはないんですが」

GM:と言っているうちに、車がマンションに到着します。

勇人:「ああ、マキシムさん、どうします? 途中で、花屋さんとかケーキ屋さんとか洋服屋さんとか、寄るルートは選べますけど、えーと、僕の言ってる意味、解りますか?(笑)世の中には貨幣というものがあって、そして、人に気持ちを届けるには、気持ちって目には見えませんから、何か、代わりの物を贈る、ということが発生するわけですね」

GM:これぞ、世界観ギャップ。

勇人:しばらく頑張った結果、結論は、「お花をもらって喜ばない人はいません」(笑)

マキシム:「そうか! 花。花。何がいいんだ? 花って」

勇人:「そのアドバイスをするために、店員というものがいて、お給料をもらってるんです」って言って、店員さんに、「これこれこういう感じで、彼の奥様にバラを贈りたいんですけど、適当に見繕ってください。10万円ぐらい」

GM:持ちきれねえ!

神崎:10万円なら、胡蝶蘭とか買えるよ。

勇人:じゃあ、手持ちはこのぐらいの花束で、あとは、お家などに届けるってことで。

マキシム:「嵐王寺、お前いい奴だなー!」

勇人:「本人の気持ちが一番大事ですからね? とりあえずこれを持って、何も言わずに、はい、って渡せばいいんですよ。解りましたか?」

マキシム:「そうか!」

マルセル:運転手、肩、震わせてますけど(笑)。何だこいつら。

勇人:よし。これで大丈夫なはずです。あとは、あなたが一騎打ちして、何とかしてください。フォローだけは僕がしますから。

GM:玄関のドアが開きます。

勇人:ほらほら、とりあえず入って。

マキシム:「芹奈。花だ」

GM:ぷはっはっはっは!(笑)

マルセル:セリナ。ディス・イズ・ア・フラワー。これは花です。中学1年生レベルです。

GM/芹奈:「見れば判るけど。・・・ありがと、嵐王寺総帥」

マキシム:全部見透かされた!(笑)

勇人:ニコッと笑って、「旦那さんに頼まれまして」

GM/芹奈:「そうだと思いましたわ」

勇人:「お熱いことです。いつかは僕もこんな暖かい家庭を築きたいな」

GM/芹奈:「中へどうぞ。夫を見つけてくださったこと、心より感謝いたします」

勇人:「ええ、まあ大変でした(遠い目)」

マキシム:「嵐王寺のやつがさ、俺が戦ってる時に、いきなり声をかけてくるんだよ、ビックリした」

勇人:「だって、ねえ。戦いが終わったら、どこかへ行きそうだったから」(笑)

 
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