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TORG往復書簡リプレイ

『Pandora's Box』

第三幕

 
シーン2

 
GM:3人が駆け降りた先の地下には、壁一面ガラス張りの大部屋、美術品収蔵庫(イメージ)があります。中央に自動ドアがひとつ。

ナオミ:「野原くん!」

GM:ナオミが指差した先、収蔵庫の中には、SF映画のような光景が広がっています。沢山の人間が生命維持装置に繋がれて眠っています。

球太郎:うわっ!

GM:マルセルは躊躇なく中央の自動ドアを開け、生命維持装置のコンソールに向かいます。確認ですが、『民衆を導く自由の女神』を持っているのは誰ですか?

球太郎:可能なら、ナオミさんに持ってもらいたい!「ナオミさん、この絵をお願いします。絵もナオミさんも、俺が守りますから!」

GM:あなたの言葉とほぼ同時に、隔壁が閉まるよりも俊足だったドローン・ウルフが3匹、階段を一足飛びに降りてきます。

球太郎:ナオミさんは奥に、先生はコンソールに向かったのを確認し、2人に背を向けて、襲い来るドローン・ウルフたちに相対します!

GM:位置関係をもう一度整理しますと、隔壁(シャッター)は下り階段の途中にあります。階段を降りきれば、収蔵庫の入口まではまっすぐ廊下を進むだけです。ナオミと収蔵庫の入口を背にかばい、走ってくるウルフを迎え撃つ、という感じですね。
 

―球太郎のメール―

 鮫のような笑みを浮かべ、コンソールに向かうマルセル先生を見て、
 何故か、知らない歌の一節が、ふっと、球太郎の心に舞い降りた。
 それは、単なる気まぐれか、
 それとも、ここではないどこか(ルビ:パラレルワールド)と、世界が一瞬交錯したからか。
 球太郎は激励の言葉とともに、そのフレーズをそのまま、背中越しの仲間に手渡した。

「やっちゃってください、マルセル先生!『全てに中指を立てろ(*13)!!』」
 

GM:おおっ!

球太郎:そう言って、“偉業”カードを卓に叩きつけます!! 勿論、これは気分的な問題であり、実際のセッションならば、叩きつける演技をした後、隣のマルセル先生のプレイヤーさんに丁寧に手渡します。そして先生、“アドレナリン”をください(笑)。

マルセル:「了解した」

球太郎:見せ場宣言! ドローン・ウルフたちに複数回攻撃! “ヒーロー”使用! “アドレナリン”使用!
 

―球太郎のメール―

 今回は、一撃にすべてをかけるホームランバッティングではない。
 複数に確実にヒットを当てるフォームに切り替える。
 今回の四番打者は、先生だから!
 自分の仕事は、逆転満塁ホームランのお膳立てをすることだから!

 後ろにナオミさんの存在を感じていると、
 マネージャーにお熱を上げていたチームメイトの気持ちが、わかる。
 想う人の視線を受けて立つバッターボックスは、こんなにも熱い場所だったのだ。
 心は燃え上がるが、頭は冷静に、三匹の急所を見据える。
 そして、バットを短く持ち、迷いなく鋭い、切り裂くようなスイングを三回。

 一塁打!
 二塁打!
 三塁打!

 三匹を一撃ずつで叩きのめし、動かなくなったのを確認してなお、
 四番打者と女神を背に、新手が来ないか警戒して油断なく立ち続ける球太郎である。
 

GM:ひとつ質問。見せ場宣言は、手札の任意の枚数を一気に場札にする(使用可能にする)ルールです。使わなかったカードは、ラウンドの最後に没収されてしまいます。だから今回は、“ヒーロー”と“偉業”(“アドレナリン”との交換用)だけを出して、“モノローグ”と“敵方失敗”は手札に残す感じかな。それとも、没収のリスクはあるけど、不測の事態に備えて他のカードも出す?

球太郎:慎重に確認します。今のラウンドは、ヒーロー先攻で、ウルフを叩きのめして、球太郎の手番が終わったところでしょうか。“敵方失敗”や“モノローグ”を出しておけば、後攻で何かあった時に、それを使える。しかし、ラウンドが終わったらカードは没収される。出さないでおけば、後攻で何かあってもカードは使えない。次以降のラウンドでは、通常どおり1ラウンド1枚ずつ使える。

GM:その通りです。

球太郎:であれば、今回の見せ場宣言では、“ヒーロー”、“偉業”、“モノローグ”を場札に出します。“偉業”と交換で、“アドレナリン”をもらいます。“敵方失敗”は、手札に残します。この後何が起こるのか・・・気になりすぎます!!

GM:ヒーロー側終了。収蔵庫の中から、急を告げるマルセルの声がします。

マルセル:「野原っ!」

球太郎:先生の方を振り向きます。

GM:隔壁が降りて地下ブロックが閉鎖された以上、外からの刺客はもう来ないはずです。しかし敵は、ネットワークを経由して〈顕現〉してきました。騎士団長が‘ウォッチャー’と呼んだ、サイバーエンジェル。青白い炎が、手のひらの上で踊っています。

球太郎:「あいつは・・・あの時の!」

GM:マルセルが100人の魂を肉体に戻し終わるまで、必要時間は4ラウンド。‘ウォッチャー’はホバリングしながら室内を絨毯爆撃します。球太郎が逃げ回れば2人には危害は及びません。

球太郎:ヒッティングの次は走塁ですね(笑)。

GM:なお、この炎は精神ダメージを負わせるものであり、全身が燃え上がる演出はあっていいですが、周囲の装置は破壊しません。なんと都合のいい(笑)。

球太郎:「任しといてください!」自分を呼ぶマルセル先生の声に力強く応え、‘ウォッチャー’と先生の間に立ちはだかります。ディ様の姿を思い浮かべ、声を張り上げます。少しでも彼に近づくように!「ストームナイト、野原球太郎! お前の相手は、この俺だ!」

GM:おおっ!

球太郎:あとは全力で逃げ回り、4ラウンド積極防御を続けます。致命的なダメージを受けた時に、“敵方失敗”を使います!

GM:お見事です。あと少しで魂を戻せるという時、具体的には4ラウンド目、端末から‘ウォッチャー’がもう1体出現します。球太郎が炎をかわして逃げた先に、手をかざした‘ウォッチャー’が・・・しまった!
 

―球太郎のメール―

 ‘ウォッチャー’の猛攻にさしもの球太郎の足もフルスピードを維持することは厳しく、
 一瞬の隙をついて炎がクリーンヒット! 球太郎の身体が燃え上がる!
 全身を焼く炎は、精神を急速に蝕む!
 ・・・どんなに頑張っても、俺はダメなんじゃないか?
 敵は強大、俺は無力。どんなにあがいても、希望はないんじゃないか・・・

 いや! 希望はある!

 球太郎の脳裏に、あのホームランが浮かぶ。

 ふと気づくと、身体を覆っていた炎が消え失せ、1個のボールに燃え移っていた。
 かつて、ただ一度「偉業」を起こした打席の、ホームランボール。
 お守り代わりにもっていたが・・・まさに、身代わりに燃え尽きた。

 それは、かつての本業での栄光を卒業することをも意味するだろう。
 俺は、いや俺たちストームナイトは、これからも新たな偉業をたくさん起こしたいし、
 起こしていかなきゃならない。
 こんなところで、燃え尽きてる場合じゃないんだ!!
 

GM:カッコいい・・・。
 

 球太郎が咆哮し、炎を振り払うのと同時に、100人の魂は、無事、肉体へと戻る。
 マルセルは十字を切り、静かにジャックアウトする。
 

GM:さて、脱出に【ゲート】のグループパワーを使用するには、最低2人のストームナイトチームが、大量のポシビリティを消費しなくてはなりません。Pandoraセッションの時も、パワー習得に20点+使用に12点=32点を捻出しなくてはならず、4人全員がほぼすっからかんになりました。これは私のルール読み込み不足、計算違いが招いたことでしたが・・・どうやってポシビリティを払うか、アイデアを出してみてください。

球太郎:2人以上のストームナイト、ということなら、マルセル先生、球太郎、そして球太郎の頑張りを見てストームナイトとして超越したナオミさん(してなくても、2人いるから大丈夫ですね)がまずポシビリティを出します。そして、先生の“偉業”により救出され「希望溢れる状態」になっている100人から、ひとり1ポシずつ分けてもらいます!

GM:ばっちりです! マルセル、球太郎、ナオミの3名でパワーを習得、周囲のみんなから希望を分けてもらってパワー発動。ナオミが支え持つ絵の前に、不思議な【ゲート】が開きます。‘ウォッチャー’と救護院の職員が異変に気づいた時には、3人のストームナイトと100人の救出対象者は、敷地の外へワープしていました。“逃走”カードの効果で、皆さんは無事、脱出を果たします。

球太郎:よっしゃあ!

マルセル:「ミッション完了だ。そちらの現状は」

GM:『大変だ旦那! 騎士様が危ねぇ!』

ナオミ:!

球太郎:「ディ様っ!?」

マルセル:「ディアン卿に伝えろ。俺たちは脱出ずみだ。貴公も生命を大事にしろ、と。死んでは犬死にだ」

 
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