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TORG往復書簡リプレイ

『Pandora's Box』

第三幕

 
シーン3

 
「下がっていい! みんな、隠れろ!」
 ディアンはレジスタンスにビームを放った騎士団長の武器を弾き飛ばし、その勢いで地面に押し倒す。
 目の横すれすれの地面に小剣を突き刺し、我に返って周囲を見回す。

 これ以上被害を出さないためには、病院騎士をひとりずつ無力化していくしかない。
 建屋に入った球太郎たちが出てくるまで、倒れるわけにはいかない。

 ビームで楯に大穴が開く。楯を捨て、小剣を額の前に掲げて祈る。

 My Lord, please save me from their lights.

 ビームが集中しても、かすり傷ひとつ負わない。
 しかしこれは賭けだった。神はひとつの危害からしか身を護ってくれない。
 そして、祈り続けている間、他の行動は取れない。
 もし敵がそれを見抜いて、白兵戦武器で仕掛けてきたら、恐らく反応できない。

 耳障りなビーム発射音に負けじと、ポールが声を張り上げる。
「騎士様! 旦那たちは脱出したって! 俺らも逃げましょう!」
 

球太郎:あいつはきっとやって来る!(*14)通信を聞いて、即座に叫びます。「先生とナオミさんは先に安全なところへ! 俺はディ様のところへ戻ります! 先生、ナオミさんを頼みます!」

GM:期待を裏切りませんね。【ゲート】の出口は1カ所なので、走って救護院まで戻ってください(笑)。

球太郎:遠くに病院騎士とディ様の姿が見えたところで、風の如く全速力で駆け、「でぇぇいっ!!」思い切り踏み切ってジャンプし、自由落下の重力と全速力のスピードをバットに乗せて、病院騎士Aの後頭部に叩きつける!

GM:「ぎゃっ!」

球太郎:その勢いのまま、前転で移動し、不恰好にですが、ディ様の横に並びます。

ディアン:「球太郎・・・」

球太郎:「ストームナイト、野原球太郎! 参上!」傷だらけだが瞳は燃えたまま、叫びます!

ディアン:「球太郎。楯は壊された。オレは、球太郎を守ることはできない」
 

 だから・・・隣で、戦ってくれ。
 

球太郎:嬉しいセリフ来たー! ディ様の前に進み出るようにして、振り向かずに答えます。「任しといてください! 今まで耐えてくれたんすから、今度は俺が守る番です!」

ディアン:・・・!

球太郎:肩越しにディ様を振り返ります。「・・・そんぐらいの気合いじゃないと、あなたと並ぶなんてできませんから!」ディ様よりはるかに傷だらけの、ボロボロの顔で、大きな笑みを浮かべます。

GM:ディアンは、しっかりと頷きます。あなたの参戦によって、戦力比は2対2のイーブンになります。ところが・・・。

球太郎:ところが・・・? いや、何が出てこようとも、覚悟しながらまずは目の前の奴と戦うだけです!

GM:(にやにや)言うこと聞くような女じゃないのよ。

球太郎:えっ?
 

 神の救護院へ入る前、ナオミはマルセルにこんなことを言われていた。
「野原はアスリートだ。ニッポンには、応援の合い言葉のようなものはないのか」

「先生とナオミさんは先に安全なところへ!」
 駆け出す球太郎の背を見ながら、ようやく彼女はそのフレーズを思い出した。
「私は自由の女神って柄じゃあないわ。ここはよろしくね!」
 

GM:だから彼女は神の救護院へ舞い戻りました。とっておきの声援をあなたに送るために。

ナオミ:「かっ飛ばせー、球太郎っ!!

球太郎:ぎゃわー!! そうきたか!! 午前中仕事にならなかったじゃないですかどうしてくれるん(以下略)

GM:(ナオミばりのドヤ顔)

球太郎:ああ−、全リソース使い果たして、新手が来たらもうだめだぐらい思っていましたが・・・人生には、まさかという坂がありますね(笑)。
 

―球太郎のメール―

 2対2となったはいいが、こちらは文字通り「手札」は尽き、
 ポシビリティも【ゲート】のために使い果たした。
 小さい頃遊んだ大人気ゲームがちらりと浮かぶ。
 選択できるコマンドは、「たたかう」しか残されていない。ひたすら、Aボタンを連打するのみだ。
 もう、四番でも三番でもない。ホームランを狙っている場合じゃない。
 ひとりの前衛系ストームナイトとして、ディ様の横で、力尽きるまで打棒を振るうのみ!

 悲壮な決意で打棒を構える球太郎の心に、
 ありえない、でも心の底では何より望んでいた声が、火をつけた。

 かっ飛ばせー!
 球太郎!

 その「応援」が、球太郎を「運動家」に再び引き戻した!
 足元に打席が、周りに球場がイメージされ、
 乱れた体制は我知らず、完璧なバッティングフォームに戻った。
 イメージの球場に響くのは、万人の声に勝る、かけがえのない大切なひとりの声。
 その声に応え、球太郎は、バットをすっと天に向けた。

 ・・・予告ホームラン!

 古くは野球の神様ベーブ・ルースの時代から繰り返されてきた、それは、かけがえのない人との約束。
 願いは必ず叶う、そんな力強い宣言、希望の約束。

 勿論、誓うは勝利!
 その姿に、避難したレジスタンスも対峙する病院騎士も、あの絵の女神を想起するだろう。
 そして球太郎は、ただひとりの女神の笑顔を胸に、敵に向かってフルスイングを叩き込む!

場外まで・・・とんでけぇえええ!!!
 

GM:球太郎のフルスイングが、激闘に終止符を打ちました。ディアンも鞘ごと剣を振るって、病院騎士を気絶させたところです。ディアンがあなたに右手を差し伸べます。

球太郎:ディ様から差し出された右手・・・それは、一人前のストームナイトになれた、証のように見えました。騎士位のないコアアース人にとって、アイル人の叙勲にも劣らない喜びかもしれません。何も言わず、がっ! と、力強く握り返します!

GM:ふふふ。ナオミのセリフ、絶対言ってやろうと思って、タイミングを計っていたのさ。“リーダーシップ”で振り足しカードを譲り、見せ場宣言、“援助”2枚積みくらいの効果はあると思います。

球太郎:やはりナオミルートを選んで正解でした(笑)。ナオミさんを振り返り、満面の笑みです!「ありがとう、ナオミさん! おかげで・・・勝てた!!」

ナオミ:(ドヤ顔)

球太郎:と思ったら、急に激おこになります。「ばってんが! なし、こげんあぶなかとこに来ると! 逃げれ言うたろーもん!!」

ナオミ:「え、ちょっと、何で怒ってるの? せっかく、気分良く大きな声を出したっていうのに」

GM:ナオミのこの言葉でシーンを切って、エピローグに入りたいと思います。
 

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