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TORGリプレイ

『Samurai Overdrive!』

 

第四幕

 
「もうすぐあの方に会える。もうすぐあの方に会える」

 織田航空機社長夫人は、文机の前で、なおも恋文を綴り続けている。
 いや、よく見ると、それは恋文などではない。
 

東の黄金の国。嵐と共に、サムライ達集う。
サムライが集いし坩堝(るつぼ)。その坩堝の中に、更なる争い放りこまん。
争いは、多くの血と金銭と破滅を生み出す。
そして、坩堝が多くの血と金銭と破滅で満たされた時、我の望むもの得られん。
 

 文章は全て、奥方の血を混ぜた墨で書かれている。
 それは、ホラー世界オーロシュの禁忌の魔法、オカルト儀式に用いられる、
 「現象文」と呼ばれる呪物であった。

 部屋の片隅のコンピュータのディスプレイに、メール着信を示すアラートが出る。
 開封されることなく溜まっていくメールの、差出人の名は、「宮本」。
 

『もうすぐ君を助けられる』
『もうすぐ君を買い戻せる』
『君のために、僕は勝つ!』
 

 そんな奥方の部屋の様子を、織田社長は知る由もない。
「遂にこの日が来たぞ。御前試合だ!」悦びに打ち震え、高らかに笑う。
「血よ流れよ。血よ流れよ。血よ流れよ。
 このニッポンに、そして、この私に、喜びをもたらせぇーーーーっ!」

 ―――暗転。
 


 
シーン1 蠱毒の王

 
GM:皆さん、作戦会議とかオッケー?

リリアン:戦闘中って、場札にしないとカードは使えないんだっけ。

GM:そうです。では、ルールを確認しておきましょう。切り札になるのは、まず、見せ場宣言。一幕に一回使えて、手持ちのカードが、制限なく全部使える。ただ、そのラウンドのおしまいに、余ったカードはなくなります。もうひとつが、ストーム・コンバット。異なるリアリティの相手に対して、〈リアリティ〉技能で攻撃を仕掛けて、リアリティ・ストームを無理矢理起こします。これも、強引に一騎打ちが発生します。そこから先は、殴り合いではなく、〈リアリティ〉技能を使ったポシビリティの削り合いになります。これで相手のポシビリティをゼロにして、ダメージを消せなくして、バーン! って殴るもよし、リアリティを勝った方に変更するもよし。ただ、無関係の人や物が、めっちゃめちゃにぶっ壊れるので、場所は選びましょう。

闇影:ストーム・コンバットは、周りに嵐を起こし始めるんで、やめた方がいいですね。

GM:ま、どうしてもやばい時とか、必要だったら、選択肢には入れといていいと思います。

闇影:相手がオーロシュの魔物で、準備が整ってない時ぐらいだ。

GM:ということで、第四幕、御前試合当日です。送迎の車が来て、東京ドーム入りして。この辺は粛々とイベントが進行していきます。

リリアン:ちょっと早めに観覧席へ行って、出入り口を全部確認しておきます。

GM:はい。宮本くんにもらった地図を見ながら、あっちが選手通用口だとか、ここがVIP席だ、とかいうのが解ります。このタイミングで、リリアンは、ジェイクからメールが来ていることに気付きます。

リリアン:あら、お姉様から。何かしら。

GM:『スポンサーの織田航空機の名前で、よく解んない装置が地下に運び込まれてるわ』と。『アタシも忙しくて目が届いてないんだけど、絶対これ、演出には必要ない物よ。スポンサーが置けって言うから置いてるんだけど。丁度ドームの外周に沿って、等間隔で6個』

ディアン:ええーっ! 魔法陣じゃねぇか!

GM:あと、大電力ケーブル。事前に工事してあって、多分装置をそれに繋ごうとしてる。

マキシム:はー、そんなものが。

リリアン:途中で変電装置かましてない?

GM:かましてる。偽装してある。

リリアン:偽装してあるけど見つけられる?

GM:見つけられる。行けばすぐ解る。

リリアン:ユウイチ連れて現場に行って、「おー。何か、すごいもの置いてあるわねー」

ユウイチ:その機械って、おれが見て解る代物?

GM:〈知識(機械工学)〉で振っていいですよ。

ユウイチ:(コロコロ)ポシ使います。(コロコロ)さらに“ひらめき”も1枚使って、〈知識(機械工学)〉24と言ってみよう。

GM:そうすると解る。恐らく、粒子加速器とかに使うような、巨大磁石とイオン発生源。

ユウイチ:オウ! 巨大磁石!

GM:輪っかになってるから、多分サイクロトロン。こんな突貫だから、1回しか使えないだろうけど。

闇影:サイクロトロンかー。

ユウイチ:あれ? なんか前にも似たようなもの、なかったっけ、リリアン?

リリアン:んー、基本的に、爆破したものなんて覚えてないわ(*30)。

ディアン:サイクロトロンを、魔法陣として使うってこと?

マキシム:あー、セバス(*31)ならどういう使い方するか解るんだろうけどなー。

GM:NPCを呼んでもいいですよ。

ユウイチ:じゃあ、おれが連絡先わかるから、電話してみよう。

GM:そうすると、恐らくアイルであろう処で、電話を受けてくれた。

ユウイチ:「どうも、お久しぶりです、セバスチャン。実は、これこれこういうものがあるんですが、何か、ご存知ないですかね?」

GM:(コロコロ)ん!

リリアン:振り足しかよ!

マキシム:さすがオカルティスト。

ディアン:眉をぐっと上げて。

GM:すごいなー、セバス先生。ちょっとうっかり振り足しちゃったよ。こんだけ出されたらしょうがないから言うけど、『む! 蠱毒じゃな!』

ユウイチ:「蠱毒? 蠱毒ってあの、中国の故事に出てくる・・・」

GM/セバスチャン:『うむ。あれじゃ』

ユウイチ:「戦い合わせて、最後に残った1匹の巨大な蟲を使うという・・・」

GM/セバスチャン:『正確に言うと、その蟲をさらに、生贄に捧げる気満々じゃな。もしや、その場所で、流血の惨事を起こす気なのではないか?』

ユウイチ:「うん! 当たりです。マキシムとか闇影とかが、戦う予定です」

GM:『可能ならば、今すぐ止めた方がいい!』って言ったところで、2人はリングインします(笑)。選手紹介のアナウンスが流れて、観客のボルテージは最高潮ですよ。

ユウイチ:「いやー、ちょっと遅いかもしれません。とりあえずリリアンと相談してみますよ」

GM/セバスチャン:『粒子加速器、というのはよく解らんが、それで魔法陣を描こうとしているのは解る。魔法陣の中で、生贄をどうにかする気なのじゃろう』

ユウイチ:「先に装置をふっ飛ばせば?」

GM/セバスチャン:『どうじゃろうなー。儀式の進み具合にもよるが、できることはやっておいた方がよかろう。オカルト現象文の何行かが潰されるだけでも大きい』

ユウイチ:「なるほど。わかりました」

GM:『可能なら、術者が判るといいんじゃが・・・』〈推理〉には1時間かかるから、ゴメン、間に合わないって言われる(笑)。もっと早く言ってくれれば、〈推理〉でいきなり首謀者を突きとめたのに!

ユウイチ:「いえ、充分です。ありがとうございます。後でニッポンのお土産を、何か買っていきますよ」

GM/セバスチャン:『日本茶でも買ってきておくれ』

ユウイチ:「わかりました」

GM/セバスチャン:『しかし、あやつ等が戦うのか・・・。ま、何とかなるじゃろ』

ユウイチ:「でも今回、ディは入ってないんですよ!」

GM/セバスチャン:『あー、時間の問題じゃよ』(笑)

ディアン:セバスチャンはオレを何だと思っているんだ。

GM:え? バーバリアン!(笑)

ディアン:完璧な答えをありがとうございます。

ユウイチ:「では、また」って言って電話を切って、「ああ、何てこったい!」

リリアン:そんな物騒な代物なわけ?

ユウイチ:みたいですよ。

リリアン:止めるしかないわねー。うーん。

ディアン:加速器だったら、電源を落とすのが一番確実だと思う。

ユウイチ:会場のブレーカー、1個2個落とせば、時間は稼げる。すぐ復旧するかもしれないけど。

リリアン:いや、コンプレッサーを潰して電流を逆流させれば、ぶっ壊れてちゅどーん、になる。

ユウイチ:そんなことしたら、ドームごとちゅどーん、になる気がするんですが。

ディアン:逆流までさせなくていいよ! 動き出す前に止めてよ!

マキシム:いや、面白くしたいんだよ!(笑)

リリアン:ということで、背中からメイスを出して、「これって電気の良導体なのよねー」って言って、ぽいって渡してあげよう。

ユウイチ:え?! やるの、おれ?

GM/ソレイユ:「あ! おねーさんには、ソレイユのをかしてあげます!」

リリアン:「はい、じゃあもう1個。あんた機械技師でしょ?」

ユウイチ:ええーっ?!

ディアン:(両手でポーズを取って)悪魔神官(*32)。

GM:いいから! テンパってるのはよく解ったから!(笑)

リリアン:さあ、さっさとおやりなさい、ユウイチ。

GM:あ、その前に、敵が現れます。警備員とかではない、明らかにおかしな連中が、止めに入ります。

リリアン:なぬ?

GM:京都警察RKDっていう、ニッポンテックの超強いアーマーを着た、ロボット武者にしか見えないような奴が、「ひとーつ! 人の世のポシビリティを吸い!」

一同:(笑)

GM:「ふたーつ! 不埒な悪行三昧!」

リリアン:みっつ! 右にもハゲがある!

GM:「みっつ、見つけたストームナイト! 退治してくれよう! ゴスポグ侍!」(笑)

闇影:旗印はついてないのか。弱肉強食とか。焼肉定食とか。

GM:今日の話的には、弱肉強食かな。それが3体現れます。1体前に出て、残りの2体が、ずずずずいと後ろに。

 
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